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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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メタリカ通算4枚目のアルバム。ジャケットデザインのイメージ通り、初期のザクザクした音色ではなくコクがあり重層でクラシカルな音色が中世ヨーロッパの古城や名作RPGゲームの戦闘シーンを連想できる。

初期の荒々しい彼等のサウンドには気薄であったメロディックさがある。前作「メタル・マスター」(Master of Puppets)で「スラッシュメタル」の文脈でやりたい事は全てやったのではないか?!という印象を持ったのだが今作「…And Justice For All」で「スラッシュメタルマスター」の域に達し、スラッシュメタルの文脈においてはもう進化も深化もしないというところまで行き着いたのだと思う。そんな彼らは91年にアンダーグラウンドシーンから出てきた「スローなヘヴィネス」と共振する問題作をリリースして賛否両論を巻き起こすことになる。

    「要点」

  • スラッシュメタルの文脈でやりたい事は全てやった感を感じる
  • 名作RPGを連想する重層でクラシカルな音色

「曲解説」

4 One

彼らの楽曲の中でもおそらく指折りに名曲だと思われる。前作「Master of Puppets」収録「Battery」同様に叙情的で静かなパートからはじまる。Batteryは「静かなイントロ」→「激しいメタルサウンド」に変貌するというインパクト大の楽曲であったがOneは叙情的で美しいアコースティックアルペジオが曲の折り返し地点まで続き(ソロまで飛び出す)「この曲はアコースティックな曲なんだな」と本気で思いかけた時、その空気感を切り裂くようにディストーションギターが登場し徐々に熱量を上げていく。そしてラスト2分半は初期よりヘヴィになった音でガチガチのスラッシュメタルに変貌する。静かなイントロから激しいメタルサウンドに変貌する曲や90年代に一大トレンドとなった「動」(ラウド)→「静」(クワイエット)→「動」(ラウド)的な展開の曲なども多数聴いた事はあるのだが、個人的にはここまで振り幅の激しい曲を聴いた事がない。冒頭の「幼少時代の美しい原風景のような世界観」が曲が終わる頃には「阿修羅によって破壊された都」になっている。
8 To Live is to Die

非常にインパクトのある曲で「4 One」同様に美しくアコースティクなアルペジオから始まるが「ドッドッドッドッ」という歪みがあらわれるのを合図にスローでディープなメタルサウンドに変貌するのだが曲の中間部では「幼少期の思い出」のようなオルゴールが鳴り響くという構造。

この曲を聴いていると90年代RPGゲームによくあった「のどかで何もないが平和な村がある日巨大なドラゴンにより壊滅させられた。そんな中で一人だけ生き残った少年が後に勇者となる」このような話が頭の中に浮かんでくる。90年代RPGゲームの戦闘シーンは今にして思えば、スラッシュメタルやメロディックスピードメタルな音が完全にメインであり、ストーリーの展開も「破壊」「哀愁」などが複雑に絡んでいた。当時のRPGゲーム関係者には熱心なメタルファンが多いのでは?!と思われる。
9 Dyers Eve

高速ユニゾンが印象的な「待ってました感」のあるスラッシュメタルチューン。1stアルバムのスラッシュメタルが単車での暴走ならば本曲はサラブレッド100頭の突進のような破壊力を感じる。



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