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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト
検索結果57件

カテゴリー「傑作」のレビュー

デリック・メイ(Derrick May)によるソロプロジェクトであるRhythim is Rhythim名義の作品でデトロイトテクノを世に知らしめたEPが本作である。デトロイトテクノの元祖とも言える「No UFO’s(EP) / Model500 」から感じた「都会の夜」のような雰囲気は今作にはあまりなく、アナログで美しい景色を連想する音が印象的であると感じた。

思わず「オッ」と思ってしまう凝られた音の数々は非常に刺激的で曲に色彩を与えている。テクノ勢はもとよりポストロック勢や前衛的なロックアーティストにも影響を与えていると思われる抜群のバランス感覚は永遠に色褪せない。

    「要点」

  • アナログで美しい景色を連想する音
  • 本当に87年の作品なのか?!と本気で疑うレベルのバランス感覚

「曲解説」

1 Strings of life(Flam-Boy-Ant Mix)

ミニマムなピアノをフィーチャーした疾走感のあるアッパーチューン。序盤はダンサブルだが「昼下がり」のようなメロウさもある展開となっている(0:52〜)1音1音がはっきりとしたカラフルなシンセサウンドが頭の中を次々と通り過ぎ曲を華やかにする(1:22〜)「優雅な風」のようなストリングスに「交差する光」のようなシンセサウンドが絡まりBPM以上の疾走感を感じる(3:52〜)一瞬のブレイクを境にリズムアプローチが原始的でオーガニックなものに変更される(4:38〜)優雅に流れる旋律をビームのような電子音が切り刻む展開は本曲作最大の見せ場となっている。最後はダンサブルなリズムが唐突に途切れるようにして終わる。
3 Kaos(Juice Bar Mix)

「渦巻雲」のように回転する空間系サウンドがインパクト大の曲(1:22〜)アシッドハウス的なシンプルな四つ打ちとディープな低音で構成されるパートに移行(2:34〜)その後は「早歩き」のような16ビートに切り替わる(3:32〜)そこにメタリックで弾力のある「メタルスライム」のようなサウンドがが登場し曲にインパクトを与えている。87年にこのサウンドは新し過ぎてどうリアクションをすれば分からないレベルであると思われる。

デリック・メイ(Derrick May)によるソロプロジェクトであるRhythim is Rhythim名義の作品でデトロイトテクノを世に知らしめたEPが本作である。デトロイトテクノの元祖とも言える「No UFO’s(EP) / Model500 」から感じた「都会の夜」のような雰囲気は今作にはあまりなく、アナログで美しい景色を連想する音が印象的であると感じた。 思わず「オッ」と思ってしまう凝られ

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日本の人気テクノアーティスト「電気グルーヴ」やエイフェックス・ツイン(Aphex Twin)などのエレクトロニカ勢に影響を与えた808ステイト(808 State)の2ndアルバム。

内容としてはアシッドハウスからの影響を洗練されたエレクトロなセンスで再構築したような作品であり、カラフル音色の数々はBPM以上のスピード感を曲に与え多くの曲でレイヴ的な開放感を感じることができる。時折登場するセンス抜群のサンプリングボイスが本作をぎりぎりの所で「ポップ」として成立させる重要な要素であり「1 Magical Dream」などはまるで2010年代のドリームポップのような曲だ。

    「要点」

  • 後続のアーティストに多大な影響
  • アシッドハウスを洗練されたエレクトロなセンスで再構築

「曲解説」

1 Magical Dream

儚く細い女性ボーカルをフィーチャーした「深い霧」のような雰囲気を感じるエレクトロソング。アシッドハウス的な潤いのあるディープな低音と氷細工のような質感のシンセサウンドの対比が印象的でアシッドハウスを抜群のポップセンスでアレンジしたようなイメージだ。
2 Ancodia

