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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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ルナシー(LUNA SEA)史上最もスレイヴ(彼らの熱心なファン)の中で賛否両論を巻き起こした問題作「SHINE」。

「1 SHINE」のサウンドを一言をで言うと「煌びやかな光を感じるタイトなポップパンク」という趣であり普通に良い曲である。だがしかし、ルナシー(LUNA SEA)というアーティストにおいてはこの「真っ当な光(SHINE)」は当時明らかにNGな質感であったのである。メンバーもおそらくリリース後の反響を受けて「リリースするのが早かった」と感じたことだろう。

要は俗な言い方をするとファンが彼らについていけなかったのである(筆者も含めて)

世界の音楽シーンと同時進行で「元祖オルタナ的な尖りきったサウンド」でインディーズシーンに登場した彼らには、既存の音楽シーンに対して「常にカウンターであり続けないといけない」というある種の強迫観念が常につきまとった。異端なアーティストが既存のシーンに対してカウンターを浴びせ時代の寵児になるまでのストーリーは実に美しくカリスマ的であり、また当時の音楽ビジネスの主流であったタイアップを拒絶した「孤高のスタンス」もコアで内向的なロックキッズには魅力的に移った。

94年~96年にかけての3年間はルナシー(LUNA SEA)の絶頂期であった。この3年間はまさに「神の時期」で自分たちのやりたい事と「内向的な激しさ」を求めるコアなロックキッズとの間で完璧にニーズが合致した。だがこの完璧なバランスを保つのは色んな角度から見て不可能に近く、彼らは96年に傑作アルバム「STYLE」をリリース後に活動休止に入った。

ただでさえ「先が見えない」から活動休止した訳であるが、彼らは活動休止中も各々5人5様のソロ活動を精力的に行いあらゆる刺激を吸収していった。またボーカルのRYUICHIは本名の河村隆一名義で300万枚のアルバムセールスを達成。河村隆一が在籍するバンドとして音楽にさして興味がないような中高生にも認知されるバンドとなってしまった。

■常に変化するルナシー(LUNA SEA)

■ダークで耽美的で実験的なサウンドを求めるコアなロックキッズ

■河村隆一的なものをルナシー(LUNA SEA)に求める世間・レコード会社

このような迷路的状況になってくるとまさに八方塞がり状態で何をやっても「以前より良くない」という評価にしかならないのは明白で筆者も本作がリリースされ始めて聴いた時は率直に言って「これは何かの間違いだ」と思った。そう、彼らの作り出した「独自のサウンド」は90年代に多数のフォロワーを生み出し当時のロックシーンで完全にブランド化されていたのである。要するに異端から頂点に上り詰めたカリスマブランドはそのイメージから逸脱したイメージを打ち出すことは極めて困難であるという事だ。

当時の彼らにとって最も簡単な選択はファンが求めるルナシー(LUNA SEA)サウンドに河村隆一的なエッセンスを僅かに追加することである。だが彼らはこのカオスな状況においても不器用なまでにこれまで同様に普通に「変化した」。鳴っている音はこれまでのサウンドと比べると非常にポップ感が強く戸惑いも大きかったのは確かだが「何も変わらないスタンス」を貫いた。この作品のリリースがなければ現在のルナシー(LUNA SEA)は存在していないといっても過言ではないほどにチャレンジ精神のある作品であると思う。

大人になった今なら分かる。

    「要点」

  • 賛否両論を巻き起こした問題作
  • 不器用にこれまで通り変化したサウンド
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