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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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前作から登場した「グランジの質感」を更に色濃く反映した作品だが強烈な歪みや壊れたようなジャンク感を見せてくれる一方で、エレクトロ音楽的やHIP HOPなどのビート感などを柔軟に取り入れている。

過去最高に「ハード」「ヘヴィ」なサウンドになっておりキャッチーなメロディーでPOPな雰囲気があるのは「7 Do me」位になっている。これまでの彼らの曲はハードなリフが鳴っていたとしても、ボーカルラインのバックではJ-POPのフィールドを意識したサックスやキーボードが曲に色彩を与えていたのだが、「好きな人だけついてきてね」と言わんばかりに本作ではJ-POPフィールドを意識した色彩が圧倒的に少ない。この作品を一言で言うなら「分岐点」だと思う。

    「要点」

  • J-POP要素が少なくハードな作風に移行した分岐点
  • HIP HOPやエレクトロニカ風のビートが登場

「曲解説」

 
1 DEEP KISS

「鞭のようにしなる」強烈に歪んだギターリフが強烈でパワフルなドラムと「脳にくるファンク」なベースからなるリズムも過去最高にハード。静→動のダイナミズムを活かした展開をもっており90年代USグランジからの影響を感じることができる。ダイナミックなサウンドが炸裂するリフオリエンテッドな曲。
  2 スイマーよ!!

サイバーなビートとアーバンでミニマムなベースラインが特徴の曲で電子の海を泳ぐような心地よい重力感を感じる(2:05〜)エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)風の切り刻まれるビート(2:18〜)ソニック・ユース(Sonic Youth)風の壊れたノイズなど、これまでのビーズ(B’z)の曲にはまず出てこないサウンドが登場。wikiによるとゲストミュージシャン徳永暁人(b)によるアレンジらしく、見事にゲストミュージシャンの個性と化学反応を起こした曲。
3 Survive

イントロはノスタルジーな気分に浸れる陽炎のようなギターサウンドが流れる。その後は夕暮れの草原のような牧歌的なアコギのストロークとのびやかに歌われるボーカルラインを中心となる構成(2:48〜)機嫌の良い鳥のような快調なシャウトが響き、その後はコクのある伸びやかなギターソロが流れる。終盤はイントロ同様ノスタルジーな雰囲気になり静かに終わる。
4 Liar! Liar!

「迷宮に迷い込んだ」ような立体的な電子音と重低音が効いたビートが曲にスピード感を与えており、ギターサウンドはチューニングを下げて低音が強調されている。ボーカルラインはメロディーというよりハードロックのリフのようで、当時の日本のメジャーシーンの中では異質だったと思われる。曲全体として音の塊を投げつけるようなハードな質感となっている。
6 FIREBALL

グランジ的なヘヴィさとうねり感を前面に押し出した曲。流砂のようにドロっとしたうねるベースラインが混沌とした雰囲気を醸し出しており、ギターサウンドはザラついた歪みサウンドで破壊力がある。初期からのファンはこの曲にどうリアクションを示すのだろうか?!最後まで歪みの残響は残り続ける。
7 Do me

「壊れたおもちゃ」のようなアバンギャルドなギターサウンドで始まり、軽く歪んだカッティングとご機嫌なホーンセクションを中心に展開されるノリノリな曲。本作の中で最もポップな曲でグランジを消化したビーズ(B’z)流ポップソング(2:48〜)最後に「弾き足りない」と言わんばかりに松本 孝弘(g)がコクのある歪みギターを弾きまくる。
9 CAT

アーバンな質感と中国的な哀愁を混在させたようなサウンドは「上海の高層ビル群をすり抜ける髪の長い少年」を連想する(1:25〜)珍しく空間的なクリーンなアルペジオが登場、曲に浮遊感を与えている。アーバンで浮遊感を感じる質感のサウンドとなっているが、対照的に稲葉浩志(vo)のボーカルは相変わらずパワフルでサウンドとボーカルに心地よいミスマッチがある。
11 Shower

SEでは砕けた氷の破片のような音が鳴り、空間的でスローなアルペジオが「雲に乗っている」ような夢心地な浮遊感をリスナーに与える。曲は夢見心地なのだがサビでは稲葉浩志(vo)の力強いボーカルラインが歌われる。「9 CAT」同様にサウンドとボーカルに心地よいミスマッチがある(4:18〜)最後はアンプのフィードックが孤独に鳴り響く。
  12 Calling

イントロはHIP HOPのビートと松本 孝弘(g)のコクのある伸びやかなギターサウンドで構成される(1:08〜)哀愁感漂うピアノの調べとストリングスをバックに稲葉が繊細でエモーショナルな歌を歌い上げる(2:16〜)壮大でエモーショナルなサビのボーカルラインが歌われ、その後に泣き叫ぶようなギターソロが登場。中盤以降もピアノの調べが流れるクラシカルな展開からサビに移行し最高潮を迎える(4:25〜)終盤は転調してイントロのHIPHOPビート×ハードなサウンドが鳴り響き少しずつフェードアウトしていく。HIP HOPのビートとハードサウンドの掛け合わせは、USミクスチャー勢のようなストリート感のあるサウンドになるのだが、ビーズ(B’z)の場合は松本 孝弘(g)独自のギタートーンもあり独自の雰囲気になっている。この曲のイントロはUSハードバンドと日本のハードバンドの比較ネタとして面白い。

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