ハードロックバンド/ビーズ(B'z)の出発点のような作品。初期作にみられたダジタルなダンスビートはほとんど無くなっており、前作よりハード/ヘヴィになったギターリフが頻繁に登場する。これまで日本の音楽ビジネスの中で抑制してきたと思われる稲葉浩志(vo)の生々しい感情が爆発している「1 THE GAMBLER」「2 ZERO」「5 Out Of Control」などの歌詞は秀逸。またライブでのファンとの掛け合いを想定して創作されたと思われる「6 NATIVE DANCE」やゴスをビーズ(B'z)なりに解釈した神聖な空気感を持つ「9 月光」などの新機軸もある。彼らの代表作の一つであり当然のごとくビッグセールスを記録した作品である。
「曲解説」
1 THE GAMBLER
「重い扉が開く」ような光が降り注ぐキーボードがイントロで流れる、これまで以上にガッツリと歪んだハードなギターリフが鳴り響く中、応援歌のようなホーンセクションがギャンブラーの背中を押す。前作よりはるかに生々しいアナログな音がなっていると感じる。歌詞の内容は夢だけを握りしめる強気なギャンブラーのことを歌っているが素晴らしいの一言に尽きる。「人生どうなるかは自分次第、ただし行動を起こさないと何も変わらないけどね」とリスナーの背中を押してくれる(4:46〜)「黄金の列車」という言葉の登場とともに夜空に流れるキラ星のようなアルペジオが流れて黄金の列車が夜空を走る絵がイメージできる。終盤はアルペジオが流れ続け静かに終わる。
2 ZERO
「1 THE GAMBLER」のギターリフがライトに聴こえる位にヘヴィといってもいいギターリフが登場し一度聴いたら耳から離れないサビの神なボーカルラインを持つ曲。都会を連想する清涼感のあるシンセがリフレインされる中を田舎から東京にやってきた若者の苦労や葛藤を稲葉浩志(vo)がハードに歌い上げる「ギラギラした街で遊ばずにすぐ家に帰る」という選択肢にはハードロッカーとしてそれでいいのか?!とツッコミたくなる要素満載(2:12〜)これから猛スピードで駆け出す主人公が風を切るような音が流れ歌詞にも出てくる波のようにド派手なサビのボーカルラインが流れる(3:07〜)自分を鼻で笑うような自虐的なラップを歌い最後は、「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」という乾いた笑い声で締めくくられる。終盤はヘヴィなギターリフが流れる中、稲葉浩志(vo)のシャウトも炸裂する。最後は都会の狂騒を連想するようなサイレンの音が鳴り終わる。
3 紅い陽炎
イントロから叙情的かつラテン的な熱量のあるギターフレーズが鳴り響き曲を通して熱い炎のような熱量を感じることができるエモーショナルなバラード。テンポはゆったりとしており稲葉浩志(vo)のコブシの効いたエモーショナルな歌声を堪能できる(3:15〜)ハードな演奏がドラムの連打とともに止まり、透明で美しいピアノの旋律が顔を出すのだが、またすぐにハードなサウンドに戻る。最後は激しく揺れる炎のようなギターが鳴り響き曲は終わる。
4 RUN
「1 THE GAMBLER」と同様に瞬間的にマッハの速さを感じることができる。間違いなく偶然だがイントロのギターフレーズはルナシー(LUNASEA)の某曲にそっくり(2:43〜)透明感のあるクリーンサウンドによるファンキーなカッティングが登場しアクセントになる。終盤はサビのメロディが2回リフレインして最後はサックスソロが渋く締めくくられる。
5 Out Of Control
「昔からこういう曲がやりたかったんだよ」と言わんばかりハードロックナンバー。冒頭から稲葉浩志(vo)の強烈なシャウトが流れる激しい展開で
酔っ払いのようなヨレた感じのハードなギターリフが終始鳴り響き、また所々で挿入される稲葉浩志(vo)の高速のぼやきが90年代なムードを醸し出している(1:20〜)どこまでも伸びる階段を駆け足で降りるようなキーボードソロ(2:20〜)これまで封印していたようなヘヴィメタル的なテクニカルなギターソロが響き渡りバトンタッチする形でキーボードソロも続きさらに曲に勢いを与える。最後は稲葉浩志(vo)の強烈なシャウトで締めくくれられる。
6 NATIVE DANCE
ミニマムで「忍び足」のようなベースラインと光のカッターのような電子音で構成されるイントロではじまり、その後はファンキーなカッティングギターが曲を引っ張る。ポップで弾けるようなボーカルラインとは対照的な「アイ〜、アイ〜、アイ〜、アイアイ〜」という原始の宴のような展開になり、弾けたアーバンな質感と原始的な躍動感が混在する面白い曲。
9 月光
タイトル通り静かで神聖な雰囲気を醸し出している曲(1:13〜)白いベールのようなストリングスとそよ風のようなフルートが流れ曲を柔らかく包み込む(2:36〜) 控えめなボーカルラインとは対照的に「ドラゴンが天に向けて駆け上がる」ようなエモーショナルなギターソロが爆発(3:10〜)ギターソロが終わると白い霧と化したストリングスの中で稲葉浩志(vo) のラテンシンガーのような熱唱が聴くことができる。終盤は静けさの中、叙情的なギターが鳴り響き最後はノイズを放ち終わる。
10 Baby, you're my home
カントリー調のバラードで前作IN THE LIFEに収録されている「9 あいかわらずなボクら」に通じる太陽のように眩しいボーカルラインが聴ける(2:21〜)川のせせらぎのようなオーガニックなハーモニカが曲の雰囲気をさらに牧歌的にし安らぎを与えてくれる。