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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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シリアスでアーティスティックな作風であった前作・全前作の(KID A / Amnesiac) 反動からか「プリミティヴな生々しさ」が感じられる6thアルバム。

ロックンロール衝動をエレクトロニカ以降の彼らのセンスで表現したような「1 2 + 2 = 5」「2 Sit down. Stand up」「12 Myxomatosis」。アルバム「The Bends」に収録されていたギターロックを洗練させたような「5 Go to Sleep」「9 There There」etcなどを収録しておりバラエティーに富んだ内容となっている。

2000年代前半は「ロックンロールリバイバル」「二ューウェイブリバイバル」などがトレンドとなっており、また繊細な感情をエモーショナルに歌い上げるレディオヘッド(Radiohead)フォロアーが大量発生した時期なのだが、彼らは音楽シーンのトレンドやフォロアーの存在などをあまり気にすることなく本作でも確実に新たな歩を刻んでいる。

本作は神作である(KID A / Amnesiac)と比較すると色んな意味で「少しパンチが足りない」事は間違いないのだが「リスナーの脳裏と感性に刻まれる曲」が何曲か収録されており「間違いなく名盤」であると言える。リスナーの期待値が高すぎて真っ当な評価を受けていない可哀想なアルバム。それが「Hail to the Thief 」である。

    「要点」

  • ・ロックンロール衝動をエレクトロニカ以降の彼らのセンスで表現したような「1 2 + 2 = 5」「2 Sit down. Stand up」「12 Myxomatosis」
  • ・リスナーの期待値が高すぎて真っ当な評価を受けていない可哀想なアルバム

「曲解説」

1 2 + 2 = 5

「シールドをアンプに突っ込むノイズ」で幕をあけるアグレッシヴなロックチューン。アルバム「Ok Computer」以降は封印していた節すらある「プリミティヴでノリのよいロックンロール衝動」を前面に押し出している。だが、レディオヘッド(Radiohead)というアーティストが「ただの古き良きロックチューン」をやる訳がない(1:53〜)トム・ヨーク(vo ,g)の「Because!」という掛け声からアグレッシグなギターロックに変貌を遂げるのだが、バックでは「光の洪水」のようなエレクトロサウンドが鳴り響き曲に高速のスピード感を与えている。
2 Sit down. Stand up

「ゴスをエレクトロニカ風にアレンジした」ような展開から強烈なエレクトロビートが「酸性雨」のように降り注ぐアグレッシヴなエレクトロチューン。中盤以降はトム・ヨーク(vo ,g)が「THE raindrops」というフレーズを「何かが狂ったか」のように淡々と連呼する。サウンド的には歪んだギターやシャウトなどは一切登場しないが「1 2 + 2 = 5」同様に生々しいロックンロール衝動を感じる曲である。
5 Go to Sleep

アルバム「The Bends」に収録されているトリプルギター期のレディオヘッドソングを「KID A以降のセンス」で再構築したような曲。過去と比べて歪んだ音は控えめになっているが一音ごとのフレージングのセンスと強度が増しており、初期の曲より「オーガニックな生々しさ」を感じる。
6 Where I End and You Begin

ブレイクビーツ風のビートとうねるベースラインが中心となって展開される曲で音響は「ホラー」のようなダークさを醸し出している。 時折、挿入されるジョニー・グリーンウッド(g)の鋭角的なカッティングギターが曲をズタズタに切り裂く。
9 There There

ダイナミックでエモーショナルなギターロックを洗練させれた最小限の音で表現している。過去の焼き回しなどではなく2枚の名作(KID A / Amnesiac)で習得した「エレクトロニカ以降の質感」を曲に反映しており、初期のギターロック以上にダイナミックに響き渡る。歌詞は意味深だが「自分たちは歩く災難であり、事故が起こるのを待っている」というラインから「平和を望みながら平和を最も拒んでいるのは自分たち人間なのだ」という意味なのでは?!と感じた。
12 Myxomatosis

「強迫観念」のような強烈に歪んだ音響が鼓膜を刺激するエレクトロハードロック。「Myxomatosis」というタイトルは「粘液腫症」という意味がある。米英でアルバムチャートNO,1を獲得するビッグアーティストがこのようなシュールなタイトルを普通につける点が素晴らしい。レディオヘッド(Radiohead)はキュアー(CURE)などと同様に「アーティスト過ぎてそれがエンターテイメントとして成立している」というアーティストとして最も理想的な成功のパターンであると言えるのではないだろうか。
14 A Wolf at the Door

ジョニー・グリーンウッド(g)がほとんど一人で作曲した(wiki)名バラード。トム・ヨーク(vo ,g)のボーカルは他の曲とは明らかに異なるタイプのメロディーを奏でており「プログレ化したラップ」のようである。曲全体から「おとぎ話」のようななんとも言えない「古風な浮遊感」を感じる。

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