ワープを連想する電子音から始まるファンキーな曲
(1:00〜)無機質ではあるが不思議な暖かさを持つロボット風コーラスが登場 (1:16〜)ソウルフルな女性ボーカルと「動物の鳴き声にエフェクトをかけた」ようなサウンドがアシッドハウス的で「1 Magical Dream」同様にボーカルの活かし方が抜群にうまい!中盤以降はビートが強調されよりダンサブルな展開になり「ストリート的なエッジ」と「ジャングル」を連想するような質感の音が断片的に鳴り響く(4:25〜)「スコールの後の眩しすぎる光」のようなシンセサウンドがサイケデリック。最後は「タイムマシンに乗った」ような時空を超える電子音で幕を閉じる。
3 Cobra Bora

「空を飛ぶ車でドライブ」しているような浮遊感とスピードを感じる曲。歪んでエッジの立っている重低音の上を様々な音の断片が現れては消える(2:40〜)ラビリンスを連想するミステリアスなシンセサウンドが曲に色彩を与える(3:10〜)濃厚なドットのようなビートが連打され、それを境にダンサブルなビートと陽炎のように揺らめくサイケサウンドに切り替わる(5:18〜)臨時ニュースのような「パッパ〜♪」という少し能天気なサックス(多分) の音が登場し、その後はこれまた「タイムマインに乗って時を超える」ような極彩色のシンセサウンドが降り注ぐ。
4 Pacific 202

「フライト中の窓から真っ赤な夕日を眺める」ようなイメージの渋い曲で哀愁を感じる「白い煙」のようなサックスの音色が曲をリード。ベース音とリズムは「手品」のように手を変え品を変えた様々な音色を聴くことができる。終盤はまるで「虹の中をフライトしている」ようなカラフルさを感じる展開となり最後は鳥のさえずりが鳴り響く。
5 Donky Doctor

「スライム」のように潤ったビートの上をスピード感のある鋭角的なサウンドが舞うダンサブルな曲。「ピラミッド」を連想するシンセサウンドが随所で挿入され、終盤は金属的で直線的なビートとループされる呪文ボイスが現れる。
6 808080808 – 808080808

「プログラミングのエラー文」のようなタイトルとは裏腹に「野外」を連想する「レイヴ的な開放感」をもち、「カラフルな音のシャワーが容赦なく上空から降り注ぐ」エッジの効いたエレクトロ。時折挿入される「曖昧な記憶」のような細切れボイスがレイヴ感をより強調する。
8 The Fat Shadow

「鏡の世界に迷い込んだ」ような空気感をもつ1分弱の曲。アシッドハウス的な命令のような男性ボイスが不穏な空気感を助長する。

日本の人気テクノアーティスト「電気グルーヴ」やエイフェックス・ツイン(Aphex Twin)などのエレクトロニカ勢に影響を与えた808ステイト(808 State)の2ndアルバム。 内容としてはアシッドハウスからの影響を洗練されたエレクトロなセンスで再構築したような作品であり、カラフル音色の数々はBPM以上のスピード感を曲に与え多くの曲でレイヴ的な開放感を感じることができる。時折登場するセンス抜

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「グランジ的なヨレたギターサウンド」「ジャジーな音色と展開」「ストリングスの大胆な導入」などこれまで以上に新たな要素を取り入れた作品。J-POP的な曲はシングルカットされた「7 love me, I love you」位でありアナログな質感の音が多いという印象。

新機軸にトライした作品ではあるがビーズ(B’z)独自の「ハードなポップネス」は今作も健在サビのボーカルラインは大河のようなスケールの大さが特徴であり特に「13 drive to MY WORLD」のボーカルラインは特筆。音楽的な挑戦を試みながらもビーズ(B’z)のオリジナルアルバムの中で最も売れた(300万枚)作品である

