検索画面を消す
検索画面を消す
live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

投稿詳細ページ

前作「図鑑」はUSオルタナに接近したどこか「混沌」とした雰囲気があるアルバムであったが、今作は「未来」のような眩しさと煌びやかさを感じる「テクノロック」が主となっており同世代の盟友/スーパーカー(supercar)と共に「邦楽シーンの最先端」を提示したアルバムとなっている。

知的で様々な音楽に興味をもつ彼らが「いつまでもシンプルなギターロックだけを鳴らし続ける」ハズもなく、今作で聴くことが出来る「エレクトロニカやポストロック以降の文法を大胆に取り入れたサウンドへの接近」はある意味当然であると思われる。

2000年代の邦楽シーンでは、くるりとスーパーカー(supercar)がクリエイティビティーと独自性の面で 「アタマ2つ位飛び抜けた存在」であったと思う。この2アーティストは様々な音楽的アプローチをサウンドに反映させる「音楽マニア受けするアーティスト」である。

彼らの凄さは「音楽マニア受けするアプローチをしつつも「ギリギリのところでポップソングとして成立させる秀逸なセンス」であると筆者は思う。

    「要点」

  • ・同世代の盟友/スーパーカー(supercar)と共に「邦楽シーンの最先端」を提示したアルバム。
  • ・「音楽マニア受けするアプローチをしつつも「ギリギリのところでポップソングとして成立させる秀逸なセンス」。

「曲解説」

1 TEAM ROCK

「HIPHOP」「ジャズ」など様々なジャンルの音源からサンプリングされた音を複雑に絡ませた曲。この手の情報過多な曲は良くも悪くもジャンクな質感になる傾向にあると思うのだが、このくるりというアーティストの場合「情報過多な音世界」でありつつもどこか「チルアウト的なゆったり感」を感じる。
2 ワンダーフォーゲル

「未来」のようにキラキラした電子音とシンプルな四つ打ちのリズムが残響ギターロックと並走するテクノロック。終盤で聴ける「光のシャワー」のような電子音はスーパーカー(supercar)の名盤「フューチュラマ」(Futurama)と共通の質感を感じる。斬新ではあるが良質なポップソングとして仕上げるアレンジセンスはさすがの一言。
3 LV30

シューゲイザーのカリスマ/マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)をイメージして制作された(wiki)「酩酊」のようなサイケチューン。歌詞は岸田繁(vo ,g)自身が大ファンである「ドラクエ」からインスピレーションを得ている。所々で「スライム」や「ルーラ」を思わせる立体的な電子音が登場する。
4 愛なき世界

シンプルなギターロックではあるが「スペーシーな音響」と「未来」のような眩しさを感じる曲。歌詞にある「君は歌う、安心を買ったって」というラインは、2000年前半の邦楽シーンを共に駆け抜けたスーパーカー(supercar)の名曲「FAIRWAY」に対する一種のアンサーであると思われる。「FAIRWAY」の歌詞は「「安心」を買ってよかったと思っていたら「安心」は「退屈」であった昔とどこか似ていた」という内容である。
5 C’mon C’mon

「巨人の足跡」のようなタイトでドッシリとしたビートの上を「透明な煙」のような電子音が彷徨い「無機質な都会」のような雰囲気を醸し出している。歌詞は「C’mon C’mon」のみとなっており「くるり流アシッドハウス」 という趣の曲となっている。
7 永遠

複雑に絡んだブレイクビーツの上を「ガラスで出来た万華鏡」のようなミニマムなループが舞うダンスチューン。海外のエレクトロニカ勢であれば、もっと分かりやすくリズムオリエンテッドな曲になりそうなものだが、音楽マニア受けするアプローチをギリギリのところでポップソングとして成立させる「くるりの真骨頂」を堪能できる曲となっている。
9 ばらの花

「何も起きない平凡な日常」のような淡々としたベースラインの上を「淡い期待」のような電子音が舞う代表曲。バックコーラスにフルカワミキ(スーパーカー(supercar))が参加しており、この曲の歌詞にも「安心な僕ら」というラインが登場する。当時のくるりにとってスーパーカー(supercar)は「自分達に刺激を与えてくれる数少ない同世代アーティスト」であったのだろう。「最終バス」というフレーズが登場するのは、くるりのメンバーが京都出身だからであろう。

このレビュー記事をSNSでシェア