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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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ルナシー(LUNASEA)サウンドに宇宙的で神聖な雰囲気を持ち込んでいる「音楽マニア」SUGIZOのソロデビューアルバム。

「ドラムンベース」「トリップホップ」など当時の前衛音楽からの影響をSUGIZOなりに解釈した「アバンギャルドでダークなサウンド」が堪能でき、「5 Le Fou」「16 LUNA」などではスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)彷彿のミニマリズムを導入している。97年にこのサウンドは斬新を超えており、現在のように「全世界がオンラインで繋がっている環境」が97年当時に存在すれば、間違いなく海外のコアな音楽ファンに大絶賛されていたはずである。また同年にリリースされたルナシー(LUNASEA)のもう一人のギタリスト/イノラン(INORAN)のソロアルバムも「トリップホップ」からの影響を大胆に反映させた耽美サウンドとなっており「神作」となっている。

本作に収録されているほとんど全ての曲で「ミステリアスなダークさ」と「耽美さ」がナチュラルに漂っておりV系サウンドのベーシックはSUGIZOが生み出したと言っても過言ではない。偉そうなことを言って恐縮だが本作はSUGIZO自身がボーカルを務めた曲で一部ミスマッチな質感があったので惜しくも「傑作」だが、一部のボーカルのミスマッチさえなければ文句なしに「神作」であった。どのような音を鳴らしても「SUGIZO流」になる「個の強さ」は圧巻であり日本が世界に誇れる才能である。

    「要点」

  • ・「ドラムンベース」「トリップホップ」など当時の前衛音楽からの影響をSUGIZOなりに解釈したアバンギャルドでダークなサウンドが堪能できる
  • ・V系サウンドのベーシックはSUGIZOが生み出したと言っても過言ではない

「曲解説」

1 LUCIFER

ヘヴィなギターサウンドの断片がミステリアスな浮遊感をもつ空間で輝き、リズムアプローチは「迷走」のようなドラムンベースという「音楽マニア」SUGIZOらしい前衛的なアッパーチューン(2:52〜)SUGIZOらしいロングローンのギターソロが空間をアブノーマルに支配する(4:04〜)「can I fly?can you fly?」という宇宙的な響きのコーラスが登場、このコーラスは後にリリースされるルナシー(LUNASEA)の曲「LOVE ME」のコーラスのプロトタイプ的な響きがある。
2 THE CAGE

たっぷりとリヴァーヴをかけた残響ギターサウンドが心地よいドラムンベースチューン(2:40〜)ディープで耽美的なアルペジオが鳴り響く中、SUGIZOによるミステリアスな語りがはじまる。その後は「わずかに燃える炎」のような幽玄なバイオリンサウンドが挿入されるという「凝りに凝られた」展開をみせる。最後は静寂の中「強烈にモザイクがかかった液体」のようなサウンドだけが鳴り響く。
3 KANON

「UK産ダークなヒップホップ=トリップホップ」からの影響を感じる耽美チューン。ボーカルはゲストボーカリストが務めSUGIZOはコーラスを担当している。SUGIZOのコーラスは「メタリックな水面」のような質感でセンス抜群、曲に「ヘブン」のような浮遊感をもたらしている。
4 EUROPA

クリアで「水晶玉」のような神秘性を感じるアルペジオがインパクト大のインスト。全編に渡りSUGIZOらしい「凝りに凝られた」ギターサウンドで埋め尽くされている。終盤はマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)彷彿の「ディープでエロスな音響」が存在感を放つ。
5 Le Fou

アンビエントなアルペジオがミニマムにループされる神インスト。神聖でシリアスな音響は「暗闇の中に天使が舞い降りる」イメージを連想する。時折、挿入されるSUGIZOのバイオリンサウンドの断片が神聖な音響の中でヒステリーに響き渡る。
6 BEAUTY

「金属ボックスをハンマーで叩いた」ようなパンチの効いたリズムがインパクト大の我流トリップホップで「酔っ払いが吹いた」ようなバグったサックスサウンドが曲にサイケな揺らめきを与える(2:00〜、4:10〜)唐突な転調が入り「退廃的メルヘンワールド」のような静パートに切り替わるという意外性のある展開(3:48〜)ギターソロはトム・モレロ/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)のアバンギャルドサウンドにSUGIZOが「宇宙的なアレンジ」を施したような内容となっており、リスナーをアナザーワードルへと誘う。
7 CHEMICAL

「不気味な影に追いかけられる」ような切迫感を感じるリズムオリエンテッド・チューン。この曲でも「6 BEAUTY」同様に唐突な転調が入り「メルヘンティックな静パート」が挿入される。空間を漂うように流れる「和の旋律」が非常にミステリアスである。
9 MISSING

浮遊感溢れる音響と「アバンギャルドなタップダンス」のようなドラムンベースの対比が面白い曲(1:58〜、4:18〜)無条件に宇宙を連想する残響ギターサウンドが挿入される。歌詞は哲学的な内容で「果てない宇宙」をテーマにしていると思われる。
11 KIND OF BLUE

「天空」を連想する音響の中を「孤独」なサックスが自由に舞うインストでリズムはドラムンベース風である。時折、挿入されるギターサウンドは「直線的なネオンカラー」のような質感で曲に彩りを与えている。ギターソロは勿論の事、アバンギャルドで「巨大な鳥の狂った鳴き声」のようである。
13 DELIVER…

フレンチポップのようなメロウネスが印象的な空間系ソングでゲスト・女性ボーカリストの声は曲と非常にマッチしている(2:22〜)金属的でパンチの効いたビートが挿入される、その後に登場する歪んだギターサウンドはまるで「戦争が始まった」かのような壊れっぷりで「良質なフレンチポップソング」として成立していた曲をズタズタにする。良くも悪くもSUGIZOの「捻くれイズム」が凝縮されたような曲となっている。
16 LUNA

ミニマムなアルペジオがループされる幻想的なラストソング。歌詞はSUGIZOの娘「LUNA」の誕生に伴う感動を言語化したものである(3:50〜)子供の泣き声と「寂れた街」のような孤独を纏ったピアノの旋律が静寂の中で響き渡る。最後は幻想的な音響の中で波の音だけが流れる。

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