検索画面を消す
検索画面を消す
live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

投稿詳細ページ

「クリアでアンビエントな音響」を前面に押し出した前作「極東 I LOVE YOU」とはうってかわり、「ロックンロール」や「パンク」がもつダイナミズムを「90年代を通過した感性」で再構築したサウンドが聴ける13枚目のアルバム。

過去の遺産(R&R、パンク)をナチュラルに奏でる懐古主義ではなく、初期衝動的なスタンスで細かい事よりもノリを重視した曲が多いと感じる。「1 ナカユビ」高速デジタルハードコアチューン、「4 LIMBO」アンダーワールド(Underworld)を彷彿とさせる「憂鬱なダンスミュージック」、「7 Sid Vicious ON THE BEACH」「おもちゃ」のような明るさを感じるニューウェイブソングetc

2000年前は「ロックンロール・リバイバル」なるムーブメントが世界的なトレンドとなったが、 今作はサウンドとしてのロックンロールというより、どちらかというとアティテュード面での 「ロックンロール」=「ノリが良くてかっこよければなんでもアリ」を具体化したアルバムと言える

    「要点」

  • ・「7 Sid Vicious ON THE BEACH」「おもちゃ」のような明るさを感じるニューウェイブソング
  • ・サウンドとしてのロックンロールというより、どちらかというとアティテュード面での 「ロックンロール」=「ノリが良くてかっこよければなんでもアリ」を具体化したアルバム

「曲解説」

1 ナカユビ

強烈なフラストレーションをダイレクトに叩きつける高速デジタルハードコアチューン。櫻井敦司(vo)と今井寿(g)によるツインボーカルは数えられないほどに「I HATE YOU SO FUCK IT」というフレーズを繰り返す。非難GO-GO時代(B-Tインディーズ初期)にこの曲の原曲が作られていたとしても筆者は全く驚かない。それ位イケイケの曲。
2 BUSTER

アシッドハウス的な潤いを感じるハードチューン。この曲でも今井寿(g)はボーカルを披露しており、歌詞の内容は今井寿(g)らしい「未知の生物」をテーマにしたシュールなものとなっている。
3 残骸 -Shape2-

ナチュラルに歪んだギターリフを中心に展開されるロックンロール。ニューウェイブ・テクノをルーツにもつバクチク(BUCK-TICK)がここまでストレートなロックンロールを鳴らすのは非常に感慨深く、歌詞も「深く、もっと深く」というフレーズをリフのように繰り返すものとなっている。
4 LIMBO

アンダーワールド(Underworld)を彷彿とさせる「憂鬱なダンスミュージック」をB-T流にアレンジしたような曲。サビのボーカルラインは淡々とした語り調であるが、「強烈なボディーブロー」のように「ドシッ」「ドシッ」と響く「ヘヴィなギターサウンドの断片」が登場して非常に目立つ。
6 GIRL -Shape2-

「妄想のリゾート」のような空気感が新鮮なエレクトロポップ。祝祭性を感じる電子音はまるで「ネオンカラー」のように眩しくバンドサウンドはメロウなUKロックのようなシンプルな音をだしている。
7 Sid Vicious ON THE BEACH

今井寿(g)がメインボーカルを担当するポップなニューウェイブソングで「おもちゃ」のような明るさがある。セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の名曲「アナーキー・イン・ザ・U.K.」のリフを引用しており(wiki)いろんな意味で遊び心に溢れる曲となっている。「退屈な星がくるくる回るメリーゴーランド」という表現で何気ない日常を表現する今井寿(g)の作詞センスはやはり非凡である。
8 BLACK CHERRY

ブルージーでシンプルなロックサウンドと「跳ねる」ようなトリッキーな電子音が並行する曲でサビでは前作「極東 I LOVE YOU」に収録されていた 「21st Cherry Boy」とも共通する「春風」のようなコーラスが曲にポップネスを与える。
10 MONSTER

「頭の中にいるぶっ壊れた化け物」について歌ったハードチューン。「鉛」のような重みを感じる歪みギターリフを中心としたシンプルな曲だが(1:30〜、2:57〜)サビのバックでは「光の世界」を連想する眩しいサウンドレイヤーが登場して曲に浮遊感を与えている。
12 Continuous

ビートの粒が「ガラスの破片」のように突き刺さるインストで前作「極東 I LOVE YOU」のオープニングチューン「疾風のブレードランナー」を再構築している(wiki)「海の中にいる」ようなディープさを感じる曲で前衛的なビート・アーティスト「オウテカ(Autechre)」からの影響を感じさせる。

このレビュー記事をSNSでシェア