90年代末のUKロックシーンでは間違いなく「浮いた存在」であったと思われるMuse(ミューズ)の1sアルバム。1stアルバムから自分たちの最大の武器である「クラシカルな美旋律」をふんだんに盛り込んだ音を聴かせてくれる。また90年代USヘヴィロックの影響はもちろんだが当時暗黒期であった「ヘヴィメタル」的な叙情要素も柔軟に取り入れ強烈な個性を発揮している。
「静」→「動」のダイナミズムも彼らの得意とする展開だが、他のUKバンドのそれと比べると破壊的と言っていい位に「過剰」なのである。ナルシスティックな印象すら与えるファルセットや美しいピアノの旋律も彼らの「過剰さ」をより強調して、デビュー作にしてこれがMuse(ミューズ)だ!と言わんばかりのヘヴィで過剰な美旋律を聴かせてくれる。
「曲解説」
1 Sunburn
「クラシカルで美しいピアノの旋律」と「重力がバグったような重低音が強調されたヘヴィなパート」が交互に繰り返される曲(2:20〜)ライド(Ride)彷彿のぶっ飛んだノイズギターが炸裂。ボーカルの歌唱法はエモーショナルでちょっとナルシスティック。1曲目からして彼らの魅力をギュと凝縮したような内容となっている。
2 Muscle Museum
「地下の実験室」を連想する重低音を強調したミニマムなベースリフを中心に進行される(1:18〜)唐突に「ガジャッ」というギターのブラッシングノイズが鳴り響きその後は「ヘヴィなバンドサウンド」と「ミニマムな重低音」を繰り返す。1曲目同様に「静」→「動」のダイナミズムを活かした曲だと言える。ギターソロは「悲鳴」のように聴こえるヒステリーな音となっている。
4 Falling Down
1〜3曲目までの過剰さとは打って変わり「黄昏の海辺」を思わせるブルース調の弾き語りを中心に展開される曲。美しい旋律を時折エモーショナルに叫ぶように歌うマシュー・ベラミー(vo)のボーカルラインはまるで「ドラマティックなヘヴィロックを聴いた後」のような余韻をリスナーに与える。
8 Uno
アンプごと破壊するかのようなフィードバックノイズではじまる曲で、80年代ヘヴィメタルもびっくりなドラマティックな叙情フレーズも飛び出す。その後は彼らのお家芸とも言える「静」→「動」の破壊的な展開が繰り返されるが「クラシカルで美しい旋律」は健在。
9 Sober
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)を彷彿とさせるストリートテイストのある効果音のようなギターフレーズで幕をあける。ギターリフもジャンクで壊れた感じがするが「ミクスチャー」という感じはせず紛れもなくMuse(ミューズ)の曲となっている。