初期のデジタルビートは希薄でアナログな音色を多く取り入れた作品。誰でも一度は聴いたことがあるキャッチーなボーカルラインの数々が収録されており 「2 TONIGHT(Is The Night)」「6 もう一度キスしたかった」「10 ALONE」などの曲は音を聴いていると景色がしっかりと浮かんでくる。「リスナーのイマジネーションを刺激するポップネスを持つ」という点においてはビーズ(B'z)の作品の中でもトップレベルなアルバム。
コクのある独自のギターサウンドはシティポップやソウル風の曲とも相性が良くまたハードなギターリフが鳴り響く「3 快楽の部屋」のような曲もサラリとポップスとして成立させてしまうアレンジセンスは脱帽。ゴージャスな空気感が漂う曲が多いのはやはり時代によるものだろう。
「曲解説」
1 Wonderful Opportunity
カラフルでファンキーなホーンセクションで始まるノリノリな曲。歌詞は男女が迎えるシリアスな「ピンチ」に対して「どのように向き合うべきか?!」を自問自答するという内容。また「ピンチ」を乗り越えたあとの前向きな希望にも言及し「トラブル」=「チャンス」だと定義つける。悩みをテーマにした曲でここまで愉快な雰囲気の曲は筆者が知る限り存在せず、稲葉浩志(vo)の歯切れのよいボーカルはもちろんだが、「チャンス!」という愛らしい女性コーラスもノリの良さに拍車をかける(2:48〜)煌びやかでコクのあるギターソロ、ソロの後は渋いサックスが登場してポップでノリノリな曲に少しだけアダルトな雰囲気を醸し出す(4:06〜)「it's all right」という稲葉浩志(vo)の伸びやかなシャウトが炸裂し最後までノリノリなポップチューンとして突き進む。
2 TONIGHT(Is The Night)
「高層ホテルの窓から見える夜景」のようなアーバンなギターフレーズが哀愁漂うサックスと絡むイントロで幕をあける。曲全体を通してアーバンなソウルのような雰囲気であり、サビの稲葉浩志(vo)のボーカルラインはイントロのギターフレーズと同様のメロディーを奏でる。歌詞の内容は一人でクリスマスは過ごせないと部屋で「君」を待つ男のキザな心情といったところだろうか。
3 快楽の部屋
「ワァ〜ン、ワァ〜ン」という「バイクのエンジン音が歪んだ」ようなギターフレーズで幕をあける。スローでコクがある歪んだ松本 孝弘(g)のギターリフを中心に進行する曲で歌詞の内容は「飲んではっちゃけるエロい夜」みたいなイメージ。曲の雰囲気もハードで蒸せるような暑さを感じる(3:08〜)陶酔のようなミニマムなギターフレーズが登場、ジャジーなピアノと絡んで優雅な風を吹かせるのだが(3:35〜)「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」という高笑いがこの空気感を壊し(3:42〜)ローバト・プラント風のシャウトが炸裂。最後はハードなリフが唐突に途切れ終わる。
5 Crazy Rendezvous
車のエンジン音がSEで流れる。ミニマムなダンスビートの上を金属的なエッジのたったギターフレーズと夜空を連想するサックスが絡み鳴り響く曲。歌詞は「好きだからしょうがない」という理由で無理に朝まで付き合わせるエゴイスティクな内容。
6 もう一度キスしたかった
物悲しいピアノの調べで始まる有名曲。映画を見ているように「物語」が目に浮かぶ煌びやかなシティーポップ。
6 もう一度キスしたかった
物悲しいピアノの調べで始まる有名曲。映画を見ているように「物語」に浮かぶ煌びやかなシティーポップ。
8 それでも君には戻れない
ゴージャスなダンスミュージックのようなホーンセクションと松本 孝弘(g)のコクのあるギターサウンドが絡むイントロではじまる(0:18〜)ポップなスラッシュメタルのようなザクザクリフも鳴り響くが「星空」のようなキーボードが曲に色彩を与えハードロック匂を和らげてポップな質感を与える(4:46〜)曲が「パタン」と止まりメルヘンなオルゴールが流れ始める。そこに80年代ブリティッシュメタル風の叙情ギターソロを90年代風にアレンジしたような音が鳴り響き哀愁のある雰囲気を醸し出す。
9 あいかわらずなボクら
カントリーギターのコードストロークと太陽のように眩しいスケールの大きいボーカルラインが特徴(1:12〜)控えめな泣きのギターフレーズと手拍子が曲に加わりリラックスした雰囲気を醸し出す。最後はリラックスした仲間の集まりのような雰囲気のSEが流れる。
10 ALONE
雄大なコーラスで幕をあける「沈む夕日」のような曲(0:52〜)リスナーの頭に眩しい夕日を連想させるブルージーで哀愁漂うギターフレーズが流れる。眩しい夕日のようなギターフレーズとは対照的なしっとり降り注ぐ小雨のようなキーボードの音色がこの曲の別格なエモさを作り出している。この曲のギターフレーズだけ明らかにまぶしさが違うのはそのせいだろうと思われる。歌詞の内容は男女の愛情というよりはもう「二度と会えないアイツ」に向けられたようなイメージで、終盤は泣きのギターソロと憂いのある稲葉浩志(vo)のボーカルで締めくくられる。