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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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90年代の日本の音楽シーンの中で圧倒的な異彩を放ったルナシー(LUNA SEA)の4thアルバム。前作「EDEN」の開放的な空気感をルナシー(LUNA SEA)独自のダークで神聖かつ浮遊感の伴うサウンドに反映させて、とんでもない化学反応を起こした90年代を代表する神作。

また今作からオルタナやインダストリアルなど各メンバーがリアルタイムで影響をうけた音楽の要素を楽曲に反映するようになっており、これまでのルナシー(LUNA SEA)の作品にはない「モダン」な質感がある。

本作リリース以降、世の中にはルナシー(LUNA SEA)のコピーバンドが大量に発生しメンバーモデルのギターやベースが飛ぶように売れた。ロック的なパンチ力を持ちつつも既存のサウンドとは明らかに異なるサウンドは当時とんでもなく斬新であり、V系(ビジュアル系)という言葉がまだ一般に存在していなかった時代にルナシー(LUNA SEA)サウンドをカテゴライズできるジャンルは存在しなかった。

    「要点」

  • これまでのルナシー(LUNA SEA)作品にはない「モダン」な質感
  • 当時カテゴライズできなかったサウンドはまさに「V系」
  • 空間的に絡み合うツインギター

「曲解説」

1 LOVELESS

「空の上にある神殿」のような浮遊感と熱風のような熱さが同居するオープニングソング。耽美でアンビエントな質感のアルペジオと上空を優雅に飛び回るコンドルのようなロングトーンのギターサウンドが空間を構築し、重いリズムの上をミステリアスで不穏なベースラインが踊る。ボーカルラインは派手なメロディーを歌うわけではないが強力に耳に残る。これがソロでアルバムを300万枚セールスするシンガーの魔力だろうか。終盤はSUGIZO(g) のロングトーンのギターサウンドがこれまで以上に輝き最後は乱反射のようなサイケな音の洪水に包まれ終わる。
3 FACE TO FACE

全ての音から「宇宙を感じる」ミドルテンポの名曲。ヘヴィだが「2mmほど宙に浮いている」かのような浮遊感を感じるリズムの上を小さな惑星のように輝くアルペジオが彩り、空間を支配するSUGIZOのギタープレイは非常にディープで曲に深みを与えている。少しだけナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)的なインダストリアル感も感じ取れる曲なのだが完全にルナシー(LUNA SEA)独自のサウンドとなっている。2:50〜 この曲の最大の見せ場、RYUICHI(vo)の低音ボイスが「泉から次々と湧き出る」ように現れ「宇宙に雪が降った」ような奇跡のハーモニーを聴かせてくれる。
4 CIVILIZE

近未来でサイバーさと原始的なリズムアプローチが混在しているニューウェイブソング。ギターソロを境に左右非対称なサウンドが展開されるクセのある曲だが不思議なポップネスも感じる。ヴァースはトーキングヘッズ(Talking Heads)のようなアフリカンなリズムアプローチの上をサイバーでメタリックなノイズの断片が踊る近未来なサウンドだが(0:57〜)サビになると「真っ白な空間」を思わせるサウンドに切り替わる(1:30〜)透明感のあるノイズソロはアバンギャルドで曲にアクセントを与えている。94年にこのサウンドは新しすぎる。
5 GENESIS OF MIND 〜夢の彼方へ〜

残響が心地よい耽美的なアコギのコードストロークを中心に展開されるが、所々でセンス抜群の様々な音の断片が鳴り響き、様々な切ない情景を連想させる。4:48〜 ブレイクの後、独り言のようなアルペジオだけが響く展開になるが、そこに夕暮れのようなバイオリンと天使の羽ように柔らかいストリングスが絡み熱量を高めていく6:12〜 RYUICHI(vo)の感情を解き放つような渾身のボーカルラインから天まで昇るような熱量でピークを迎える。最後は「夕暮れの街に佇む鳥」のような孤独感を感じるギターサウンドが静かに鳴り響く。
7 IN FUTURE

オルタナからの影響をダイレクトに反映したファストチューン。歪んだツインギターは全く別々のフレーズを弾いており「渦巻き曇」のように上空を乱している。1:55〜 サビのボーカルラインはベタを拒絶するかのような「語り調」でIN FUTURE。2:08〜 ミニマムでメタリックな電子音が挿入される、このあたりのセンスはノーマルなバンドにはないセンスだろう。
9 TRUE BLUE

削ぎ落とされたLUNASEA流スリーコードロック。ミニマムなリフとシンプルなビートで構成されているが、これぞLUNASEAという雰囲気になっている。
10 MOTHER

荒涼とした大地に吹く北風のような荒涼感を持つ曲。全編を通して神聖な雰囲気があり、特にサビのボーカルラインはこれまで聴いた事がないタイプでまるで「神からの恵み」のようだ。(2:58〜)天を乱すような少しヒステリーなバイオリンソロが曲をよりミステリアスにしている。最後は「誰もいない荒涼とした大地に風だけが流れる」ような静けさで幕を閉じる。

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