前作までのナイーヴな質感は残しつつ90年代以降の音楽から影響を曲に反映させ始めた作品で、時代が求める空気感に見事にはまりミスター・チルドレン(Mr.Children)史上最高のセールスを記録したアルバム。
「2 Dance Dance Dance」で聴ける歪んだカッティングリフやエフェクトのかかったボーカル、「7 ジェラシー」に流れるアブストラクヒップホップにも通じるダークさ、分厚いシンセサウンドがスピード感を体感できる「11 Round About 〜孤独の肖像〜」など、自分たちが影響を受けた幅広いジャンルをポップ・ミュージックに落とし込んでいる。また前作まではどこか箱庭的にこじんまりとしていた桜井 和寿(vo ,g)のボーカルラインはサビを中心にメロディックになっており一回聴いたら耳から離れない魔力がある。
「曲解説」
2 Dance Dance Dance
「散らかった部屋」のような透明で歪んだミニマムなリフが繰り返されるミスター・チルドレン(Mr.Children)風90年代USロックという趣の曲。これまでのミスター・チルドレン(Mr.Children)とは異なる雰囲気でエフェクトのかかった歪んだ声で歌われる「社会風刺」と桜井 和寿(vo ,g)の伸びやかなボーカルラインと春風のようなサウンドが聴くことができるサビが実に対照的だ。
3 ラヴ コネクション
ウォームなギターサウンドが鳴り響くシンプルな曲。シンプルに淡々としヴァースと曲に奥行きと厚みを与える銀座のバーのようなホーンセクションに開放的なボーカルラインが乗るサビによって構成されている(3:36〜)ワウをかけた70年代ハードロックバンドのようなサイケなギターソロが鳴り響く。
4 innocent world
イントロのギターフレーズは「夏の終わり」のようで少しセンチメンタル。仕事に追われて何も起きない平凡な日常のようなヴァースと清涼感のある桜井 和寿(vo ,g)が奏でる「メロウな記憶が走馬灯のように過ぎていく」ようなボーカルラインを持つサビによって構成される。柔らかいそよ風のような爽快感を感じる事ができるポップソング。
5 クラスメイト
シンプルなリズムの上を渋いサックスと水滴のような繊細でクリーンなギターが淡々と鳴り響くアーバンなソウルミュージックのような曲。サビのボーカルラインは派手ではないがしっかりとした熱量を感じる事ができる。
6 CROSS ROAD
「LOVE」と「並ぶ」をかけた言葉遊びもお見事な曲。サビが2個あるような壮大で流れるようなボーカルラインは90年代J-POP/J-ROCK史に残る神ラインだと思う。サウンド的には最小限の音で構成されたアーバンなギターポップといった感じ。
7 ジェラシー
本作中で最も実験的でアブストラクヒップホップに通じるようなダークさと「宇宙にいる」かのような無重力感を感じる曲。ミニマムで軽やかなビートと不穏なうねりを生み出すベースラインが中心となりギターはほとんど入っていない。歌詞はエロ系で心身ともに満たし合ういけない男女関係みたいなイメージ。
8 Asia (エイジア)
タイトル通り「湿度の高い東南アジアの街」にいるような雰囲気を感じる曲であり、抑揚なく流れる川のようなサビのボーカルラインがアジアンテイスト。
ギターリフは「じめっとした空気感」を演出するような重さがある(3:00〜)軽く酔っているような透明なギターソロが異国感を演出(4:30〜)これまでの淡々とした展開が嘘のような桜井 和寿(vo ,g)による 「オォー、オォー、オォー」というメロディックな雄叫びのようなボーカルラインが登場。曲はそのまま静かにフェードアウトしていく。「7 ジェラシー」同様に新機軸といえる1曲。
11 Round About 〜孤独の肖像〜
スポーツに青春を捧げた過去を回顧するような壮大なホーンセクションが印象的。「80年代ギターポップのようなメロウなヴァース」と「分厚くスペーシーなシンセと軽やかなアコギで「マッハのスピードを感じる弾けたサビ」で構成されている曲(3:15〜)サックスソロが始まるがどことなく青春的なメロウさを感じる。シティーポップ的なアーバンさと田舎っぽさが同居している。