「曲解説」
1 2 + 2 = 5
「シールドをアンプに突っ込むノイズ」で幕をあけるアグレッシヴなロックチューン。アルバム「Ok Computer」以降は封印していた節すらある「プリミティヴでノリのよいロックンロール衝動」を前面に押し出している。だが、レディオヘッド(Radiohead)というアーティストが「ただの古き良きロックチューン」をやる訳がない(1:53〜)トム・ヨーク(vo ,g)の「Because!」という掛け声からアグレッシグなギターロックに変貌を遂げるのだが、バックでは「光の洪水」のようなエレクトロサウンドが鳴り響き曲に高速のスピード感を与えている。
2 Sit down. Stand up
「ゴスをエレクトロニカ風にアレンジした」ような展開から強烈なエレクトロビートが「酸性雨」のように降り注ぐアグレッシヴなエレクトロチューン。中盤以降はトム・ヨーク(vo ,g)が「THE raindrops」というフレーズを「何かが狂ったか」のように淡々と連呼する。サウンド的には歪んだギターやシャウトなどは一切登場しないが「1 2 + 2 = 5」同様に生々しいロックンロール衝動を感じる曲である。
5 Go to Sleep
アルバム「The Bends」に収録されているトリプルギター期のレディオヘッドソングを「KID A以降のセンス」で再構築したような曲。過去と比べて歪んだ音は控えめになっているが一音ごとのフレージングのセンスと強度が増しており、初期の曲より「オーガニックな生々しさ」を感じる。
6 Where I End and You Begin
ブレイクビーツ風のビートとうねるベースラインが中心となって展開される曲で音響は「ホラー」のようなダークさを醸し出している。
時折、挿入されるジョニー・グリーンウッド(g)の鋭角的なカッティングギターが曲をズタズタに切り裂く。
9 There There
ダイナミックでエモーショナルなギターロックを洗練させれた最小限の音で表現している。過去の焼き回しなどではなく2枚の名作(KID A / Amnesiac)で習得した「エレクトロニカ以降の質感」を曲に反映しており、初期のギターロック以上にダイナミックに響き渡る。歌詞は意味深だが「自分たちは歩く災難であり、事故が起こるのを待っている」というラインから「平和を望みながら平和を最も拒んでいるのは自分たち人間なのだ」という意味なのでは?!と感じた。
12 Myxomatosis
「強迫観念」のような強烈に歪んだ音響が鼓膜を刺激するエレクトロハードロック。「Myxomatosis」というタイトルは「粘液腫症」という意味がある。米英でアルバムチャートNO,1を獲得するビッグアーティストがこのようなシュールなタイトルを普通につける点が素晴らしい。レディオヘッド(Radiohead)はキュアー(CURE)などと同様に「アーティスト過ぎてそれがエンターテイメントとして成立している」というアーティストとして最も理想的な成功のパターンであると言えるのではないだろうか。
14 A Wolf at the Door
ジョニー・グリーンウッド(g)がほとんど一人で作曲した(wiki)名バラード。トム・ヨーク(vo ,g)のボーカルは他の曲とは明らかに異なるタイプのメロディーを奏でており「プログレ化したラップ」のようである。曲全体から「おとぎ話」のようななんとも言えない「古風な浮遊感」を感じる。