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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト
検索結果49件

タグ「ニューウェイブ」のレビュー

1stアルバムで模索していた「パンク以降の次なるビジョン」が明確に見えたサウンドを聴く事ができる2ndアルバムで全編を通して「ダークでミステリアスなギターサウンド」を前面に押し出しだしている。

空間系エフェクターを多用して「イマージネーションを音楽化」しているようなイメージのサウンドは「パンクとはまた違った意味での初期衝動性」が感じられ後に登場するダーク系ニューウェイヴ・アーティストに多大な影響を与えたと思われる。

本作でスージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees) が提示した「ダークで閉ざされた音世界」は極東の島国「日本」でも「V系」という異端な形で花開く事になる。本作はオールドスクールV系ファンに是非聴いて頂きたいアルバムである。

    「要点」

  • ・本作で提示された「ダークで閉ざされた音世界」は極東の島国「日本」でも「V系」という異端な形で花開く事になる
  • ・空間系エフェクターを多用して「イマージネーションを音楽化」しているようなイメージのサウンドは「パンクとはまた違った意味での初期衝動性」が感じられる

「曲解説」

1 Poppy Day

「不吉という言葉を音楽化した」ような怪しくダークなギターサウンドが渦巻くオープニングチューン。このギターサウンドは後に登場するダーク系二ューウェイブ・アーティストに多大な影響を与えたと思われる。ベースはダークな音響の中で「憂鬱」なラインを淡々と奏でている。
2 Regal Zone

「密室」のような雰囲気を前面に押し出した曲で空間系エフェクトを活用したダークで鋭角的なギターサウンドが全体を引っ張っている(1:48〜)「重力がバグった」ようなエキサイティングな展開を見せる。終盤は「強迫観念」のようにダークなアグレッシヴさが強調された展開となる。
3 PlaceboEffect

ヘヴィメタルに「呪縛」のようなエフェクティヴ・アレンジを施したようなイメージの曲。オクターブ奏法やブラッシング奏法を使って奏でられるギターサウンドは、どこかスマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)を彷彿とさせる。
6 Playground Twist

「狂ったジェット機」のようなギターサウンドが宙を舞い「不吉さを助長する」ような鐘の音「終幕のファンファーレ」のようなサックスも登場する実験的な曲。
7 Mother / Oh mein Papa

物悲しいオルゴール風サウンドが「メランコリックな夏休みの思い出」のように鳴り響く曲。スージー・スー(vo)のボーカルは「祈り」のように繊細で儚いものとなっている。
9 Love In a Void

「密室で奏でられたパンクロック」という趣の曲。歌詞はパンクとはまた違ったベクトルで捻くれたものとなっており「恋は空虚である、恋をすることは愚かである」との事だ。
10 Infantry

ダークな残響音が「ミニマルミュージック」のように繰り返されるミステリアスな曲でスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)のアルバムに収録されていても全く違和感がない。

1stアルバムで模索していた「パンク以降の次なるビジョン」が明確に見えたサウンドを聴く事ができる2ndアルバムで全編を通して「ダークでミステリアスなギターサウンド」を前面に押し出しだしている。 空間系エフェクターを多用して「イマージネーションを音楽化」しているようなイメージのサウンドは「パンクとはまた違った意味での初期衝動性」が感じられ後に登場するダーク系ニューウェイヴ・アーティストに多大な影響を

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セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の熱狂的なファンたちによって結成された(wiki)スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees)の1stアルバム。

「パンク」からの影響も感じられるサウンドではあるのだが、それ以上に「既存のサウンドと違う事をやりたい!」というチャレンジ精神が魅力的であると感じる。彼らは「パンクという体裁」ではなく「言葉本来の意味でのパンク精神」を引き継ぎ「退廃的」「耽美的」という形容が似合う質感の音をサウンドに反映させた。