    「要点」

  • 「ハードさ」と「POPさ」が理想的なバランス
  • グランジ的なヨレた質感とジャジーな要素が新鮮
  • 音楽的にもセールス的にも最高レベル

「曲解説」

1 spirit loose

90年代以降のUSギターロックの壊れた質感を少し取り入れたラフなギターカッティングが印象的。「壊れたラジオ」のように掠れた稲葉浩志(vo)のシャウトはUSグランジの代表格サウンドガーデン(Soundgarden)にも全く劣らない迫力がある。
2 ザ・ルーズ

うねるベースラインとグルグルと目が回るようなギターリフが絡みつくイントロではじまり、ダルっとしたルーズな雰囲気と晴天のようなホーンセクションが同居している曲。90年代USギターロック的な質感を取り入れつつもポップネスは失われておらず、また稲葉浩志(vo)の過去の経験からくる「独り言風の語り」もどこかコミカル。ギターソロの余韻を残すハウリングが止むと(2:33〜)エフェクトが掛かった声で展開される独特なラップが聴ける。
3 ねがい

異国感を醸し出すリズミカルなパーカッション、教会の窓から差し込む光のようなキーボード(オルガンかも)とミニマムなコードカッティングを中心に展開されるジャジーな曲。キャッチーなサビのボーカルラインの裏ではやはりここでも「晴天のように明るい」ホーンセクションが鳴り響く(3:00〜)サビの後にベースとピアノだけのジャジーな展開となりその後、ギターソロが鳴り響く。歌詞の内容は迷路に迷い込んだ主人公が神様に願いを叶えてくれと懇願するという内容だが、神様に対してその言い方はないだろとツッコミどころ満載。
5 BAD COMMUNICATION

ミニマムなベースリフとフラメンコ調のギターフレーズが印象的でデジタルダンステイストだった原曲を70年代ハードロック風にアレンジしている(3:53〜) 「BAD COMMUNICATION!」というボーカルラインの後から、リズムが激しさを増していく展開となりハーモニカソロも登場。最後はそのまま激しさを増し熱量マックスのところで終わる。
7 love me, I love you

本作で最もポップな曲。派手でゴージャースなホーンセクションが鳴り響きギターは疾走感を助長するプレイに専念(2:02〜)これまでの弾けたポップソングとは対照的な泣きの早弾きギターソロが聴ける。「人の心は弱いし足りないところもある」と認めつつも「消去法」や「人頼みではダメ」という解決策をリスナーに提案する歌詞が秀逸で「悩みやうまくいかない要因に対して解決策を歌う」ここが彼らがメガヒットを連発した背景のの一つなのかもしれないと妙に納得。
8  LOVE PHANTOM

イントロは壮大なオペラ調のストリングスが緊張した空気感を作り、そこに乱反射する光のようなキラキラした電子音と重低音を強調したベースと唸るギターサウンドが絡みあう冒頭。男性コーラスが「LOVE PHANTOM」というタイトルワードを言った後は、いきなりサビのボーカルラインから突入するというインパクト大の曲。 よく聴いてみると重低音が効いたシンセポップがベースとなっており、そこにストリングスやキラキラした電子音、歪んだギターサウンドが鳴っている。「クネクネと動くヘビ」のように空間を動き回る松本 孝弘(g)のギターは過去最高の暴れっぷり(4:02〜)オペラ歌手の優雅なコーラスが曲をより壮大な雰囲気にして最後は優雅なコーラスコーラスと伸びやかギターが絡み合い終わる。
10 砂の花びら

ずっしりとしたベースラインとオリエンタルな雰囲気のするギターサウンドが特徴。叙情的なサビのボーカルラインの裏ではゴスペル風のコーラスが稲葉浩志(vo)本人によって歌われている。曲自体はシンセやキーボードは入っておらずアナログな質感だが、オリエンタルな空気感やゴスペル風のコーラスなど新機軸にトライした曲。
12 BIG

アグレッシヴなアコギのコードストロークが終始鳴り響き、その上を少しコミカルな世界観の歌詞を歌うボーカルラインが乗る。端的に表現するとゆずの曲をB’zがアレンジして演奏したような質感の曲で歌詞の内容はBIGになりたい男の日常について。
13 drive to MY WORLD

