「エモーショナルでダークな叙情性を放つギターロック」「ドライブ感溢れるラルク流R&R」
インディーズ時代から彼らが得意としている「神秘的・耽美的という形容がよく似合うサウンド」などが幅広く収録されており、
これまでのキャリアの集大成のようにラルク アン シエル(L'Arc〜en〜Cielの良いところをパッケージングした傑作アルバム。
2000年はV系サウンドの創始者とも言えるルナシー(LUNASEA)が終幕しV系氷河期がはじまった年であるが、
ラルク アン シエル(L'Arc〜en〜Ciel)はシーンのトレンドなど関係なしに自分たちのルーツであるニューウェイブに様々な要素を加え、または角度を変えて自分たちらしいサウンドを鳴らし続けた。
V系サウンドが「古いもの」と見なされた90年代末〜2000年代初頭でも彼らが多くのリスナーに支持されたのは、電子音楽やポップミュージックと距離を置かず「曲が良くなるのであれば」という柔軟なスタンスで曲に新しい要素を加えモダンな質感にアップデートし続けたからでは?と思われる。
「曲解説」
1 get out from the shell
「スペーシーなダンスミュージック」のような雰囲気を持つラウドなアッパーチューン(2:20〜)「落雷」のようなken(g)のギターリフとリスナーを扇情するかのようなhyde(vo)の歪んだエフェクトボイスはこれまでのラルクにはない質感であり、ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)やザ・プロディジー(The Prodigy)などの90年代ビッグビート勢からの影響を彼らなりに解釈しロックとテクノの融合を実践した曲となっている。
2 THE NEPENTHES
名曲「4 Shout at the Devil」とも共通する濃厚なグランジ匂がある曲。本曲のダーティーなギターリフはwikiを見る限り実際にken(g)がグランジバンド/ストーン・テンプル・パイロッツ(Stone Temple Pilots)を聴いている時に閃いたものらしく「泥水」のような重さとディープな響きをもっている。
3 NEO UNIVERSE
恍惚を感じる光が眩しすぎるエレクトロロック。ピコピコ系の電子音が鳴り響く真っ白な空間が、ボーカルラインをよりビビッドに響かせる。
4 bravery
「ガラス越し」のような透明感を持つメロウソング(1:28〜)サビは歪んだグランジーなギターワークと「考えさせられる歌詞」で構成されている。歌詞の内容は「昔はよかったって言うけど、何か知ってるの??」というものであり、変化に対して否定的な人たちに対する皮肉ともとれる内容となっている。確かに懐古主義の人ほど、新しいものを拒絶し挑戦しない傾向が強いと思う。
5 LOVE FLIES
ダークでサックとした質感のギターロック。相変わらずken(g)のギターサウンドはセンス抜群で弾き過ぎず、弾かなさ過ぎずの絶妙な塩梅でキュアー(CURE)のような耽美さとレディオヘッド(radiohead)のようなダイナミズムを曲に与えている。
6 finale
「古いフィルム」のようなザラついた質感をもつダークなバラード。悲壮感あふれるバイオリンが印象的なヴァースと一気に熱量を放出するサビによって構成されている。サビで歌われる「眩し過ぎて明日が見えない」は、Rusty Nail / XJAPANにおける「涙で明日が見えない」に並ぶ名フレーズであると感じる。歌詞の内容はインディーズアルバム「DUNE」に収録されている「6 Dune」に近いものがあり「神も許さない禁断の恋」について。
7 STAY AWAY
アルバム「ark」に収録されていたドライブ感のあるロックチューンと同じ流れの曲。「焼き増しの世界に惹かれない」というフレーズがロックアーティストとしてのプライドを感じさせ、hyde(vo)の歌声はダミ声と言ってもいい位に濁っており、曲にザラついた質感を与えている。
8 ROUTE 666
ミニマムな音数で構成され「石ころ」のように回転するロックンロール(3:07〜)これまでの殻を破った「ウゥゥ〜、レイ♫」というhyde(vo)のファンキーボイスから流れるような旋律をもつギターソロが展開される。
9 TIME SLIP
「早朝」のような空気感をもつセンチメンタルなバラード。ラブソングとも深い人間関係ともとれる歌詞がイマジネーションを刺激し頭の中に様々な情景が浮かんでくる。タイトでシンプルなドラムと「曇り空」のような質感のベースラインからなるリズムの上で「ガラス細工」のようなken(g)のギターサウンドが輝きを放ち、hyde(vo)の歌声には「素顔」のようなナチュラルさがある(2:40〜)「溢れ出す光の洪水」のようなギターソロがリスナーを光溢れる異空間へと誘う。
10 a silent letter
静寂の中、「夜空の星々」のようにきらめくギターサウンドとhyde(vo)のファルセットボイスが圧倒的な存在感を放つ壮大なバラード
(3:50〜)「美しい子守唄」のよう女性コーラスが幻想的に鳴り響き幽玄さを曲に加える。終盤は「歪む深海」のようなギターサウンドが曲にモザイクを加えるように響き渡る。
11 ALL YEAR AROUND FALLING IN LOVE
6弦ベースを使用した高音のベースラインがこれまでとは異なる響きを奏でるパワフルなバラード。サビはモザイクがかったように歪むギターサウンドとメロウなアコースティックサウンドが共存するパワフルな展開だが、そのサウンド以上にhyde(vo)のボーカルラインが力強く響き渡る。最後は「星々」のような電子音だけが静かに流れ曲は締めくくられる。