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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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実験性とポップネスが高次元で結びついたボウイ(BOØWY)の3rdアルバム「BOØWY」。

バンド名をアルバムタイトルに起用する場合、その多くは自信作であるケースが多いのだが本作もそのケースに見事に当てはまる名作となっている。本作は初めて海外レコーディングを行ったアルバムでもありこれまでの作品と比べると「モダン」という表現がピッタリである。

前作から本格的に本領を発揮し始めた布袋寅泰(g) のギターは更に独自性を高めており「1 Dreamin’」「5 ホンキー・トンキー・クレイジー」などでは「曲が求める音のみを提供するプロデューサー的視点」を感じるし、多くのギタリストに多大な影響を与えた「6 BAD FEELING」などではポジティヴな意味で弾きすぎなやりたい放題感がある。

また歌詞の内容にも大きな変化があり、反抗的・挑発的な歌詞をもつ「1 Dreamin’」「6 BAD FEELING 」などの曲であってもアルバム「MORAL」に収録されていた「パンクソング的な痛さ」を感じないフィーリングとなっている。「1 Dreamin’」の歌詞は「サラリーマン的人生を真っ向から否定しつつも「I ‘m only dreaming’ = 私はただ夢を見ているだけ」と自身の「ある種のクサさ」を開示している点に潔さを感じる事ができ「6 BAD FEELING」 のサビの歌詞は「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を言語化しているが、エモーショナルになる訳でもなく「大人の対応」と言わんばかりの落ち着きを感じる事ができる。

本作はセンスとやる気に満ちた若者たちが「大人の余裕」をもちはじめ、 冷静にそして大胆に自分たちの音楽を作り始めた。 本作「BOØWY」はそんなイメージのアルバムである。

    「要点」

  • ・「1 Dreamin’」「サラリーマン的人生を真っ向から否定する歌詞を前面に押し出しているが、ファーストアルバム「MORAL」に収録されているパンクソング的な痛さは感じられない。
  • ・「6 BAD FEELING」サビでは「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を淡々と吐き出しているが、 初期のようなパンク的なオラオラ感はなく「大人の対応」というクールさがある。

「曲解説」

1 Dreamin’

「ファンファーレ」のようなサックスサウンド(シンセかも?!)で幕をあける華やかロックチューン。「サラリーマン的人生を真っ向から否定する歌詞」を前面に押し出しているが、ファーストアルバム「MORAL」に収録されているパンクソング的な痛さは感じられない。痛さを感じない理由は何かを否定しているだけではなく、自分自身の熱い願望(「I ‘m only dreaming’ = 私はただ夢を見ているだけ」)を歌っている前向きさがあるからであろうと思われる。そう「他者を否定・批判するだけ」ならそれこそ「居酒屋で無駄な熱量を発するサラリーマンと変わらない」というパンク的な矛盾に彼らはいち早く気づいてしまったのだろう。
2 黒のラプソディー

「路地裏」のようなダークさと「繁華街」の華やかさが同居した曲で「花束」のようなサックスサウンドを大胆にフィーチャーしている(1:50〜) 布袋寅泰(g)のギターソロは「ガラス細工」のようなエッジを感じさせる音質となっており、松井常松(b)のベースラインは「点をピンポイントでメカニカルに突く」ようにイメージであり存在感を放っている。
3 Baby Action

「散歩のようなヴァース」と「疾走感全開のサビ」との対比が面白いミニマムなギターポップ。歌詞は「軽い遊びのつもりだったけど、あいつにハマってしまって忘れられない。もうイヤだ」という内容。イントロとアウトロだけ何故か?!「パキッ」としたゴージャスなインダストリアル風サウンドとなっている。
5 ホンキー・トンキー・クレイジー

「タップダンス」のようなリズムとキャッチーなサックスが印象的なポップチューン(2:30〜)曲のクオリティーを劇的にあげるソウルフルな女性コーラスが登場して曲に「パーティー」のような開放感と華やかさを与えている。タイトルは意味不明だが、おそらくデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム「Hunky Dory」からヒントを得ていると思われる。
6 BAD FEELING

著名ギタリストに多大な影響を与えた名ギターリフがスペーシーな音響の中で踊るニューウェイブ・ファンク。筆者もこの曲のギターリフのコピーにトライした事があるが、この曲のギターリフはシンプルなフレーズではあるのだが布袋寅泰(g)特有のリズム感に慣れるまでが非常に難しかったと記憶している。サビ前に登場する「イマジネーション通りに腰振るのはやめてくれ」という「イマジネーション溢れるライン」はヒムロック以外のシンガーからはまず出てこないラインであろう。サビは「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を淡々と吐き出すという内容であるが、初期のような「パンク的なオラオラ感」はなく「大人の対応」というクールさがある。またこの曲でも「5 ホンキー・トンキー・クレイジー」同様に「タップダンス風」のリズムが存在感を放っている。
8 DANCE CRAZE

ミニマムなロックンロールリフが「ねずみ花火」のように同じところをクルクルとループする冒頭から徐々に近未来的にカラフルで壊れた展開に移行する実験的なサウンドで「クラフトワーク(Kraftwerk)とT・レックス(T. Rex)」が共演したようなイメージの曲となっている。作詞は「ジョナ・パシュビー」という外部クリエイターが手がけており、ボーカルは布袋寅泰が担当している。
9 ハイウェイに乗る前に

イントロからノリノリのテンションを感じさせるロックンロールチューン。サウンドは実際に「ハイウェイに乗っているような疾走感を判じるパート」と「都会をすり抜けたようなナイーヴな開放感を感じるパート」が主となり構成されている。歌詞の内容は「アッパーな上にいい女であるオマエを忘れる為に強がってハイウェイを走り抜ける男の心情」と言ったところだろうか。
10 CLOUDY HEART

「機械仕掛け」のような緻密さと「ガラス越し」のようなフィーリングを感じる曲でバラード調から疾走感溢れるサビに移行する展開となっている。歌詞は「軽いはじまりだったけど、案外長く続いた恋の終わり」をテーマにしており「若すぎて無責任であった2人の日々」を氷室京介(vo)が切なく振り返っている。終盤はスペーシーなシンセサウンドが存在感を放ち、主人公の「CLOUDYな心情」を表現している。

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