「アーバンな雰囲気」と「乾いた砂漠のような雰囲気」が混在した曲でシンプルなバンドサウンドが非常にダイナミックに鳴り響く。サビのボーカルラインは非常にフックがあり、唸りを上げるギターと絡むことでさらにスケールを増す。最後は叙情的で焼け付くようなギターソロが鳴り響きそのままフェイドアウトする。

「グランジ的なヨレたギターサウンド」「ジャジーな音色と展開」「ストリングスの大胆な導入」などこれまで以上に新たな要素を取り入れた作品。J-POP的な曲はシングルカットされた「7 love me, I love you」位でありアナログな質感の音が多いという印象。 新機軸にトライした作品ではあるがビーズ(B’z)独自の「ハードなポップネス」は今作も健在サビのボーカルラインは大河のようなス

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インディーズシーンで伝説を残した「X」が1989年にリリースしたメジャーデビューアルバム。まるで「全てのパートが歌を歌っている」かのような美しい旋律を感じることができる内容となっている。

インディーズアルバム「Vanishing Vision」はハードコアの影響が大きい激しくエッジのたったサウンドを聴かせてくれたが、今作はそれがよりクラシカルに洗練された形で表現されており、「2 BLUE BLOOD」「5 X」「7 紅」などの激しく疾走する曲であってもどこか哀愁と静けさを感じる。

彼らの音楽のキーとなっているのは間違いなく「旋律」でありそれはサウンドがハードコアであろうとスラッシュメタルであろうと関係なくリスナーの脳裏に刻まれる。また歌詞の内容も素晴らしく所々に究極の自己啓発のようなフレーズが散りばめられている。本作で強烈なインパクトを残した「X」はあっという間にロックシーンの頂点に向けて駆け上がる。

    「要点」

  • 激しさをクラシカルに洗練された形で表現したメジャーデビユー作
  • 全てのパートが歌っているような美しい旋律

「曲解説」

2 BLUE BLOOD

初っ端からMAXスピードで全力疾走するYOSHIKI(dr)の強烈なドラムプレイで幕を開ける、これぞ「X」というクラシカルな旋律を感じるハイスピードなメタルチューン。疾走するツインギターはザクザクした質感でヘヴィメタルしているが確かなメロディーを感じる事ができ、「give me some more pain!!」というコーラスが当時の彼らの尖りっぷりを象徴している(2:08〜)ボーカルラインを強調したメロディックな静かなパートが挿入され(2:27〜)ツインギターによる流麗なハモりソロが鳴り響く、USヘヴィメタルと比較すると顕著だが「歌心」を感じる旋律となっている。アウトロはただでさえ強烈なYOSHIKI(dr)のドラムが最後の追い込みとばかりに畳み掛けるプレイを聴かせる。
3 WEEK END

スローテンポなX流ロックンロール。イントロはでは「しっとりと降る雨」のような透明感あるアルペジオが鳴り響くが、その合間を縫うに登場するウォームでコクのあるギターリフとベースラインがこれから起こるカオスを予感させる。BPMは「X」にしてはスローテンポといえるものになっている(1:35〜)「2 BLUE BLOOD」同様にボーカルラインを強調した静のパートが挿入されロックンロール調の曲にアクセントを与える。歌詞の内容は「幻覚」そのものである。
4 EASY FIGHT RAMBLING

シャフルビートに乗せて展開される元気の良いハードロックソング。TAIJI(b)によるワイルドな掛け声コーラスは色んな意味で「X JAPAN」では聴けないものである。アウトロではサイレンのようなギターサウンドと早弾きベースソロが炸裂する。
5 X

