前作・前々作同様に様々な音楽的要素をラルクサウンドに反映させているアルバムであり、サックスやピアノ、ホーンセクションを大胆に活用して「渋みのあるジャジーなテイスト」や「カラフルで弾けたポップネス」を曲に反映している。
「1 SEVENTH HEAVEN」「12 Hurry Xmas」などは共にアルバム「True」に収録されていても不思議ではない弾けた質感をもっているし、またエレクトロニカやアンビエントミュージックからの影響を感じられる「冷たくクリアーな質感のサウンド」も登場してこれまでとは違う空気感を演出している。
前作・前々作では割とラフでストレートなサウンドを鳴らしていたken(g)がラルクの代名詞とも言える輝きに満ちたディレイサウンドを聴かせてくれるので、90年代の王道ラルクサウンドが好きなリスナーにとっても入っていきやすいアルバムとなっている。
「曲解説」
1 SEVENTH HEAVEN
アルバム「True」に収録されている「2 Caress of Venus」とも共通するカラフルな光を感じるアッパーなダンスロックチューン。hyde(vo)のボーカルラインは「ラップ」のように歯切れが良くこれまでにはないフィーリングを感じさせ、ギターサウンドは「衛星」のように空間を彷徨っている。
2 Pretty girl
「二日酔い」のようなルーズさがあるロックチューン。ポップなタイトルとは裏腹にビンテージな質感を持つシンプルなギターリフがリフレインされる渋い曲だが、サビの裏ではカラフルなサックスが踊るというポップ職人「ラルク」らしい展開を見せる。hyde(vo)の歌声は低音が強調されたダンディーなテイストのものとなっている。
3 MY HEART DRAWS A DREAM
ken(g)得意のディレイサウンドが「夜空の星々」のように輝く曲。全体を通して「霧」のような透明感があり全てのパートがクリアーに響き渡る。終盤はミニマムでアンビエントな質感のピアノがループされ「冷たい雨」のように降り注ぐ。
4 砂時計
「蜃気楼」のように揺らめくken(g)のディレイサウンドがリフレインされる幻想的な曲(1:24〜)「ガザッ」という唐突なブラッシングノイズとパンチの効いたドラムの連打が挿入されて清涼感のあるクリアーなサビに移行する。終盤は「精神と時の部屋」のような真っ白な空間を思わせるストリングスをバックにアグレッシヴなバンドサウンドが鳴り響く。
5 spiral
「ハリネズミ」のようなインダストリアル・ビートが印象的で密室のような雰囲気の曲で電子音や歪んだギターサウンドが次々と現れ不穏に鳴り響く。終盤はスローなBPMではあるが非常に疾走感を感じるサビが繰り返しリフレインされる。
6 ALONE EN LA VIDA
「ラテン」な異国感と哀愁の風を感じるオーガニックソング。「優雅なストリングス」「小雨のようなスパニッシュギター」を中心に展開される。時折、登場するken(g)のリードギターは「夕暮れを羽ばたく鳥」のように自由である。
7 DAYBREAK'S BELL
「内省派エモバンド」のような透明なギターサウンドと「雫」のようなメランコリックなピアノが絡まるサウンドが「梅雨」のような湿り気と透明感を演出するジャジーな曲。(1:13〜,2:18〜,3:18)サビのボーカルラインは歌謡テイストが強く「川」のように滑らかに流れる。
8 海辺
ヘヴィな歪みと冷たいピアノサウンドの共存が印象的な曲。タイトルとは裏腹に「実験室」のようなダークさがあり(2:47〜)ギターソロはテクニカルなヘヴィメタルフレーズのようだ(3:35〜)これまでのダークさが嘘のように「晴れ渡る空」を連想する爽やかなパートが挿入されるが、それもつかの間すぐに元のダークなサウンドに戻る。終盤はダークなサウンドに「斜陽」のようなken(g)のギターサウンドが僅かな光を差し込む。
9 THE BLACK ROSE
ミニマムミュージックの巨匠「スティーヴ・ライヒ」を思わせるミニマムなピアノの連打で始まるジャジーなヘヴィチューン(0:50〜,1:54〜,2:48〜)サビではhyde(vo)らしい伸びやか高音を活かしたボーカルラインの裏で透明感溢れるピアノが舞い、サビの後はヘヴィなバンドサウンドと並走する形で「渋みのあるワイン」のようなホーンセクションが鳴り響くレアな展開を見せる。
11 雪の足跡
天から降り注ぐ光をスポットライトにしてhyde(vo)がしっとりとエモーショナルに歌い上げるバラード。ローファイな質感のドラムと重厚なバイオリンを中心に構成される曲でありラルクのバラードの中でも指折りにシンプルな構成をもつ曲ではあるが、リスナーにノスタルジーな冬の景色を連想させる。
12 Hurry Xmas
アルバム「True」に収録されていても不思議ではない弾けたポップソング。クリスマスのワクワク感を表現しているようなストリングスとカラフルなホーンセクションが終始曲をリード(1:35〜)ギターソロは「Xmasプレゼントに添えられた花束」のような華やかさがあるジャジーなテイスト。またポップネスの権化のような歌詞から「ラルク」や「ロック」という殻を打ち破ろうとするチャレンジ精神を感じる。