「LOVE」をテーマにした大ヒット・デビューアルバムから4年の時を経てリリースされた2ndアルバムでタイトル通り「LOVE」を更に深くディープに掘り下げた内容となっている。
1stアルバムで印象に残った「少年時代の恋愛感情」にスポットを当てた歌詞は今作でも健在で「5 君の前でピアノを弾こう」などはその流れで書かれた歌詞であろうと思われる。本作で「河村隆一=ラブソング」というパブリックイメージが良くも悪くも出来上がった。それ位、過剰かつストイックに「恋愛」をだけを歌っている作品である。
反面、1stアルバムで「絶妙なスパイス」として機能していたナルシズムは後退しており、メッセージ性やパブリックイメージは全く異なるのだが全ての曲で尾崎豊的な「ありのままの俺」という潔さを感じさせる。この「バランス」や「周囲の目」を一切気にしない孤高のスタンスはある種、神の域である。「恋愛」のみを歌いきった本作の後、河村隆一は一体どこに向かうのだろうか?!
「曲解説」
1 Nē
「答えが見えず、求めるほど苦しくなる恋愛」を柔らかいアコースティックサウンドにのせて河村隆一がエモーショナルに歌い上げる。歌詞には「失うものなどないから」というラインが登場するが、この「失うものはない」というスタンスはルナシー(LUNASEA)のヒットシングル「STORM」でも歌われている。
2 in the sky
「君と僕」を「光と影」に見立て「近づくほど奪い合う」と表現するラブソング。サウンドは「どこまでも続く曇った夏の日の空」のような質感のギターポップである。冒頭の「壊れたメロデイー、この世界を」という不可思議な響きが曲にシリアスな風を運んでくる。
3 Tomorrow
軽やかで清らかな風を感じるポップチューン。リズムは終始リラックスしたゆったり感があり、時折挿入されるミニマムなシンセサウンドが曲に清涼感を与えている。「2 in the sky」における「壊れたメロディー」が嘘のように「素敵なメロディー」というラインが登場する。
4 forget about you
「誰もいない秋の海辺」のようなセンチメンタルを感じる曲。控え目でアダルトなギターのカッティングが「過ぎ去った夏の日」のように響き渡る。歌詞は「鮮やかにみえた君が心からまだ消えなくて、ここ(海)に来てしまう」というニュアンスであり、ヒットシングル「6 BEAT」同様に過去の恋愛に密接にリンクする海を訪れている。
5 君の前でピアノを弾こう
キラキラしたオルゴール風のSEで幕をあけるポップソング。ジャジーなピアノを中心に展開される静のサウンドにのせて「少年時代」のようなシャイな恋愛感情を歌い上げる(2:35〜)「今夜ピアニストになる」というフレーズをファルセットで歌い上げ、そこから「黄昏」のようなサックスソロが展開される。
7 my first love
クラシカルな弦楽器がゆったり美しい旋律奏でる「コクのある上質なワイン」のような静かなサウンドにのせて「切ない初恋」を思わせる歌詞を河村隆一が軽やかに歌い上げる。ルナシーのアルバム/SHINEがリリースされた1998年〜終幕する2000年までの間に頻繁に使われたワード「輝く」がこの曲でも登場する。また「離さないで」「連れて行って」という受け身なラインから、女性目線で描かれた歌詞なのでは?という気がする。本曲は元SPEEDの上原多香子に歌われてヒットを記録した。
10 静かな夜は二人でいよう
「君の扉は開かない」と認識しつつも「抱きしめさせて」と強く願望するエゴイスティックな愛情を熱くエモーショナルに歌い上げるクラシカルなバラード。
「傷ついても、傷つけても構わない」というスタンスはルナシー(LUNASEA)の終幕アルバム「LUNACY」に収録されているハードなロックチューン「a Vision」と共通するものである。
11 恋をしようよ
「あなたの恋を探します」というニュースキャスター風の声で始まるメロウなギターポップで「恋をすると人は詩人」になるそうです。「幻想」というワードも登場するがルナシー(LUNASEA)時代とはまるで異なる響きをもっている。
13 憂鬱
タイトル通り「張り詰めたシリアス感」を演出するピアノインスト。ピアノの旋律はまさに「憂鬱」を具現化したような質感である。
14 ジュリア
ファミコンゲーム風のハッピーな電子音で幕をあける軽やかなギターポップ。
歌詞は「伝えたい思いで溢れる恋愛」について。