また様々なエフェクターを活用して「これまでにはない響き」を探求しているギターサウンドはロック的なベタさを拒絶するようなスタンスであり、コードストロークのタイミングなどはこれまで様々な音楽に触れてきた筆者からしても「新感覚」と言えるものとなっている。後に「ゴス」を象徴する存在となった彼らのデビューアルバムは、「新感覚」を模索している分「良くも悪くもリアクションの難しい」作品となっている。

    「要点」

  • ・セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の熱狂的なファンたちによって結成された(wiki)スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees)
  • ・「パンクという体裁」ではなく「言葉本来の意味でのパンク精神」を引き継ぎ「退廃的」「耽美的」という形容が似合う質感の音をサウンドに反映

「曲解説」

3 オーヴァーグラウンド

「独自」としか言いようのない不思議なリズム感が印象的な曲で僅かに「フラメンコ的なダンサブルな熱量」も感じることができる。ギターはあまり聴いた事がないタイプのコードストロークで和音を奏でており「激しく弾ける」でもなく「沈む」でもなく「優しく包み込むもの」でもないというレアな響きをもっている。これまで様々なタイプの曲を聴いてきた筆者ではあるがこの曲がもつある種の違和感は「新感覚」と言っていい。
4 カーカス

「どんよりとした曇り空の下で奏でられたパンクロック」という趣の曲。やはりこの曲のギターサウンドもこれまであまり聴いた事がないタイプのコードストロークとなっており「パンク的な分かりやすい突き抜け感」を拒絶している。終盤はハンドクラップが挿入されノリの良さが強調されるが、ギターサウンドだけが「迷子」のように空間を彷徨っている。
5 ヘルター・スケルター

「ホラー」のような暗い空間を鋭角的なギターサウンドが切り裂く曲。リズムはアグレッシヴなギターとは対照的に淡々と時を刻んでいる。歌詞の内容は大混乱で意味不明な内容となっている。「あなたは恋人かもしれませんがダンサーではない」との事だ。
8 ニコチン中毒

シンプルなパンク調の曲だが、歌詞の内容は「喫煙の有害性」を狂気的にそして文学性に描いた凝ったものとなっている(1:18〜)ギターソロは「非パンク的な音響」となっており「鏡の世界」のような耽美性を感じる事ができる。
10 スウィッチ

「耽美」「ミステリアス」などの形容がよく似合う様々な音色の空間系・ギターサウンドが登場する実験曲(3:38〜)リズムがタイトなビートに切り替わるが、ギターサウンドは最後の最後までベタを拒絶している。
12 ステアケイス

退廃的な空気感が後のポストパンクを予見しているかのようなラストソング。頻繁に登場するダークで冷気を感じる歪みギターが圧倒的な存在感を放っており、終盤は「ガラスの破片」のようなピアノの断片が挿入され、曲がもつ不穏さが更に強調される。

セックス・ピストルズ(Sex Pistols)の熱狂的なファンたちによって結成された(wiki)スージー・アンド・ザ・バンシーズ(Siouxsie And The Banshees)の1stアルバム。 「パンク」からの影響も感じられるサウンドではあるのだが、それ以上に「既存のサウンドと違う事をやりたい!」というチャレンジ精神が魅力的であると感じる。彼らは「パンクという体裁」ではなく「言葉本来の意味

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硬質かつシリアスな作風でアーティスティックな印象があった前作「JUST A HERO」の反動からか?!シンプルなビートとキャッチーなボーカルラインが目立つアルバムとなっている。

本作には80年代中頃〜後半にかけてティーンエイジャーであった者なら一度は聴いた事があるであろう「1 B・BLUE」「2 ONLY YOU」などのボウイ(BOØWY) を象徴するシンプルなビートロックが収録されており、トータルで見て彼らのパブリックイメージに最も近いアルバムとなっている。また本作はオリコンチャート1位を獲得した大出世アルバムでもあり、世の中にバンドブームなる現象を起こす一つのキッカケにもなった。