「X」というアーティストの魅力が凝縮されている彼らの代表曲。相変わらずドラムプレイは強烈なものになっており「屈強なサラブレットの足音」のようだ。筆者の見解としては歌詞の内容は「究極の自己啓発である」と感じる。「見慣れた愛に流される」のか、それとも「刺激に身をさらす」のかをYOSHIKIは我々に問いかけてくる(3:18〜)静けさの中でスタイリッシュに響くTAIJIのベースラインは秀逸で「激しい雨が降り注ぐ中、ふと冷静になり夜空を見上げタバコを吸う」ようなイメージが浮かぶ。
6 ENDLESS RAIN

「しっとりと優しい雨が降る街角」のような雰囲気の名バラード。TOSHIが美しいボーカルラインを歌い上げる。歌詞の内容は「消えない傷跡」について。底でひっそりと佇むながらも存在感を示すベースラインが曲にうねりを与えている(3:22〜)サビの後に用意されている「大サビ」が登場しそのままギターソロになだれ込む。やはりギターソロには歌心があり「ボーカルが歌わないボーカルライン」を代理で歌っているような旋律であり、バックでは大波のようにベースラインがうねる。終盤はサビの美しいボーカルラインが繰り返し歌われ、「悲しさを引きずりながらも生きていく」という強い熱量を感じる。
7 紅

「孤独」そのものな静かなパートから突如スラッシュメタルに変貌する代表曲。冒頭はアルペジオとTOSHIの語り調の物悲しいボーカルラインのみで構成されるが(1:58〜)これからの狂騒を予感させるようなシンバルの音は輝度が狂ったネオンのようだ。この曲のアレンジはおそらくではあるがメタリカ(Metallica) の「Fight Fire with Fire」あたりを参考にしているアレンジだと思われるがそれにしても素晴らしい展開である。(2:03〜)激しい風が吹く街のようなスラッシュメタルに変貌するが、ボーカルラインは美しくメロディーというより旋律という言葉がぴったりである。また激しいサウンドの中で「ふと冷静になった」ような感覚を与えてくれるTAIJI(b)のベールラインがやはり圧倒的な存在感を放っている(3:20〜)「これまでの激情が走馬灯のように頭の中を走り抜ける」ような間奏〜ギターソロのラインは日本音楽史に残る名演だと思う。サビのボーカルラインはもちろん素晴らしいのだが、それ以上に少年時代に「誰でも一度は感じた事がある疎外感」を歌った歌詞に意識がいく。夏の甲子園で「紅」が演奏されるのも納得である。
8 XCLAMATION

「いにしえの宴を描いた油絵」のような実験的なファンク。不規則でパーカッショナルなリズムと冷たいジェルのようなベースラインが躍動しギターサウンドは音響的でオリエンタルなムードを醸し出す。彼らのインディーズ時代のアルバム「Vanishing Vision」に収録されてる「GIVE ME THE PLEASURE」の延長線上のような曲といえる(3:04〜)宴は最高潮のところでガラスが砕けたようなピアノの音と共に遮断され、不穏な静けさを残したままそのまま終わる。
9 オルガスム

とんでもないBPMで駆け抜けるメロディックなハードコア。サウンドは「初期X」らしい狂乱そのものな内容となっている。歌詞の内容は刹那的な快楽を歌っているように聴こえるがリスナーに行動を促すような「時の檻はやぶれない」というラインが強烈。
11 ROSE OF PAIN

残虐な歴史を音楽化したドラマティックな大作。序盤は「ゆったりと雄大に流れると大河」のような展開だが(2:20〜)激しい雨のようなドラムの登場とともに急速に熱量を帯び始める。その後は恐怖すら感じるダークなオーケストラとハードなメタルサウンドが、タペストリーように絡み合うような展開に移行する(5:48〜)ヒステリーな歌詞の登場を境にソリッドなスラッシュメタルに変貌して、これまで抑制されていたhideとPATAのツインギターが檻から出てきたライオンのように暴れ、リズム隊は悲劇的な歌詞の内容と相まって一層激しく鳴り響く(7:48〜)砂漠に現れた蜃気楼のように揺らめくベースソロとYOSHIKIのヒステリーな語りが登場してそこからギターソロになだれ込み曲は最高潮を迎える。終盤は空気を引き裂くような歪んだツインギターと「タガが外れた」ドラムが鳴り響く中、TOSHI(vo)がヒステリーな詞の世界観に入り込んで全力で歌い上げる。曲全体から強烈な旋律を感じる事ができ、各パートでひとつのメロディーを奏でているようだ。

