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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の熱狂的なファンたちによって結成された(wiki)スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees)の1stアルバム。

「パンク」からの影響も感じられるサウンドではあるのだが、それ以上に「既存のサウンドと違う事をやりたい!」というチャレンジ精神が魅力的であると感じる。彼らは「パンクという体裁」ではなく「言葉本来の意味でのパンク精神」を引き継ぎ「退廃的」「耽美的」という形容が似合う質感の音をサウンドに反映させた。

また様々なエフェクターを活用して「これまでにはない響き」を探求しているギターサウンドはロック的なベタさを拒絶するようなスタンスであり、コードストロークのタイミングなどはこれまで様々な音楽に触れてきた筆者からしても「新感覚」と言えるものとなっている。後に「ゴス」を象徴する存在となった彼らのデビューアルバムは、「新感覚」を模索している分「良くも悪くもリアクションの難しい」作品となっている。

    「要点」

  • ・セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の熱狂的なファンたちによって結成された(wiki)スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees)
  • ・「パンクという体裁」ではなく「言葉本来の意味でのパンク精神」を引き継ぎ「退廃的」「耽美的」という形容が似合う質感の音をサウンドに反映

「曲解説」

3 オーヴァーグラウンド

「独自」としか言いようのない不思議なリズム感が印象的な曲で僅かに「フラメンコ的なダンサブルな熱量」も感じることができる。ギターはあまり聴いた事がないタイプのコードストロークで和音を奏でており「激しく弾ける」でもなく「沈む」でもなく「優しく包み込むもの」でもないというレアな響きをもっている。これまで様々なタイプの曲を聴いてきた筆者ではあるがこの曲がもつある種の違和感は「新感覚」と言っていい。
4 カーカス

「どんよりとした曇り空の下で奏でられたパンクロック」という趣の曲。やはりこの曲のギターサウンドもこれまであまり聴いた事がないタイプのコードストロークとなっており「パンク的な分かりやすい突き抜け感」を拒絶している。終盤はハンドクラップが挿入されノリの良さが強調されるが、ギターサウンドだけが「迷子」のように空間を彷徨っている。
5 ヘルター・スケルター

「ホラー」のような暗い空間を鋭角的なギターサウンドが切り裂く曲。リズムはアグレッシヴなギターとは対照的に淡々と時を刻んでいる。歌詞の内容は大混乱で意味不明な内容となっている。「あなたは恋人かもしれませんがダンサーではない」との事だ。
8 ニコチン中毒

シンプルなパンク調の曲だが、歌詞の内容は「喫煙の有害性」を狂気的にそして文学性に描いた凝ったものとなっている(1:18〜)ギターソロは「非パンク的な音響」となっており「鏡の世界」のような耽美性を感じる事ができる。
10 スウィッチ

「耽美」「ミステリアス」などの形容がよく似合う様々な音色の空間系・ギターサウンドが登場する実験曲(3:38〜)リズムがタイトなビートに切り替わるが、ギターサウンドは最後の最後までベタを拒絶している。
12 ステアケイス

退廃的な空気感が後のポストパンクを予見しているかのようなラストソング。頻繁に登場するダークで冷気を感じる歪みギターが圧倒的な存在感を放っており、終盤は「ガラスの破片」のようなピアノの断片が挿入され、曲がもつ不穏さが更に強調される。

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