世の中に ボウイ(BOØWY)のコピーバンドが大量発生しロックバンドとして「完全に天下を取った」ボウイ(BOØWY)だが、同時に売れたことによってアイドル扱いされるようになった自分達に違和感を感じるようにもなっていった。ある意味、近い将来に起こる解散を決定つけたアルバムであると言える。

    「要点」

  • ・ボウイ(BOØWY) を象徴するシンプルなビートロックが収録されており、トータルで彼らのパブリックイメージに最も近いアルバム
  • ・オリコンチャート1位を獲得した大出世アルバム

「曲解説」

1 B・BLUE

「シンプル」と言う言葉を具現化したような8ビートが心地よいビートロック。名曲「マリオネット」と共にボウイ(BOØWY)というバンドのパブリックイメージを作り上げた曲で難解であった前作「JUST A HERO」からの反動なのか?!非常にポップな躍動感を感じるサウンドとなっている。歌詞は「不器用で傷つけあった過去の恋愛」をテーマにしつつ「もう一度飛ぶのさ」と力強く宣言する内容となっており「ナイーヴな湿り気」は一切感じない。
2 ONLY YOU

煌びやかなギターサウンドに乗せて「お前に対する真っ直ぐで熱すぎる愛情」を歌うロックチューン。氷室京介(vo)がここまで前向きなラブソングを歌ったのは筆者の知る限り初めてである。この曲におけるドラムプレイも「1 B・BLUE」同様に「晴れ渡る青空」のように果てしなくシンプルである。
4 BEAT SWEET

布袋寅泰(g)特有の不思議なコミカルさを感じるギターリフを中心に展開されるロックチューン。歌詞は「男の下心を気持ち良い位に全肯定」した内容となっており、要約すると「君とはじめて会った日から、その白い素肌の事ばかりを考えるようになり、みだらな夢ばかり見ている」というもの(1:58〜)ギターソロはピッキングハーモニクスを交えたフレーズとなっており「揺らめく」ようなエフェクトもかけられている。
5 NOISE LIMITTER

ドラムマシーン風の高橋まこと(dr)のドラムプレイが印象的な曲で「カチッ」としたメカニカルなサウンドがメインとなっている。終盤に「呑気」と形容しても良い「子供向けアニメ的な音響」に転調するというまさかの展開を見せる。
7 B・E・L・I・E・V・E

シンセの連打が「過去のメモリーを思い起こさせる」ように鳴り響くバラード。サビのボーカルラインはボウイ(BOØWY)史上最も「安らぎ」を感じるメロディーとなっている。「ゆったりと時が流れる」ようなギターソロなどは、インディーズ時代から激動の日々を送ってきたボウイ(BOØWY) に与えられた「束の間の休息」のようである。
10 WORKING MAN

鋭角的なインダストリアルビートで幕をあける疾走感抜群のロックチューン。作詞はなんと松井恒松(b)が担当。タイトルにもなっているWORKING MANとは「パンを食えて飛び乗る」というラインから推測するとおそらくサラリーマンの事であろう。初期のボウイ(BOØWY)は「サラリーマンという存在そのものに対する強烈な嫌悪感」をパンキッシュに吐き出していた訳だが、この曲の歌詞にはサラリーマンに対して「哀れな奴ら」的な同情がありつつも応援歌的なエッセンスもある。彼らのこの心境の変化は、以前のレビューでも触れたが「他者を否定・批判するだけの歌詞」はある意味「居酒屋で無駄な熱量を発するサラリーマン」と本質的には変わらないという「パンクの矛盾」に気付いたからではないだろうか?!
12 DRAMATIC?DRASTIC!