インディーズシーンで伝説を残した「X」が1989年にリリースしたメジャーデビューアルバム。まるで「全てのパートが歌を歌っている」かのような美しい旋律を感じることができる内容となっている。 インディーズアルバム「Vanishing Vision」はハードコアの影響が大きい激しくエッジのたったサウンドを聴かせてくれたが、今作はそれがよりクラシカルに洗練された形で表現されており、「2 BLUE BLOO

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「これまでリリースしたアルバムは本気を出していなかったのか?!」と思えるほどに劇的な変化を見せた傑作アルバム。

「サイバーな質感』「地下の実験室のような不穏な空気感」「未知の生物が誕生したかのような獣的な爆発性」といった要素を持つハードでアバンギャルドな側面と「6 JUPITER」「7 さくら」で聴けるような浮遊感を感じる独自のバラードが絶妙なバランスで配置されている。

デビュー作〜アルバム「悪の華」までに彼らが作り上げた「ギクシャクしたニューウェイブ×ビートロック」の良いところを継承しつつ一線を超えたダークサイドに足を踏み入れている。wikiを見ると今作からメインソングライターの今井寿(g)が本格的に機材を揃え曲作りをはじめたり、ギターシンセを使うようになったそうだ。本作以前は作りたい音はあるのだが今井寿(g)の意図がメンバーや制作関係者に伝わらず本領を発揮できていなかったのだろうと思われる。

アメリカの音楽シーンに激震が走った91年は日本でもバクチク(BUCK-TICK)やルナシー(LUNASEA)などがニューウェイブの独自進化のような問題作をリリースし後続のアーティストに多大な影響を与えた。バクチク(BUCK-TICK)は今作を境にダークサイドのどっぷり使ったアルバムを数作リリースすることになる。

    「要点」

  • ダークサイドに足を踏み入れたサイバーな狂った質感が魅力
  • 今井寿(g)のイメージが明確に具体化できたアルバム

「曲解説」

2 MACHINE

サイバー質感と疾走感を感じることができるハードなニューウェイブチューン。「タカ、タカ、タカ、タカ」という一人時間差のようなギターフレーズがニューウェイブ風。前半は低音を活かした歌声でダークに淡々と展開されるが(1:52〜)不穏なノイズと「宙に浮かぶ近未来のバイクに乗っている」かのようなサイバーな疾走感を味わえるギターソロの出現で状況が一変する。ギターソロは以降は、前半と同じボーカルラインが少し狂ったようなテンションで歌われサウンドも近未来のバイクにのって高速を疾走するイメージを連想できるスピード感がある。
3 MY FUNNY VALENTINE

「ダークでサイバーな地下の実験室」のようなミドルテンポの曲。ツインギターが絡みつくように不穏な響きを奏で、また未知の生物が誕生したかのような電子音が不気味さを演出する(1:58〜)「ダークな世界観にそよ風が入り込む」ような安堵感を感じるサビのボーカルラインが歌われるが、ツインギターはサビでも容赦なく耽美的でダークなフレーズを奏でる(3:08〜)暗い部屋の中で輝く「極彩色の光」のようなギターソロが登場。終盤は開放的なサビが2回繰り返されるが曲のダークさは一貫している。
4 変身[REBORN]

