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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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デジタルサウンドを大胆に導入して「無機質な質感」を強調したサウンドは「地下の実験室」のような静けさを感じさせ、様々な前衛音楽からの影響を受けていると思われるが「B-T独自」としか言いようがないオリジナリティーの塊のようなアルバムとなっている。

本作の素晴らしい点はデジタルサウンドを導入したアルバムによくありがちな「情報過多」に陥る事なくコンパクトな音数にまとめられている点である。また過去のレビューでも触れた「アブノーマル・マニアックなサウンド」をポップソングに落とし込むB-Tマジックは本作でも健在であり、ほとんどの曲で「狂った動物」のようなエッジの効いた音響を聴くことができるが同時に不思議なポップネスも感じる事ができる。

名作「Six/Nine」で頻出したヘヴィなの質感ギターサウンドは本作にはほとんど登場しない。常に変化し続けるB-T(とりわけ今井寿(g))のアーティスト魂には恐れ入る。特に「10 MY FUCKIN’ VALENTINE」はモンスター級の破壊力で全ての音楽ファン必聴のアナーキーソングと言える。

    「要点」

  • ・デジタルサウンドを大胆に導入しており無機質な質感を強調したサウンドは「地下の実験室」のようだ
  • ・「10 MY FUCKIN’ VALENTINE」はモンスター級の破壊力で全ての音楽ファン必聴のアナーキーソング

「曲解説」

1 タナトス

「地下の実験室」のような不穏さを感じるサウンドをデジタルロックに大胆に反映させたオープニングチューン(1:47〜、3:12〜) 「狂った電気ネズミ」のような質感のデジタルサウンドが曲にメタリックなうねりを加える。終盤は今井寿(g)による「レーザービーム」のようなノイズギターが「迷い子」のように空間を彷徨う。終始これまでのB-Tソングにはない「無機質な静けさ」を感じる曲となっている。
2 SEXY STREAM LINER

ミステリアスな音響が「油絵」のように揺らめくジャンクなインスト。リズムアプローチは「アナーキーなタップダンス」のようで無秩序そのものである。 (2:15〜)ニュースキャスターの声をサンプリングしたと思われる声が挿入されミステリアスな雰囲気を助長する。この曲を2曲目に配置するセンスは面白すぎるといしか言いようがない。
3 ヒロイン -angel dust mix-

濃厚なエロスを感じる今井寿(g)のギターサウンドがインパクト大のヒットシングル。リズムはブレイクビーツ風であり「鋭角的」という表現がピッタリである(2:55〜)「珍獣たちが暴れ始めた」ような質感のアシッドハウス・ビートが登場。その後は「眩しすぎる光」のようなギターサウンドがリスナーの視界を真っ白にして最後のサビに移行する。サビの歌詞における「流れるアクエリアス」とは涙の事だろう、多分。
4 無知の涙

ずっしりとした重さを感じるB-T流インダストリアルチューン。「カチッ」としたサウンドとは裏腹に歌詞には「テディベア」「綺麗な髪の少女」などの歌詞が登場。戦場に「綺麗な髪の少女」が一人孤独に佇むビジュアルがイメージできる曲となっている。
6 螺旋 虫

「海の中にいる」ような揺らめきと浮遊感を感じるアンビエントロック(1:56〜)「海底」のような気怠さを感じるギターサウンドが櫻井敦司(vo)のボーカルラインをそっと包み込む。歌詞は非常に文学的で「夜に迷う螺旋の観覧車」なるラインはインパクト大。
7 蝶蝶

「ブタ」になったと思ったら最終的には「バタフライ」になるという歌詞が意味深な曲。作曲はバラードが得意な星野英彦(g)が担当しているが、 本曲はバラードではなくデジタルビート強調したインダストリアル・ロック風となっている。
9 迦陵頻伽 Kalavinka

「マニアックな四文字熟語」のようなタイトルがインパクト大でサウンドはオリエンタルな煌びやかさと優雅さを感じる「独自過ぎるテクノサウンド」となっている。櫻井敦司(vo)のボーカルラインは曲を通して「メロディックな語り調」である(2:54〜、4:33〜)「頭の中に電流が走る」ような電子音が登場し、 そこから「黄金のメリーゴーランド」を思わせる煌びやかな音響フレーズが展開される。
10 MY FUCKIN’ VALENTINE

無機質なテクノサウンドと今井寿(g)のぶっとんだアナーキーラップが最高すぎるアッパーチューン。歌詞がとにかく素晴らしく「頭の中に思い浮かんだバーチャルな衝動」を全て叩きつけたようなものとなっており、「ル」で韻を踏む「病める」「バーチャル」「繋がる」「ケーブル」「乱れる」「ウイルス」などのワードが登場する(2:02〜)「この世を憂う」ようなダークさを感じるアコースティックパートが一時挿入される。
12 キミガシン..ダラ

「夜空を舞う」ような軽やかさを感じるデジタルロックでタイトルとは裏腹に本作の中で最もサビに疾走感がある曲となっている。歌詞は「キミ」に対する愛情をテーマにしたもので間違いないのだが、表現がB-Tらしく捻くれまくっており「ボクガシン..ダラ ヤミニナル」という表現で愛情を表している。

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