トーキング・ヘッズ (Talking Heads)を意識した音創りをした曲(wiki)サビ裏でボーカルラインと同様のメロディーを「煙」のようなサイケな音色で奏でるギターサウンドがインパクト大(2:12〜)ギターソロは「トロピカルな妄想」を具現化したようなラインとなっており、布袋寅泰(g)のタイトなリズム感を堪能する事ができる指弾きフレーズとなっている。
14 SENSITIVE LOVE

「曇り空」のようなどんよりした音響の中でクリーンなアルペジオが存在感を放つラストチューン。歌詞は「いつの間にか冷めていた恋愛感情」についてである。

硬質かつシリアスな作風でアーティスティックな印象があった前作「JUST A HERO」の反動からか?!シンプルなビートとキャッチーなボーカルラインが目立つアルバムとなっている。 本作には80年代中頃〜後半にかけてティーンエイジャーであった者なら一度は聴いた事があるであろう「1 B・BLUE」「2 ONLY YOU」などのボウイ(BOØWY) を象徴するシンプルなビートロックが収録されており、トータ

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「アーバンな冷気」を感じるシンセサウンドやマシーンビートを大胆に導入し、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)やニュー・オーダー (New Order)などの前衛的なアーティストからの影響を強く感じる硬質でシリアスな作風となっているボウイ(BOØWY)の4thアルバム。

アルバム全編を通して布袋寅泰(g)のギターサウンドは非常に実験的で「アヴァンギャルド」と形容しても良い内容となっている。特に「5 Justy」で聴けるギタープレイは特筆すべき「完璧な内容」と言ってよく布袋寅泰(g)史上TOP3に入るクオリティなのでは?!と筆者は感じる。

また氷室京介の作詞もこれまでと比べて「難解でマニアックな言葉」をチョイスしており「5 Justy」における「エスプリック」「ボナンザグラム」※クロスワードクイズの一種※「11 Welcome To The Twilight」における「アレスクラ」(ドイツ後で「It’s ok」の意味)など、実験的なサウンドにナチュラルに融合するシュールなものが多くなっている。本作は「ノリの良いロックを求めるリスナー」にはリアクションの難しいアルバムなのかもしれないが「シリアスなニューウェイブサウンドが好きなリスナー」には高評価を得るそんなアルバムだと思う。

    「要点」

  • ・硬質でシリアスな作風となっているボウイ(BOØWY)の4thアルバム
  • ・「5 Justy」で聴けるギタープレイは特筆すべき「完璧な内容」と言ってよく布袋寅泰(g)史上TOP3に入るクオリティなのでは?!
  • ・氷室京介の作詞に関しても「エスプリック」「ボナンザグラム」「アレスクラ」などの「難解でマニアックな言葉」をチョイスしている

「曲解説」

1 Dancing In The Pleasure Land

冷気とエッジを感じるシンセサウンドとクラウディーな布袋寅泰(g)のギター音色が印象的なダンサブルな曲(1:56〜、3:05〜)「ウ〜ッ、ハッ」というボウイ(BOØWY)らしからぬワイルドなコーラスが登場し、一時的に「先住民の宴」のような展開となる。終盤はチープなリズムトラックが挿入され、タイトルである「Dancing In The Pleasure Land」というフレーズが連呼される。
2 Rouge Of Gray

ドラムマシーンのビートを大胆に導入しており、おそらくではあるがニュー・オーダー (New Order)からの影響をダイレクトに曲に反映していると思われる。曲を通して「24h稼働する最先端の工場」のようなタイトさとメカニカルな質感がある。サビ裏で聴ける布袋寅泰(g)のトリッキーで耽美的なサウンドが「妖しい光」のように曲を彩っている。
3 わがままジュリエット

アーバンな泣き系ギターフレーズで幕をあける名バラード。シンプルでタイトなリズムの上を「ガラス細工」のような電子音が踊り、布袋寅泰(g)のギターサウンドは最小限の手数で音響構築に徹している(1:30〜)氷室京介がファルセットを使い「空回りして愛も夢も何も残っていない現状」を壊れそうな位に切なく歌い上げる。歌詞の内容は「夢を追いかければ追いかけるほど、傷つけあった過去の悲しい恋愛体験」についてである。
5 Justy

