「曲解説」
1 Fare Well
前作「heavenly」に収録されている「4 ガラス玉」に通じるバラードからエモーショナルで壮大なメロディーを持つロックに移行するオープニングソング。初期3部作にはないタイプの熱量があり、曲を通して「卒業式」のようなセンチメンタルさと力強さがある。
2 Caress of Venus
これまでのラルク アン シエル(L'Arc〜en〜Ciel)からは考えられないカラフルなダンスビートが印象的なアッパーチューン。ノリノリのダンスチューンではあるが80年代耽美派UKギターロックのような「海辺」を連想する雰囲気を持ち、前作までのサウンドの良いところを踏襲しつつも新機軸を試みた曲と言えるだろう。
3 Round and Round
90年代グランジを意識したであろうと思われるダークでヘヴィなロックチューン。歌詞はロックな曲にピッタリの「大人に対する拒絶」を歌っているがサビのボーカルラインは弾けており、コーラスの「round in merry world♩」は非常にポップで同年代のルナシー(LUNASEA)や黒夢の曲には絶対に出てこないテイストである。このポップに対する柔軟な姿勢がラルク アン シエル(L'Arc〜en〜Ciel)の個性と言える。
4 flower
全てのティーンエイジャーに聴いてもらいたい胸キュン・ギターポップな名曲。男性の女々しさを全面に押し出した「起こされるのを待っているのに」という歌詞は当時斬新な響きをもっていた。サウンド的には彼らが得意とするメロウなギターポップを極限まで削ぎ落としたものとなっている。
5 "good-morning Hide"
「渦巻き」のようなベースラインが新鮮なグルーヴィーな曲。グルーヴィーではあるがハードロックやサイケのような質感はなくカラフルで軽やかなハウスミュージックのような雰囲気がある。終盤は「はしゃいだ後に感じるわずかな喪失感」のようなメランコリックなアルペジオが存在感を増す展開となる。
6 the Fourth Avenue Café
「雨音」のようなピアノとゴージャスなホーンセクションを導入した「アーバンな街角」のような質感の曲。ken(g)のギターサウンドは「4 flower」同様に最小限の手数でメロウなフレーズを奏でている。
8 風にきえないで
ポップなボーカルラインが弾けるギターポップ。サウンド的には前作「heavenly」にも通じるメランコリックさもあるが、
「答えを見つけた」かのようなアグレッシヴな演奏もありポップに突き刺さる。歌詞の内容は恋に恋する十代の爆発しそうな感情といったところだろうか。
10 Dearest Love
「光が降り注ぐ」ようなken(g)のディレイサウンドが印象的な眩しすぎるバラードでhyde(vo)のボーカルは叶わぬ願いのように儚い(1:50〜)レディオヘッド(radiohead)の名曲「creep」を参考にしたと思われる唐突なブラッシングノイズが挿入され(3:08〜)バイオリンが「むせび泣き」のような旋律を奏で曲に優雅な渋みを与える。中盤以降は壊れた質感のグランジギターが空間を切り裂きアクセントとなっている。