検索画面を消す
検索画面を消す
live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

投稿詳細ページ

91年に発表されたメタリカ史上最大の問題作。91年は音楽史の中でも後続のアーティストに影響を与えた作品が多数リリースされたターニングポイントと呼べる1年でアメリカ国内では商業主義なHR/HMに対するカウンターとしてグランジ・オルタナ勢が勢いを増し確実にトレンドが一変した。

本作「Metallica(Black album)」はグランジ的な「陰鬱さ」「生々しさ」を取り入れつつもこれまでのメタリカ(Metallica) が得意としていた緩急のつけ方の巧妙さは失われてはいないという「非常にバランスの良い」サウンドになっている。

初期衝動を叩きつけた1st キル・エム・オール – Kill ‘em All (1983)、プログレッシヴな展開を印象的な2nd ライド・ザ・ライトニング – Ride the Lightning (1984)、前作をさらに洗練させた3rd メタル・マスター – Master of Puppets (1986)、メロディックな要素を取り入れた メタル・ジャスティス – …And Justice for All (1988)。1st~4thアルバムの中でも彼らは常に進化してきたのだが、ここまでドラスティックな変化が起きている作品は今作が初となる。彼らの専売特許とも言える「ダッ、ダダッ、ダダダッ」と硬質な高速リフで畳み掛けるスラッシュメタルもプログレッシグな転調も前作で見られたような中世的な叙情性も今作にはない。またテクニカルなギターソロも最低限に押さられている。本作はバリエーション豊かなアルバムではなくむしろアルバムを通して統一された空気感が常に流れ続ける。ヘヴィーで少しオリエンタルな雰囲気は「砂漠に現れた巨大な渦」の様。

本作ではほとんど全ての曲がスローで「呪縛」のようなギターリフが主体となっている。「4 The Unforgiven」「8 Nothing Else Matters」などのように今までのメタリカの作品にない「バラード調」の曲やベースがメランコリーなフレーズを淡々と刻む11 My Friend of Miseryなどは新機軸と言える。彼らの今作での挑戦は時代のトレンドとも合致してバンド史上最高のセールスを記録する事となりまた90年代におけるのヘヴィネスの1つの基準ともなった。

    「要点」

  • 問題作でありながらメタリカ(Metallica)史上最も売れたアルバム
  • グランジ・オルタナと共振したスローでヘヴィなギターリフ

このレビュー記事をSNSでシェア