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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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河村隆一自身が初主演した映画「ピカレスク 人間失格」のサウンドトラックのような立ち位置のソロ3rdアルバム。

1st 2ndアルバムは「ルナシー(LUNASEA)ではできない表現」や「J-POPのフォーマットでどの位、通用するのか?!」などがテーマであったと思うのだが、本作は太宰治の小説「人間失格」のストーリーからインスピレーションを受けたシリアスな作風となっている。「クラシカルな弦楽器を中心に奏でられる静なサウンド」と河村隆一のコクのある歌声によって構成されるシンプルで上質な曲が多く、歌詞には「道化師を演じて」「仮面をかぶる午後は」などのフレーズが登場し「心地よい憂鬱さ」を感じる。

またこれまで距離を置いてきたと思われるルナシー(LUNASEA)的サウンドも僅かではあるが取り入れており「1 So Deep」に関してはルナシー(LUNASEA)彷彿のダークな残響が心地よい曲となっている。1st2ndアルバムで確立した?!ラブソング=河村隆一というイメージを見事に打ち砕く作品となっている。

    「要点」

  • ・太宰治の小説「人間失格」のストーリーからインスピレーションを受けたシリアスな作風
  • ・歌詞には「道化師を演じて」「仮面をかぶる午後は」などのフレーズが登場し「心地よい憂鬱さ」を感じる

「曲解説」

1 So Deep

不穏なノイズサウンドとクラシカルな弦楽器の優雅な調べが絡みあう冒頭から「ルナシー(LUNASEA)彷彿のダークな残響」が心地よいギターロックに移行する曲。これまでの河村隆一の作品にはないダークテイストが新鮮なエモーショナルソングとなっている。
2 かけがえのない人

「メロウな昼下がり」のようなピアノの旋律とクラシカルな弦楽器の調べのみで構成される上質なサウンドにのせて、河村隆一が「素敵なあなた」に対して愛を独白する静かなバラード。「愛」といっても1st 2ndアルバムのメインテーマであった「恋愛」とは少しニュアンスが異なり、人間性をディープに見つめた「愛」を歌っている。歌詞の中に「道化師を演じて」というフレーズが登場、アルバムタイトルにもなっている太宰治の名作「人間失格」からインスピレーションを得た曲である事は間違いない。
3 愛欲のまなざし

「2 かけがえのない人」同様にピアノとクラシカルな弦楽器のみで構成された上質なサウンドだが、歌詞は「人間の暗部」にスポットが当てられており「愛する人さえ汚していく自身の性欲」に対する嫌悪感を歌っていると思われる。
5 liar’s hymn

「異国感が強調された不思議な響き」を感じる河村隆一の多重コーラスがインパクト大の曲。多重コーラスが音響として圧倒的な存在感を放っている為、歌詞の内容は正直頭に入ってこない。「眩しい光に照らされた教会」を思わせるシンセサウンドと中間部移行から導入される「ボリビアの高地の街」を連想する独自のテンポが不思議な静けさを演出している。
6 うたかた

「春の訪れ」のようなサビのボーカルラインがビビッドに響き渡る曲。サビ前にはこれまで距離を置いていたと思われる「ロック的に壊れたノイズ」が挿入される。
7 Stop the time forever

「重層で全てを優しく包み込む」ストリングスをバックに河村隆一の熱唱が響き渡るエンディングソング(3:23〜)マーチ風のドラムが挿入される事をキッカケに曲は徐々に熱量をあげていくが上質な音響は常に保たれている。「仮面をかぶる午後は」というフレーズは「人間失格」的である。

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