前作「REAL」が集大成的なALL in ONEのような作品であった点、また全メンバーがソロ活動を経た点などから、これまで築き上げたラルクサウンドに各メンバーがソロ活動で得た影響を反映した情報量の多いサウンドになるのでは?と聴く前は予想していたのだが、実際は予想に反してアナログなサウンドを前面に押し出したシンプルなロックアルバムとなっていた。
「2000年頃から世界的なトレンドとなっていたロックンロール・リバイバル的なミニマリズム」「これまで距離を置いているとも感じ取れたスラッシュメタル的なザクザクとした質感」「シンプルなロックソングを華やかに彩る七色のストリングス」これらが今作のサウンド面の特徴としてあげられる。
これまでのどの作品にも必ず存在したUKニューウェイブ的なサウンドがほとんど登場しないという点において本作は異色作と言って良いのでは??という気がする。
「曲解説」
1 接吻
「アンプ直」のようなシンプルでアナログなギターリフがリフレインされるロックチューン。サビでは光沢感のあるスペーシーなシンセサウンドと優雅なストリングスが流れ、モノトーンになりがちなミニマムなロックソングに華やかさを与えている。
2 READY STEADY GO
アルバム「ark」以降、彼らの十八番となったドライブ感のあるロックンロール系譜の曲(1:00〜)サビは疾走感のあるボーカルラインと光を感じるシンセサウンドを中心に構成されるが、途中からスラッシュメタルのようなザクザクとした質感のリフが挿入されるという盛りだくさんな内容。ソロ活動を経て歌うことの楽しさに目覚めたのだろうか?tetsuya(b)のコーラスが過去最高レベルで目立つ曲となっている。最後はギターとベースがユニゾンする展開で幕を閉じる。
3 Lover Boy
退廃的なムードを持つスラッシュメタルライクな曲。これまでメタルという音楽と距離を置いていた感すらあるラルクが、ここまでスラッシュなザクザクギターリフをフィーチャーしたサウンドを鳴らした事は驚きである(2:28〜)立体的なベースラインがブライクビーツ風のリズムの上で踊り、そこからギターソロに突入する。
5 Time goes on
夢見心地な雰囲気のアコースティックソング。tetsuya(b)が大活躍の曲であり、サビでは「ボーカルライン以上に目立つベースライン」がボーカルとは異なるメランコリックなメロディーを奏で、またhyde(vo)のボーカルラインを包み込むようなコーラスも聴かせる。
6 Coming Closer
スローなギターサウンドが「金縛り」のように鳴り響くシンプルな曲。時折挿入される「ホイッスル」のような電子音や「春風」のようなストリングスが曲にポップネスを与えている。最後は悲壮感漂う重厚なバイオリンだけが流れる少し不気味な展開である。
7 永遠
ザ・ストロークス(The Strokes)のようなミニマムでモダンな質感のロックソング。ken(g)のラフで歪んだカッティングギターがループされリフというより音響的に鳴り響く(3:05〜)ギターソロは非常にインパクトがあり「永遠」というタイトルとは裏腹に刹那的な輝きに満ちている早弾きフレーズである。
8 REVELATION
「砂鉄」ような歪みギターサウンドが重力感を演出するヘヴィチューン。サビのボーカルラインはUSグランジのように「言葉のリフ」という感じである。
9 瞳の住人
「長閑で平和な日々」を連想する優しい音で構成されたバラード。サビのメロディーはこれまであまり聴いたことがないタイプでどことなく中国風。また間違いなく偶然だが浜崎あゆみの某曲のボーカルラインに少し似てるとも思う(4:03〜)ギターソロは「浅い眠り」のような質感で空間を彷徨う。
10 Spirit dreams inside
本作を象徴するラフでアナログなサウンドが響き渡るラストソング(1:48〜)存在感のある分厚いベースリフがリフレインされ、そこにオリエンタルな電子音やken(g)特有の光を感じるギターサウンドが絡まる展開は非常にグルーヴィー。