「神秘的な呪文」のようなギターリフが冴え渡るボウイ(BOØWY)屈指のイカしたニューウェイブチューン。サビ裏でも容赦なくイントロのギターリフを弾いており、氷室京介(vo)のボーカルより明らかに目立っている(2:07〜)ギターソロはオリエンタルでミステリアスな雰囲気があり「階段を転がり落ちる」ようなある種の危険性も感じる。最後はビビッドでアヴァンギャルドな音響がリスナーの視界を極彩色に染め上げる。本作のギタープレイは布袋寅泰(g)史上TOP3に入るクオリティであると思わる。それ位に「完璧」で全てのギタープレイヤー必聴の内容となっている。
7 1994 -Label Of Complex-

布袋寅泰(g)のファンキーなカッティングギターが「ガラス瓶」のようにキラめいている曲で「海辺に佇む」のようなメロウネスと切なさ、「高層ビル」のような艶やかなアーバンさが同居している曲。ギターソロは立体的な響きでありウォームな松井常松(b)のベースラインが非常によく目立つ。
8 ミス・ミステリー・レディ

メカニカルなリズムアプローチの上を布袋寅泰(g)の煌びやかなギターフレーズが踊るダンスチューン。サビのボーカルラインの後ろでは「カラフルな火炎放射」のような布袋寅泰(g) のアヴァンギャルドなギターサウンドが唸りをあげる。歌詞の中にも「アヴァンギャルド」というワードが登場。タイトル通りミステリーな内容となっている。
9 Blue Vacation

「深海」のようなBlueを感じる曲。サビはメカニカルなビートの上で氷室京介(vo)と布袋寅泰(g)がデュエットする展開となっておりインパクトがある。
11 Welcome To The Twilight

「眩しい季節」のような音響を感じるラストチューン。実験的で冷たい質感を前面に出したシリアスなサウンドが多い本作の中でこの曲がもつ「健全な清々しさ」は一種の救いとも言える。シンプルなサウンドとは異なり歌詞は一癖あり、見慣れない「アレスクラ」なるワードが登場。ドイツ語で「It’s ok」との意味があるそうだ。

「アーバンな冷気」を感じるシンセサウンドやマシーンビートを大胆に導入し、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)やニュー・オーダー (New Order)などの前衛的なアーティストからの影響を強く感じる硬質でシリアスな作風となっているボウイ(BOØWY)の4thアルバム。 アルバム全編を通して布袋寅泰(g)のギターサウンドは非常に実験的で「アヴァンギャルド」と形容しても良い内容となっている。特

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実験性とポップネスが高次元で結びついたボウイ(BOØWY)の3rdアルバム「BOØWY」。

バンド名をアルバムタイトルに起用する場合、その多くは自信作であるケースが多いのだが本作もそのケースに見事に当てはまる名作となっている。本作は初めて海外レコーディングを行ったアルバムでもありこれまでの作品と比べると「モダン」という表現がピッタリである。

前作から本格的に本領を発揮し始めた布袋寅泰(g) のギターは更に独自性を高めており「1 Dreamin’」「5 ホンキー・トンキー・クレイジー」などでは「曲が求める音のみを提供するプロデューサー的視点」を感じるし、多くのギタリストに多大な影響を与えた「6 BAD FEELING」などではポジティヴな意味で弾きすぎなやりたい放題感がある。

また歌詞の内容にも大きな変化があり、反抗的・挑発的な歌詞をもつ「1 Dreamin’」「6 BAD FEELING 」などの曲であってもアルバム「MORAL」に収録されていた「パンクソング的な痛さ」を感じないフィーリングとなっている。「1 Dreamin’」の歌詞は「サラリーマン的人生を真っ向から否定しつつも「I ‘m only dreaming’ = 私はただ夢を見ているだけ」と自身の「ある種のクサさ」を開示している点に潔さを感じる事ができ「6 BAD FEELING」 のサビの歌詞は「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を言語化しているが、エモーショナルになる訳でもなく「大人の対応」と言わんばかりの落ち着きを感じる事ができる。

