暗黒世界のような雰囲気を醸し出していた尖ったメジャー1stアルバム「IMAGE」から1年後にリリースされたメジャー2ndアルバム。前作とは正反対と言っていい「透明で耽美的な幻想世界」という趣の作風となっている。
本作はメンバー・ファンの中でも非常に賛否両論が巻き起こったアルバムではあるのだが、現在の感覚で聴いても「抜群に音が良い」アルバムである事は間違いなくルナシー(LUNA SEA)の「耽美」「ミステリアス」な魅力を余す事なくパッケージングしている。
メジャー1stアルバム「IMAGE」のビジネス的な苦戦から(「IMAGE」は10万枚のセールスをマークしており新人アーティストとしては明らかに良いセールスを記録しているのだが「XJAPANの弟分的な存在」である彼等としては「物足りないセールス」とレコード会社は判断するであろう。)おそらくではあるがレコード会社から「ポップな作風」を求められたと思われるが、レコード会社のいう事を「はい、分かりました」と素直に従うようなアーティストではない。「ポップな作風」を求められ「このノーマルな感覚から良い意味でズレた異形のポップネス」を提案するあたりに彼等のストイックなまでの拘りと尖ったプライドを感じる。
本作がなければ活動休止(96年)までのルナシー(LUNA SEA)サウンドはまた別のものとなっていたと断言できる。そう、ルナシー(LUNA SEA)はどんなにハード、ヘヴィな曲をやってもそこに「耽美性」「神聖さ」が伴うからこそオンリーワンなアーティストであるからだ。
「曲解説」
1 JESUS
「サイバーなグランジ」のようなリフが印象的なオープニングチューン。ソロ活動以降(1998年)〜終幕(2000年)にかけて彼等が頻繁に口にした「輝」というワードをはじめて歌詞に盛り込んでおり「暗黒世界」のような雰囲気を醸し出していたメジャーデビューアルバム「IMAGE」とは正反対の「透明で耽美的」な音響を前面に押し出している。歌詞は「何の為に生まれてきたのか?」という
ダークな気持ちを抱えている主人公が「罪が消えて解き放たれる事ができるなら輝きたい」と願うという内容になっている。
3 Rejuvenescence
「シンプルな英語のワンワード」をタイトルにする事が多い彼等の曲の中で「難解な響きを持つタイトル」の耽美でセンチメンタルな名曲。「氷の世界のような音響」が曲の進行と共に「春の訪れのような暖かい音響」に少しづつ変化していくようなイメージの曲である。人気youtuber/たむたむ氏もカバーしている事からも分かる様にコアファンから絶大な人気を誇る。
4 RECALL
「妖精の国」ようなメルヘンを感じる透明なバラード。「現実と空想の境目がゴチャゴチャになった」ような恋愛感情を歌っている歌詞は非常に文学的である。「四次元の夢」という難解なワードも登場する。
5 ANUBIS
ドラムンベース風のリズムの上をSUGIZO(g)の耽美なカッティングフレーズが舞い踊り、近未来的でエロティックな雰囲気をもつアップテンポな曲。この曲のギターフレーズは布袋寅泰からの影響を感じるものでありルナシー(LUNA SEA)の曲の中で最もボウイ(BOOWY)的であると言える。歌詞の内容な「空想の中の空想」というイメージでぶっ壊れたものとなっている。
6 LASTLY
「戻れないあの日」のようなJ(b)のメロディックなベースラインがインパクト大の物悲しいバラード。歌詞の内容は「分かり合えていた人物の死」を連想させるものとなっており「あの頃に帰りたい」と切望するという内容である。「左回りの時計」というフレーズも登場するが、よくよく考えてみるとルナシー(LUNA SEA)の曲では「時」や「時計」に関する歌詞(壊れた砂時計/時の調べ追わず)や「時計の針」を思わせるサウンドが多く登場する気がする。時が経ち、RYUICHI(vo)が「時計」にハマったのは必然なのかもしれない。
7 IN MY DREAM (WITH SHIVER)
「飛ぶことさえ許されず明日も見えない」どん詰まり状態を言語化した歌詞が切なすぎる2ndシングルなのだが、曲を通して開放的な空気感を感じる事ができる。この曲の歌詞では久しぶりに「女神」が登場。筆者の記憶では「女神」の登場はインディーズ時代のハードコアチューン「CHESS」以来である。
9 LAMENTABLE
弦楽器隊3人がそれぞれの特徴を盛り込んだフレーズを聴かせてくれるアッパーチューン。「恋も夢も知らずにバーチャルな世界で生まれ死にいく主人公に対して「その世界から抜け出して現実を生きろ」と訴える曲。この曲の歌詞は発売当時の93年より現在の若い世代に響くと思われる。
11 STAY
「全てのリスナーに花束を届ける」ようなラストチューンでシンプルなビートが強調された耽美なギターロックチューンとなっている。歌詞の内容は「幻想的かつ耽美で練られた」印象が強い他の収録曲とは一線を画す内容となっており「この想いは何も変わっていない」と高らかに宣言するという内容である。