イギリス出身のボーカリスとKen Lloyd(vo)とのちにhydeと共にヴァンプス(VAMPS)を結成するK.A.Z(g)を中心に結成されたオブリヴィオン・ダスト(Oblivion Dust)の3rdアルバム
このオブリヴィオン・ダスト(Oblivion Dust)は、日本より先にアメリア西海岸でライブを行う(wiki)など「向こうのハード系アーティスト」が日本で活動しているようなイメージのアーティストであり、音楽性も「他のハード系アーティスト」とは明らかに異なる「ナチュラルな洋楽感」を感じるものとなっている。
90年代後半の日本の音楽シーンにおいて「グランジ的な気怠さやノイズ」を曲に反映したアーティストは勿論存在していたのだが、彼らの多くは自分達の音楽に「ひと癖加える為」の手段として「グランジ的な気怠さやノイズ」を起用していたような印象があるのだが、このオブリヴィオン・ダスト(Oblivion Dust)というアーティストは、USグランジ・オルタナなどと一切の距離を置かずに「自然に湧き出るもの」というスタンスでナチュラルにUSハードサウンドを聴かせてくれる。
「曲解説」
1 YOU
サイバーで歪んだ音の断片が「DJスクラッチ」のようにリフレインされるヘヴィロック。ヘヴィなサウンドの中に所々「不気味な静けさを感じる静のパート」が挿入されており、ヘヴィなサウンドが一層ヘヴィに響き渡る仕掛けとなっている。「FXXK YOU!」を連呼するKen Lloyd(vo)の怒りに満ちたシャウトは当時隆盛を極めていたUSヘヴィロックと共振する。
2 COME ALIVE
「静」→「動」のダイナミズムを強調したグランジ的な展開とK.A.Z(g)の「どんよりした曇り空」のようなギターサウンドが印象に残る曲。Ken Lloyd(vo)のボーカルラインは「泥水」のような質感で曲にダーティーな質感を与えている。
3 CRAZY
レディオヘッド(radiohead)の2ndアルバム「The Bends」からの影響を感じるシンプルなエモーショナルロック。K.A.Z(g)のギターサウンドは「気怠くスロー」であり主張は控えめなのだが独特の存在感がある。Ken Lloyd(vo)のボーカルは「痛み」と「喪失感」をエモーショナルに表現しており、歌詞は「君の不思議な薬でしか止まることのない痛み」についてである。
4 30
「スペーシーな音響のループ」と「ハイテンションなグランジロック」が並走するサビがインパクト大の曲。Ken Lloyd(vo)のボーカルはやはり怒りに満ちている。
6 ALIEN
「気怠い黄昏」のようなアルペジオを中心に展開されるダークなバラード。多重録音されたKen Lloyd(vo)のボーカルが幻想的な雰囲気を醸し出している。
7 GIRLIE BOY IMITATION #6
重低音が強調されたヘヴィリフが躍動するハードチューン。K.A.Z(g)のギターサウンドはあまりエフェクターを使っていないウォームな響きだが不思議とヘヴィに響き渡る。この不思議なヘヴィ感はトニー・アイオミ/ブラック・サバス(Black Sabbath)を彷彿とさせる。
8 NO MEDICATION
「地下のダークな実験室」のような音響を感じるサイバーなロックチューン。DJスクラッチや「動物の鳴き声にエフェクトをかけた」ような効果音がアクセントとなっており、サビは「USロック以上にUSロックな響き」である。
9 PLASTIC WINGS
「ザクザクした刻みリフ」と「空間を構築する立体的なアルペジオ」の対比が面白く、メランコリックだが疾走するタイプの曲でスマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)からの影響を感じられる。Ken Lloyd(vo)のボーカルは耽美的なファルセットを活用している
11 GOODBYE
退廃的でダークなUKロックをパンク調に演奏したようなタイプの曲。K.A.Z(g)のギターサウンドはシンプルではあるが「マイナー調のディープなコードワーク」「直線的なオクターブ奏法」を効果的に使い存在感を放っている。
12 YOUR YESTERDAY
クラシカルな弦楽器の調べが「黄昏の港町」を連想するバラード。「僅かな望み」のようなアルペジオがセンチメンタルな響きのKen Lloyd(vo)のボーカルを優しく包み込む。