検索画面を消す
検索画面を消す
live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

投稿詳細ページ

初期を彷彿とさせるミニマリズムを感じる曲が多く収録されている6thアルバム。

初期同様に「ミニマム」という共通点はあるのだが、初期作のような「閉ざされた感」はあまりなくキュアー (Cure) 独自としか言いようのない「浮遊感溢れる異端なポップソング」を数多く収録。前作「The Top」から本格的に導入されたシンセやピアノをキュアー (Cure)ソングの中にうまく落とし込んでおり曲のバランスが格段に上がっている。

初期の曲が良くも悪くも「ミステリアス」「耽美」「浮遊感」など言語化・形容しやすかったのに対して、本作に収録されてる多くの曲は「ミニマム×ポップ」ではあるのだが「形容が困難」なものが多く、ある種のバラドックスが魅力となっている。

例えば「ミステリアスでダークな要素」があったとすれば、そこに相反する「軽快で清涼感を感じる要素」などを盛り込む事でリスナーを「特定の感情」に浸らせない。この他のアーティストと良い意味でズレた「異端なバランス感覚」は見事と言う他ない。

    「要点」

  • ・ミニマムではあるのだが、初期作のような「閉ざされた感」はあまりない。
  • ・「ミステリアスでダークな要素」があったとすれば、そこに相反する要素を盛り込む事でリスナーを「特定の感情」に浸らせない方法論は見事と言う他ない。

「曲解説」

1 In Between Days

透明な解放感を感じるギターポップで初期曲を彷彿とさせるミニマムな音数で構成されている。前作「The Top」から本格導入されたシンセが奏でる「浮遊感溢れる突き抜けた旋律」を最大限活かしたアレンジとなっており、この曲はキュアー (Cure)ソングの中でシンセを有効活用するには?!」という試行錯誤に対する一つの回答であると思われる。
2 Kyoto Song

「上品な和の旋律」を見事に反映させた曲で三味線風の音で奏でられた単音フレーズが非常によく目立つ。歌詞の中に「京都」というフレーズは一度も登場しない。歌詞の内容は「悪夢」と「死」をテーマにした難解な内容となっている。
3 The Blood

「癖はあるが心地よい」アコギのコードストロークを前面に押し出した曲なのだが、バックでは「アラビア」を連想する東洋音階が奏でられてしっかりとキュアー (The Cure)ソングとなっており「意地でも軽快で爽やかなポップソングなんてやるもんか?!という維持すら感じる。
5 Push

「装飾された退廃感」を感じるギターサウンドに「眩しい季節」のようなピアノを絡めており、中盤以降からロバート・スミス(vo)のボーカルが加わり熱量を増す曲展開となっている。歌詞にはキュアー (Cure) らしからぬ「go go go」というフレーズが飛び出す。だが、ロバート・スミス(vo)がこの元気溢れるフレーズを歌っても「ファンキーなテイスト」を一切醸し出さない所がなんとも面白い。
6 The Baby Screams

スピード感がある歪んだベースラインが全体を引っ張る曲。ベースラインだけを聴くと初期作のように「ミニマムでミステリアス」な印象を受けるのだが「水滴」のようなピアノサウンドと「ゆっくり回る」ようなギターサウンドが曲のバランスを大幅に向上させている。ミステリアスではあるが「閉ざされた感」がしないのはそのせいであろう。
7 Close to Me

オーガニックなエレクトロニカサウンドが時代を先取りしすぎている素晴らしいバラード。ノリの良い手拍子が非常に目立つ曲ではあるのだが「一般的なノリ」の良さとは全く無縁である。
9 Screw

サイモン・ギャラップ(b)による歪んだグルーヴィーなベースリフをフィーチャーした曲で「インダストリアル的な硬質さ」が非常に印象的ではあるが「迷子」のように空間を彷徨う電子音が曲に「不思議なポップネス」を与えている。
10 Sinking

「神秘のベール」のようなシンセサウンドの上でサイモン・ギャラップ(b)によるダークなベースラインが「怪しいなダンス」のように踊るバラード。中盤以降はロバート・スミス(vo)のボーカルもエモーショナルになる。

このレビュー記事をSNSでシェア