前作「The Bends」でギターロックバンドとして確固たる地位を築いたレディオヘッド(Radiohead)が、エレクトロニカやトリップホップなどの新興ジャンルからの影響をエモーショナルなギターロックに作品に反映させはじめた90年代を代表する作品。サウンド面では不穏な暗さやエレクトロニカにも通じるような荒涼とした雰囲気が最大の特徴でキャッチーとは言えない曲がほとんどを占める作品だが紛れもなくポップとして成立している。
レディオヘッド(Radiohead)は2000年にエレクトロニカやポストロックに急接近した問題作KID Aリリースするのだが、本作は「ギターロック」と「非ギターロック」の中間に位置する過渡期的作品でありある意味一番バランスが良い作品かもしれない97年〜98年は本作に触発されたかのように他のアーティストもプログレッシヴな作品をリリースし活況であった。
「曲解説」
1 Airbag
「強迫観念」のような不穏な空気感が印象的なオープニング曲。前作から取り入れ始めた電子音が前面に出ており、またディープなリズムアプローチなどは、マッシヴ・アタック(Massive Attack)やポーティスヘッド(Portishead)からの影響を感じさせる。
2 Paranoid Android
冒頭は神聖な雰囲気すら漂う美しいメロディーラインで進行するが、唐突に現れる「ガッ、ガッ」というブラッシングノイズがその神聖な雰囲気を引き裂きぶっとんだ早弾きのギターソロが炸裂するというレディオヘッド(Radiohead)風プログレ曲。
4 Exit Music (For a Film)
エレクトロニカのような荒涼とした冷たさを感じる曲。トム・ヨーク(vo)のボーカルにはエフェクトがかかっており、これまでにはない悲壮感と切迫感を感じる事ができる。
5 Let Down
輪郭のはっきりしたアルペジオを中心に淡々と進行されるが(3:25〜)ミニマムで煌びやかな電子音が舞い降りてくるのをキッカケに曲は変貌しトム・ヨーク(vo)の歌声は何重にも重なり過去最高のボーカルラインを奏でる。歌詞の内容な移動によって起こる「ヒステリーで無意味な化学反応」についてらしい。
9 Climbing Up the Walls
サンプリングされたアニメのキャラクターような笑い声ではじまる曲でトム・ヨーク(vo)のボーカルにはホラー映画のような不穏さがあり、曲は時間の経過と共に徐々に熱量をあげて、「天まで届くアラーム」のようなギターサウンドの登場でピークを迎える。その後は重厚でヒステリーなストリングスも加わり曲はまさにカオスの様相を呈する。最後はトム・ヨーク(vo)の鬼気迫る絶叫で幕を閉じる。