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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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デトロイト・テクノのオリジネーターの一人であるケヴィン・サンダーソンが女性ヴォーカリストを迎えて結成したインナー・シティ(Inner City)の2ndアルバム。

「都会に吹く風」のようなストリングスが印象的でアーバンなソウルやジャズのような雰囲気を持ち、デトロイトで誕生したテクノサウンドが数年の時を経て歌のメロディーと最高の形で調和したようなイメージの作品。「ポップ」とか「歌モノ」とかではなくセンス抜群のアーバンなサウンドとボーカルラインが見事に溶け合っていると言える。

90年代以降のテクノやエレクトロニカでは「ボーカルラインをどのように響かせるか?!」が作品のインパクトを分ける大きな要素であると感じるが本作はテクノサウンドにおけるボーカルのあり方という文脈に置いてお手本のような作品と言えるだろう。

    「要点」

  • 「都会に吹く風」のようなストリングスが印象的
  • テクノサウンドが最高の形で歌のメロディーと調和

「曲解説」

1 Inner City Theme

「霧の都会」のようなウェットな質感のシンセサウンドが印象的なインスト曲。きらめく電子音はしっとりと降り注ぐ雨のようだ。
2 Paradise

ミニマムなビートの粒が消えては現れるなテクノサウンド。トラックの上を「paradise」というフレーズを連呼する女性ボーカルが乗る。曲を通してアーバンなソウルミュージックのような「雨の街角」のような雰囲気がある。
3 Ain’t Nobody Better

「都会をすり抜ける少しだけ冷たい風」のようなストリングスが終始流れるシティーポップのような曲。1・2曲目では控えめであったパリス・グレイ(vo)の伸びやかで華やかなボーカルが堪能できる(1:04〜)ギターソロのような質感の煌びやかなキーボードソロが登場(2:21〜)パリス・グレイ(vo)によるハイトーン・シャウトが飛び出す。エモーショナルな曲ではあるが全体を通して終始アーバンな空気感が保たれている。
4 Power of Passion

「透明なベール」のようなサウンドが聴けるドリーミーでスローな曲。「誰もいない部屋」のように淡々としたリズムの上をメランコリックで儚いパリス・グレイ(vo)のボーカルラインが踊る。良質なドリームポップを聴いた後のような浮遊感も感じる事ができる。
5 Big Fun

カラフルな電子音が脳みそをグサリと刺激するハードなテクノ。この曲でも「少しだけ冷たい風」のようなストリングスが流れ、ボーカルラインはノスタルジーな響きを持ち哀愁を感じる(2:03〜)「一人時間差」のような面白いリズム感のキーボードソロが曲にきらめきを与える。最後は徐々にフェードアウトするように静かに終わる。
7 Good Life

流れるようなボーカルラインを持つ「春風」のようなアッパーチューン。リバーブのかかったボイスで連呼される「Good Life」が印象的で、フックのあるボーカルラインとは対照的にリズムアプローチはディープでミニマム。やはりこの曲でも風のようなストリングスが曲に清涼感を与えている。
8 Set Your Body Feel

空を飛んでいるような浮遊感を感じるソウル。透明なシンセサウンドがループされラップのような男性ボーカルがアクセントとなっている。
9 And I Do

何かに追いかけられるような切迫感があるアッパーな曲。不穏なシンセサンドと煌びやかな電子音が特徴で「ジャズを早送りしてテクノアレンジした」ようなイメージ。
10 Secrets of the Mind

ジャージーな質感を持つラストソング。分厚く立体的なシンセサウンドは「街に降り注ぐ雨」のようだ。しっとりした雰囲気とは対照的にリズムは複数のビートが絡みアップテンポ。終盤になると小爆発のような「ドゥン」という音が頻繁に挿入される。

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