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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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「1 Rusty Nail」
これまでのエックスジャパン(X JAPAN)にはないシンセサイザーによる鋭角的なループが印象的なヒットシングル。これまで彼らが得意としてきた「激情で美しいハードチューン」とはやや毛色が異なる質感のサウンドとなっており、誤解を恐れずにいうと「J-ロック的」と言っていい整合性を感じるサウンドとなっている。

91年にアメリカで起こった「グランジ / オルタナティヴムーブメント」はこれまでの音楽業界の潮目を完全に変えた。91年以降「ドラマティックで過剰なサウンド」「テクニカルなヘヴィメタルサウンド」などは「前時代的なダサいモノ」として扱われるようになってしまったのである。奇しくも91年はエックスジャパン(X JAPAN) がアルバム「Jealousy」をリリースして100万枚セールスを達成し、日本のロックシーンにおいて「別格の存在」になった年でもある。

92年にアメリカに渡り「本気でアメリカでの成功」を考えていたYOSHIKIにとって「アメリカ版のパンクムーブメント」と言っていい「グランジ / オルタナティヴムーブメント」は完全に誤算であったであろう。要するにエックスジャパン(X JAPAN)の音楽がもつポジティヴな意味での「過剰さ」が当時のアメリアの音楽マーケットにおいて「明らかにNGな質感」になったのである。

この「音楽シーンの流れ」をビジネスセンスに長けたYOSHIKIが見逃す訳がなかった。

アメリカの音楽シーンの流れを見ながらアメリカ版アルバムのレコーディングを進めつつ、同時に日本の巨大音楽マーケットの存在も気にする必要がある。またアメリカでは「1枚も作品をリリースしていない新人アーティスト」である反面、日本では「海外進出を果たしたカリスマロックスター」であったエックスジャパン(X JAPAN)。当時、ここまで複雑な状況での活動を余儀なくされたアーティストは世界中を見渡してもエックスジャパン(X JAPAN)だけであろう。

本曲の歌詞に登場する「素顔のままで生きて行ければきっと」というラインに当時のエックスジャパン(X JAPAN)の苦悩が端的に詰まっていると筆者は感じる。

    「要点」・誤解を恐れずにいうと「J-ロック的」と言っていい整合性を感じるサウンド。

  • ・YOSHIKIにとって「アメリカ版のパンクムーブメント」と言っていい「グランジ / オルタナティヴムーブメント」は完全に誤算
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