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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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アルバム全体を通してメランコリックなバラードを多く収録しておりファンの中で賛否両論あったと思われるが「ロックという枠組み」をいい意味で意識していない作品となっている。

全体を通して音響やサウンドから「雨後」「梅雨」のような湿り気を感じる曲が多く「3 MISSING PIECE」はロック的なエモーショナルではなく内省的な叙情性を感じさせる。ノリの良いビートロックを求めるファンには「リアクションの難しいアルバム」かもしれないが、 色彩豊かなメランコリックな音に氷室京介の「アーティスト魂」を感じる事が出来るハズだ。

本作はアメリカでレコーディングされ、またレコード会社を移籍してからの第一弾アルバムでもある為、氷室京介のキャリアの中でも節目とも言える立ち位置にあるアルバムとなっている。

    「要点」

  • ・メランコリックなバラードを多く収録
  • ・音響やサウンドから「雨後」「梅雨」のような湿り気を感じる

「曲解説」

1 STAY

「梅雨時」のような湿り気を感じるオープニングソングでサビのボーカルラインは派手さはないのだが非常にフックがある。歌詞は「誰かを傷つけても構わない、俺の女になれ」という「強引なオレイズム」を感じる内容となっているが、氷室京介がこの「強引なオレイズム」を歌うとナチュラルに「熱いラブソング」に変換されるから不思議だ。これがヒムロックの魔力だろうか。
2 PLEASURE SKIN

「弾けるゴジャース」なホーンセクションをフィーチャーしたミドルテンポの曲でサビのボーカルラインは「ミステリアスな呪文」をスピード感のあるメロディーに変換したようなものとなっている(2:33〜、3:32〜) ギターソロは「濃厚な白い煙」のようなサイケな質感を感じるものとなっている。
3 MISSING PIECE

「雨後の気怠い午前4時」のようなメランコリックさを感じるアーバンなサウンドにのせて「もうここにはいない君」に対する喪失感とノスタルジーを静かに歌い上げるバラード。ボーカルラインは「ゆったり流れる河」のようなもので淡々としているのだが非常に熱量を感じる(3:25〜)ギターソロは「消せない炎」のような質感でリスナーの心をかき乱す。
4 魂を抱いてくれ (ALBUM MIX)

「不器用で尖っている俺だけど、おまえだけには裸の感情をさらけ出せる」という感じの熱い歌詞が魂を揺さぶるバラード。「雨粒のついた曇った窓ガラスをベッドに横たりながらぼんやり見つめる」ようなイメージが浮かぶ冒頭から徐々に熱量を上げていく展開で優雅なストリングスが「ベッドで眠る二人」を優しく包み込むように流れる。
5 WALTZ

「誰もいなくなった部屋のような静けさ」と「しっとりと降り注ぐ雨のような湿り気」が同居しているバラードでアルペジオはまるで「独り言」のような物悲しさを感じるものとなっており、この曲でも「4 魂を抱いてくれ (ALBUM MIX)」同様に優しく優雅なストリングスを導入している。
7 MIDNIGHT EVE (ALBUM MIX)

「賑わう雨の都会」ような雰囲気のアーバンな曲で「艶のあるカッティングギター」が非常に目立つ(1:54〜)「高級飲食店でのディナー」のようなジャズピアノが挿入され曲にアダルトな質感を加えている。
8 SQUALL

「メロディックな暗躍」のようなベースラインを中心に展開されるアーバンポップで「微妙な曇り空」のような空気感はあまり聴く事ができないレアなものだと感じる。歌詞は「魅力度MAXのいい女に対する溢れんばかりの愛情をナルシスティックな言い回しに変換した」ようなイメージでこの歌詞を歌うことが許される日本人ボーカリストは非常に限られると思われる。
9 NAKED KING ON THE BLIND HORSE

エフェクトがかかった氷室京介のボーカルが印象的なハードチューン。メランコリックで「雨後」や「梅雨」を連想するバラードが多いアルバムの中で少し浮いている曲である。筆者の経験則からいってラストソング(10 NAKED KING ON THE BLIND HORSE 2」はリミックス版なのでノーカウント)に アルバムの全体像と毛色の違う曲を配置する時はかなりの高確率で「次作のサウンドを暗示」しているケースが多い。

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