ラルク アン シエル(L'Arc〜en〜Ciel)のルーツであるニューウェイブ的なダークさが印象的なアルバムで「8 浸食 〜lose control〜」のようなヘヴィな曲であっても、ダークな質感や耽美的な要素が盛り込まれておりサウンド的に統一感がある。彼らの初期の曲を「HEART」以降のサウンドで再構築したような曲が多いアルバムなので、ある意味、インディーズ時代のアルバム「DUNE」と本作はリンクしていると感じる。
セールス的にピークにあった1999年だからこそ彼らは自分たちの原点を再確認するようなアルバムを作成したのだろうか!?「ダークな統一感」にハマれるかどうかで評価の分かれるアルバムと言える。
「曲解説」
1 死の灰
前作から本格導入したグランジ的な歪みとクリアな浮遊感が同居しているハードチューン。ルーズで「少し酔っている」かのようなヨレた質感の歪んだギターリフが終始鳴り響き、リズムはどっしりとしたシンプルな展開なっている(1:40〜)ハードなサウンドとこぶしの効いたボーカルラインをメインに構成されるサビだが、裏ではユートゥー(U2)やルナシー(LUNASEA)と共通するような眩しい光を連想する空間系アルペジオが鳴り響いており、ハードさと同時に浮遊感と眩しさも感じる(2:13〜)歪んだトーンで鳴らされるギターソロは煌びやかでありやはり眩しい光を感じる。
2 It's the end
ザ・スミス(The Smiths)彷彿の流麗なギターフレーズが「黄昏の海辺」を連想するようなニューウェイブソング。BPMは早めだがhyde(vo)はギターフレーズに呼応するように流麗で大河のようにゆらりと流れるボーカルラインを歌い上げる、曲を通してサビのような展開。最後は流麗なサウンドが止まり、陽炎のような残響を残すギターサウンドが鳴り響く。
3 HONEY
hyde(vo)からニルヴァーナ(Nirvana)に対する回答とも言えるようなオルタナギターチューン。壊れた質感のオルタナ/グランジギターが終始鳴り響くがボーカルラインがメロウでキャッチーな点が、本家USオルタナ/グランジとは決定的な違いで。壊れたサウンドとメロウなボーカルラインのせめぎ合いがこの曲の魅力。また動きまくるメロディックなベースラインもUSグランジバンドではありえない(1:45〜)ソニックユースのような「機械が壊れたノイズ」のようなken(g)のギターソロは「ノイジーでジャンクな音質」なのだがメロディーを感じさせるのはさすがのセンスだといえる。終盤はまるでリフのようなyukihiro(dr)のドラムが鳴り響き曲を更に疾走させる。
4 Sell my Sou
アジアンの香りがするメロウなギターポップ。パーカッションを使ったラテンっぽいリズムパターンとジャジーなテイストを反映しておりギター・ベース共に最小限の手数でプレイしているが、ギターフレーズは相変わらず流麗なフレージングである(1:10〜)ファルセットを使った「蝶が舞う」ようなメロウなボーカルラインを聴かせるための曲という感じ。それくらい珠玉なボーカルラインだと思う。
6 L'heure
「誰もいないモノトーンな部屋」を思わせるインスト。トリップホップのようなダークで立体的なリズムの上を効果音のようなアルペジオが淡々と鳴り響くとう展開。時折、プライベート感あふれる英語による男女の会話が挿入される。ちょっと休憩というニュアンスの立ち位置の曲。
7 花葬
ニューウェイブ系ダーク・ギターロックの名曲。ダークで浮遊感のあるギターとストリングスが絡みあい幻想的な空気感を演出。音響構築に徹するギターとは対照的にクネるように動きまくるベースラインが印象的(2:02〜)ファルセットを使ったサビのメロディーラインはメランコリックだが一度聴くと頭から離れない中毒性があり(2:19〜)ギターソロはダークで幻想的な世界に「降り注ぐ光」のようび煌びやかな音色。終盤はサビが繰り返され最後はイントロと同様の耽美的なギタースレーズで締め括る。
8 浸食 〜lose control〜
「「地下の実験室」を思わせるダークでミステリアスなアルペジオが鳴り響く静のパート」と「ヘヴィでドライブ感のあるハードなサウンドによる動のパート」を中心にして構成される(1:05〜)「Good‐morning Mr.Fear」というhyde(vo)の呟きからヘヴィでドライブ感のある展開に変貌。ドラムはパワフルな変拍子を叩いている(1:50〜)ライド(Ride)彷彿の暴風雨のようなノイズが登場してカオスな様相を呈する。ノイズが鳴り止んだ後は「滅びた世界」のような淡々としたアルペジオとhyde(vo)の独り言のようなボーカルラインが流れる(3:33〜)またも「Good‐morning Mr.Fear」という呟きからハードな展開に変貌。終盤はハードなベースラインが強烈にウネり最後まで攻めまくる。
9 trick
冷たい金属的な響きが終始鳴り響くノイジーな曲。ループのようなミニマムなギターリフやサイレンのようなエフェクティヴなサウンド、冷たい金属的な響きがインダストリアル風でhyde(vo)のボーカルラインは所々でラップのように聴こえる(2:52〜)脳裏をギシギシ刺激するノイズソロ(?!)が鳴り響く 。このあたりもやはりインダストリアルの影響だと思われる。
10 いばらの涙
初期の耽美的な質感を「HEART」以降のサウンドで再構築したようなサウンド。冒頭は「秒針」のようなアルペジオがループされ、その上をhyde(vo)が「ファルセットで耽美的なボーカルラインを歌うパート」と「ハードでダイナミックなバンドサウンドによるパート」を中心となり構成される。時折、鳴り響く幻聴のようなギターサウンドは幽玄で幻想的な雰囲気がある(1:10〜)手数の多いドラムフレーズからエモーショナルでハードなサウンドに変貌、hyde(vo)のボーカルラインはエモーショナルで空を舞うようだ(3:16〜)ダイナミックで空間を支配するようなギターソロが登場。終盤はサビがリフレインされ全てのパートが主張する展開となり最後はハウリングが鳴り響く。