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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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2000年にレディオヘッド(Radiohead)が発表した今作Kid Aは音楽シーンに衝撃を与えた。本作にはこれまで彼らの代名詞であったリスナーの深部まで届くエモーショナルなボーカルラインや「静」→「動」のダイナミックなバンドサウンドがほとんど登場せず、エレクトロニカ、アブストラクトHIP HOP、ポストロックなどの文脈を大胆に導入し、彼らの描きたいイメージを音でストイックに描ききっている。

前作「Ok Computer」に存在していた「荒涼とした世界観」をさらにディープにするには、ギターロックのフォーマットだけではもはや無理があったのだろう。本作Kid Aを聴いていると終始、「何もない真っ白な空間」や「氷の世界」が目に浮かんでくる「無」の場所で音楽的自由を究極に突き詰める本作はシンプルなギターロックよりはるかにプリミティブだと思う。

    「要点」

  • エレクトロニカ以降の音響で描かれた世界観
  • 絶対零度の感情
  • 音楽史に残る問題作

「曲解説」

1 Everything in Its Right Place

ミニマムな電子音とトム・ヨーク(vo ,g)の声をサンプリングした「呪文」のような音で幕をあける。作品全編に言えることだが前作に見られた荒涼とした雰囲気をさらをディープにしたような幽玄な空気感で全てが凍りついた氷河の中でポツンと佇むトム・ヨーク(vo ,g)が目に浮かぶ「全てのものはあるべきところに」を繰り返す詞の世界も意味深。
2 Kid A

「氷」のようなアンビエントな音色は誰もいない真っ白な空間を連想させる。彼らの最大の武器であったリスナーの感情を揺さぶるエモーショナルなボーカルラインはこの真っ白な空間には存在せず、ただ風だけが流れている。トム・ヨーク(vo ,g)のボーカルにはまるで老人の囁きに聴こえるようなエフェクトが掛けられておりボーカルラインの断片はまるでお経のようにすら聴こえる。そこに無機質で鋭角的なポストロック的なリズムが加わるが、ギターロックバンドらしいダイナミズムとは無縁の淡々とした展開を見せる。そして最後は透明なベールのような電子音に包まれ目に映る全てが無と化す。
3 The National Anthem

サンプリングされたウッドベース(多分)のミニマムなフレーズが終始鳴り響き、不穏さや浮遊感を感じる多様な音が煙のように浮かんでは消える。ホーンセクションを大胆にフィーチャーした「夢の国に出てくる軍隊の行進曲」のような曲。
4 How to Disappear Completely

死後の世界に迷い込んだような幽玄さのある曲。誰もいない真っ白な空間であまり抑揚のないメロディーをトム・ヨーク(vo ,g)が弾き語る。その後、不穏なストリングスと「ボタンのかけ違い」のようなミニマムな電子音が出てきて曲はさらに深くなる。(3:30〜)から聴けるボーカルラインは美しくエモーショナルだが前作に感じたような熱量はなく嘆きのように聴こえる。
8 Idioteque

レディオヘッド流アブストラクトHIP HOP。「車が宙に浮いて走っている近未来の高速道路」を連想するスピード感があり「氷河期がやってくる」という脅迫観念のようなトム・ヨーク(vo ,g)の鬼気迫るラップ(?)が凄まじい。「Here I’m allowed everything all of the time」の箇所は、トム・ヨーク(vo ,g)とエド・オブライエン(g)によるハモった最高級のボーカルラインが聴ける。
9 Morning Bell

神経質なブレイクビーツと牧歌的な電子音が終始鳴り響く曲(3:05〜)トム・ヨーク(vo ,g)の声の残響が四方八方から鳴り響きカオスの様相を呈するが、やがて全ては過ぎ去り目の前には誰もいない「氷の世界」だけが広がっている。

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