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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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前作「Atomic Heart」で大ブレイクを果たし音楽シーンの頂点に立った彼らが、自分たちがやりたいことをエゴイスティックにやりきった90年代を代表する問題作。ビジュアルが見える音色の数々で構成された本作を聴いているとまるで名作映画を見ているような感覚に陥る。歌詞の内容は「自問自答」「ノスタルジー」「虚無感」「怒り」「わずかな光」などがテーマであり、前作までに見られた「恋愛」をテーマにした詞はほとんど見られない。

またサウンドも退廃的といってもよいダークさと深さがありタイトルとシンクロしている。フォークロック、プログレ、USグランジ的な壊れた質感、ジャージーな哀愁などがギリギリのラインで見事にポップソングに落とし込まれている。

    「要点」

  • 映画を見ているようなコンセプトアルバム
  • アーティストエゴが爆発
  • 退廃的な雰囲気

「曲解説」

2 シーラカンス

本当に「海の中にいる」ような深さと暗さを感じる曲(0:55〜)前作「Atomic Heart」から90年代US/UKギターロックの影響を感じされるフレーズはあったのだが、このリフはUSグランジに対するミスター・チルドレン(Mr.Children)からの回答といっていい位にグランジテイスト。このグランジギターが曲中終始鳴り響くことになる。歌詞の内容は一言でいうと「ディープな自問自問」といったところだろうか(3:14〜)歪んでいるがとブルーな透明感のあるギターソロが鳴り響き、最後は壊れた質感を増したギターロックのような展開でそのまま3曲目に繋がる。
3 手紙

メランコリックで物悲しいアコースティックバラード。重層なストリングスが「2 シーラカンス」同様に海の中にいるような深さと暗さを醸し出しており、歌詞の内容は「いなくなった者」に対する喪失感とノスタルジーを歌っている。
4 ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~

重い質感であった「2 シーラカンス」「3 手紙」とは異なり少しリラックスした乾いた空気感が心地よい曲(1:57〜)滑らかストリングスとジャジーなピアノが本曲に滑らかな風を吹き込む。
5 Mirror

メルヘンな世界に迷い込んだような浮遊感を感じる曲。キラキラしたキーボードやオルゴールのように聴こえる管楽器がその空気感をさらに助長する (1:33〜)乾いたハーモニカソロが鳴り響きその後はシャボン玉のように透明で揺れるような電子音が登場する。歌詞のほうは古風なフォークソングのようだ
7 名もなき詩

「ジャカジャ〜ン」という勢いのあるコードストロークで始まる名曲。曲を通して乾いた空気感が常に流れており最小限の音数だけで鳴らされたジャージーなギターロックという趣だが、じっくり聴いてみるとドリーミなハーモニカや低音が強調されたホーンが海底で鳴り続いている(1:22〜)ダイナミックかつ大陸的な広がりを見せる神なボーカルラインが登場(4:04〜)これまでのミスター・チルドレン(Mr.Children)では考えられなかったマシンガンのようなラップ風のボーカルラインが飛び出す。歌われる内容は「「人を傷つけてもそこまで悩む必要ないよ」と言いながらもそこまでドライにも無感情にもなれない自分」について。このパートが曲にファンキーなテイストを与えている。最後は、澄み切ったシンプルなギターサウンドをバックに桜井 和寿(vo ,g)が悟りを開いたような愛情論を君に語りかける。
10 マシンガンをぶっ放せ

グランジ化したフォークロックという質感の曲。ありえない事が平然と起こりまくった90年代の空気感を怒りと虚無感が混在した歌詞で見事に表現している。アップテンポな曲なのだが海底で鳴っているシンフォニックなストリングスや雄大なホーンが色んな意味で痛い歌詞を中和させてこの曲をポップソングとして成立させている。
11 ゆりかごのある丘から

LUNASEAの曲に出てくるようなダークなアルペジオや哀愁感漂うアダルトなサックスが退廃的で哀愁のある雰囲気を醸し出す。歌詞の内容は「孤独な者」がノスタルジーな気分に浸る内省的なもので「自分にとって本当に大事なものは何か?!」を深く問いかける内容となっている。桜井 和寿(vo ,g)のボーカルラインは高級なワインのように渋みと甘みがありいつまでの頭の中で反芻し続ける(8:32〜)古いフィルを巻き戻すような音が流れ曲は静かに終わる。本作を象徴するような深くてダークな名曲。

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