「地下の実験室で生まれた未知の生物が暴れ始めた」ような狂気的なスピードチューン。ダークな静寂の中で不穏でな電子音が鳴り響く展開、この空気を「制御不能な光線のようなサイバーなサウンドが切り裂く。曲を通してこのサイバーなギターサウンドが暴れまくる(2:01〜)人間不信を思わせるような狂気的なシャウトが響く(2:20〜)一旦、冷静になったような淡々としたアルペジオが流れるが、その後、すぐに「全てを切り刻むノコギリ」のようなギターソロが鳴り響く。終盤はこれまで以上にハードになりカオスな様相を呈し(3:52〜)この世の終焉を告げるような消防車のようなサイレンが響く中、最後は櫻井 敦司(vo)の掠れたシャウトで幕を閉じる。
6 JUPITER

聖母マリアのような幽玄なコーラスと星野英彦(g)による12弦ギターのコードが印象的な名バラード。曲を通して神聖でシリアスな雰囲気が漂い、音から眩しすぎる光を感じることが出来る。櫻井 敦司(vo)の歌声はセンチメンタルかつエモーショナル。歌詞の内容は「亡くなった母親の事」と「自身の後悔」について歌っている(2:36〜)今井寿(g)のギターソロが始まるがサビのボーカルラインをなぞった珍しく?!シンプルなものになっている。(3:08〜)「雅」という言葉がぴったりのチェロのメロディーが登場し曲に柔らかい春風が吹く。最後は全ての風が止まり静かに終わる。
7 さくら

「天空の城」を思わせる雅で浮遊感のあるミドルテンポの曲。ヴァースは「天空の城から見渡す夜空」のように涼しい展開で、きらめく星のようなキーボードも散りばめられている(2:17〜)「ちぎれた身体」「ごまかす痛み」という過激な歌詞を合図にサウンドは熱量を帯び始めるが、サビのボーカルラインは淡々とした語りのようなものとなっている。この曲の歌詞も「後悔」がテーマになっていると思われる。(5:20〜)この曲も今井寿(g)のギターソロもボーカルラインをなぞったシンプルなものになっている。「6 JUPITER」同様に「この曲は「歌」を聴かせる曲だ」という無言のメッセージを感じる。
8 Brain,Whisper,Head,Hate is noise

密室で行われる未知の生物の生誕祭のような怪しい雰囲気。今井寿(g)によるアナーキーなラップ風ボイスも登場する実験的な曲。ヤガミトール(dr)によるレッド・ツェッペリン(LED ZEPPELIN)風のヨレた質感のドラムが不思議とマッチしている。91年の日本のメジャーシーンでこの曲を演れるのは色んな意味でB-Tだけだと思う。
9 MAD

ミニマムで歪んだギターリフがリフレインされるサイバーパンク。脳みそを刺激する神経質で電流のようなノイズがあらわれては消え、BPMはゆったりとしているがマッハの速度を感じる事ができる。歌詞の内容は「狂っている事に気づいていない男」による嘆きというところだろうか。
10 地下室のメロディー

「パンドラの箱が開いたような不吉な電子音で幕をあけるB-T流デジタルハードコア。エフェクトのかかった櫻井 敦司(vo)の捲したてるようなボーカルは正体不明の黒い物体に追いかけられるような恐怖を感じる。(1:53〜)淡々としたサビの後は一時的に「全てが終わったような終幕感」が流れ、「電気で動く鳥のさえずり」のような直線的な電子音が鳴り響く。(2:15〜)ギターソロの後ろでは「やばい液体が溢れた」ようなノイズが鳴っている。

「これまでリリースしたアルバムは本気を出していなかったのか?!」と思えるほどに劇的な変化を見せた傑作アルバム。 「サイバーな質感』「地下の実験室のような不穏な空気感」「未知の生物が誕生したかのような獣的な爆発性」といった要素を持つハードでアバンギャルドな側面と「6 JUPITER」「7 さくら」で聴けるような浮遊感を感じる独自のバラードが絶妙なバランスで配置されている。 デビュー作〜アルバム「悪の

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