90年代末のロック至上主義の日本の音楽シーンに突如現れたドラゴン・アッシュ(Dragon Ash)は宇多田ヒカルと共に当時のティーンエイジャーに今までには明確な新感覚を提示したアーティストであった。
本作は彼らの3rdアルバムで前半はノリのよりHIP HOP・後半はロックやアコースティックという構成になっている。エッジのたった多様な音を盛り込んだトラックは、まるで「渋谷のセンター街を闊歩している」ようなストリートな錯覚をリスナーに与えてくれる。
HIP HOPとロックを合体させた「ラップメタル」がアメリカで流行った時代ではあるが、本作は「HIP HOPとロックを扱うセレクトショップ」のようなイメージである。本作の大ヒットにより「ミクスチャー」や「ラップ」という言葉がより身近になった。HIP HOPとロックを絶妙に配置したこのバランスは今後どのような変化を見せるのだろうか?!
「曲解説」
2 Communication
インダストリアルな質感の硬質なビートの上をアジーテーションのようなKj(vo,rap)ラップが乗る(2:07〜)アーバンでジャジーなピアノの旋律が流れ静けさと安らぎを感じる。
3 Rock the beat
空に浮かぶ街を連想する吹奏楽器のミニマムな音色とソニックに切り刻むようなビートで構成されるトラック。歌詞は「自分たちなりのHIP HOPでシーンの頂点を目指す」という内容。
4 Humanity
80年代エレポップのような立体感のあるビートの上を歪んだシャッター音のようなフレーズがループされるストリート感MAXのHIP HOPソング。歌詞は「ニヒリストにならず前に進もう」という内容。
5 Attention
カッティングギターをフィーチャーしたファンクソングをサンプリングしたと思われるトラックの上をヘヴィで立体的なベースラインが底からグイグイと攻めてくる。ファンキーな女性コーラスも挿入されてアーバンな雰囲気を醸し出す。
6 Let yourself go, Let myself go
チープなトリックのようなループが響き渡るイケイケの曲。これまでの日本の音楽にはない新感覚を強烈に提示した1曲(3:35〜)晴れ渡る青空のように爽やかなKj(vo,rap)のボーカルラインが聴くことができる。
8 Drugs can't kill teens
U2のような浮遊感を感じるイントロから突如、凶暴なスラッシュメタルに変貌するファストチューン。メロコアバンドのようなメロディーラインが新鮮。また何も起きない日常のような静かなパートの存在がハードでスラッシュなサウンドをより激しくしている(3:40〜)Kj(vo,rap)のボーカルが突如シューゲイザーのような囁きに変貌しビックリ。
10 Fool around
ドライブするベースラインが曲を引っ張るハードチューン。
派手なサビやギターソロなどはないがダレることなく緊張感が保たれている。
11 Freedom of Expression
メロウなアルペジオをサンプリングしたトラックからハードでダイナミックなバンドサウンドに切り替わる曲。「急停止」のようなノイズやグルーヴが時折、挿入されて曲に緊張感を与えている。
13 Viva la revolution
ヒステリックな女性の言葉の断片がループされる浮遊感のある曲。清々しい風のようなストリングスとメロウな女性ボーカルが癒しを与えてくれる。