「曲解説」
1 Loop
「中東的な音響」と「スペーシーな質感」をもつエレクトロニカサウンドをバックに「自然とあなたに対する感謝」を淡々と朗読する衝撃のオープニング。オルタナ・グランジ以降の乾いたカッティングギターは「宇宙を彷徨っている」ような浮遊感と静けさがある。
2 love letter
大胆に90年代へヴィネス導入したロックチューンでヘヴィなリフが目立つ曲ではあるがHR/HM的なグルーヴ感はなく、「ヘヴィなB-Tニューウェイブ」という感じのサウンドとなっている。
3 君のヴァニラ
「ヨレたエロス」を感じるミニマムなオルタナチューン。歌詞の内容はおそらく「刹那的でアブノーマルな恋愛」についてである。(2:31〜)エロティックな展開から「メロウな夏休み」のようなギターソロが登場するが、そこに「B-Tらしい不穏なノイズサウンド」が登場しなんとも言えない空気感が出来上がる。
4 鼓動
「幻」のような雰囲気を感じるB-T流シューゲイザーソング。サビで「感情を解き放つ」ような展開にはレディオヘッド(Radiohead)的なダイナミズムがある。歌詞は「母とこの世に生きる全て」に対する感謝を歌っており、最後は「これまでの事が全て夢であった」かのようなドリーミな揺れる音響に包まれる。
5 限りなく鼠
アリス・イン・チェインズ(Alice in Chains)を彷彿とさせる「泥水」のような重さと気怠さを感じるスローなヘヴィリフを中心に構成されている曲で櫻井敦司(vo)のボーカルは「ホラー映画」のような質感で過去最高レベルにおどろおどろしい。歌詞は「不条理な世の中に対する」諦めにも近い感情を吐き出しており、「道しるべに騙されたように」というラインは秀逸で「救いようのなさ」を端的に表している。
6 楽園(祈り 希い)
全ての音響から「泥酔」のような揺らめきを感じるルーミーでマニアックな曲。「戦争や殺戮が終わらない世界に対する」馬鹿らしさを「神の子が殺し合う愛の園」という歌詞で批判しつつも、そんな世界に対して「何もする事ができない自分」に対する虚無感を歌っている。
9 相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり
今井寿がメインボーカルを担当する曲でアルバムタイトルにも深く関係している強烈な歌詞がインパクト大。歌詞の内容は「腐りきった音楽業界」を批判したもであり、「six side is heaven nine side is go」なる歌詞はおそらくではあるが「独立」を暗に宣言していると思われる。それにしてもかっこ良すぎるラインである。
11 密室
ダビーな音響とタイトル通りの密室感を感じる偏執的なラブソング。マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)からの影響を感じる「揺らめくサイケサウンド」を中心に構成されている(1:17〜、2:50〜)狂おしい愛情を歌うボーカルラインの後ろでは「砂嵐」のようにザラついたノイズサウンドが吹き荒れる(1:58〜)ギターソロは「蜃気楼」のようなフィーリングでリスナーの鼓膜に絡みつく。
12 Kick(大地を蹴る男)
グランジをエレクトロポップ化したようなアブノーマルなロックチューン。この曲の歌詞も「9 相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」同様に「独立の決意」を表したものだと思われる。サビのライン「道化師躍れ、それが運命」なる歌詞をここまで楽しそうに歌うシンガーは櫻井敦司(vo)だけであろう。
15 見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ
ニルヴァーナ(NIRVANA)のギターリフを今井寿(g)流にワンコードで再構築したリフが終始リフレインされるダークなギターロック。サウンド自体はシンプルでダイナミックなサウンドであるのに対して、歌詞の内容は非常に癖が強く一聴すると「捻くれすぎた男の嘆き」のようなものに聴こえるが「不条理なこの世界に染まるのは危険だ」と警笛を鳴らすような内容ともとれる。深読みかもしれないが。
16 Loop MARK II
宇宙から「美しい奇跡の星」を静かに眺めるようなスペーシーさと静けさを感じるエンディング。櫻井敦司(vo)が「り・ん・ね」というフレーズを時間をたっぷり使って囁く。