本作はセンスとやる気に満ちた若者たちが「大人の余裕」をもちはじめ、 冷静にそして大胆に自分たちの音楽を作り始めた。 本作「BOØWY」はそんなイメージのアルバムである。

    「要点」

  • ・「1 Dreamin’」「サラリーマン的人生を真っ向から否定する歌詞を前面に押し出しているが、ファーストアルバム「MORAL」に収録されているパンクソング的な痛さは感じられない。
  • ・「6 BAD FEELING」サビでは「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を淡々と吐き出しているが、 初期のようなパンク的なオラオラ感はなく「大人の対応」というクールさがある。

「曲解説」

1 Dreamin’

「ファンファーレ」のようなサックスサウンド(シンセかも?!)で幕をあける華やかロックチューン。「サラリーマン的人生を真っ向から否定する歌詞」を前面に押し出しているが、ファーストアルバム「MORAL」に収録されているパンクソング的な痛さは感じられない。痛さを感じない理由は何かを否定しているだけではなく、自分自身の熱い願望(「I ‘m only dreaming’ = 私はただ夢を見ているだけ」)を歌っている前向きさがあるからであろうと思われる。そう「他者を否定・批判するだけ」ならそれこそ「居酒屋で無駄な熱量を発するサラリーマンと変わらない」というパンク的な矛盾に彼らはいち早く気づいてしまったのだろう。
2 黒のラプソディー

「路地裏」のようなダークさと「繁華街」の華やかさが同居した曲で「花束」のようなサックスサウンドを大胆にフィーチャーしている(1:50〜) 布袋寅泰(g)のギターソロは「ガラス細工」のようなエッジを感じさせる音質となっており、松井常松(b)のベースラインは「点をピンポイントでメカニカルに突く」ようにイメージであり存在感を放っている。
3 Baby Action

「散歩のようなヴァース」と「疾走感全開のサビ」との対比が面白いミニマムなギターポップ。歌詞は「軽い遊びのつもりだったけど、あいつにハマってしまって忘れられない。もうイヤだ」という内容。イントロとアウトロだけ何故か?!「パキッ」としたゴージャスなインダストリアル風サウンドとなっている。
5 ホンキー・トンキー・クレイジー

「タップダンス」のようなリズムとキャッチーなサックスが印象的なポップチューン(2:30〜)曲のクオリティーを劇的にあげるソウルフルな女性コーラスが登場して曲に「パーティー」のような開放感と華やかさを与えている。タイトルは意味不明だが、おそらくデヴィッド・ボウイ(David Bowie)のアルバム「Hunky Dory」からヒントを得ていると思われる。
6 BAD FEELING

著名ギタリストに多大な影響を与えた名ギターリフがスペーシーな音響の中で踊るニューウェイブ・ファンク。筆者もこの曲のギターリフのコピーにトライした事があるが、この曲のギターリフはシンプルなフレーズではあるのだが布袋寅泰(g)特有のリズム感に慣れるまでが非常に難しかったと記憶している。サビ前に登場する「イマジネーション通りに腰振るのはやめてくれ」という「イマジネーション溢れるライン」はヒムロック以外のシンガーからはまず出てこないラインであろう。サビは「アッパッパーなladyに対する嫌悪感」を淡々と吐き出すという内容であるが、初期のような「パンク的なオラオラ感」はなく「大人の対応」というクールさがある。またこの曲でも「5 ホンキー・トンキー・クレイジー」同様に「タップダンス風」のリズムが存在感を放っている。
8 DANCE CRAZE

ミニマムなロックンロールリフが「ねずみ花火」のように同じところをクルクルとループする冒頭から徐々に近未来的にカラフルで壊れた展開に移行する実験的なサウンドで「クラフトワーク(Kraftwerk)とT・レックス(T. Rex)」が共演したようなイメージの曲となっている。作詞は「ジョナ・パシュビー」という外部クリエイターが手がけており、ボーカルは布袋寅泰が担当している。
9 ハイウェイに乗る前に

イントロからノリノリのテンションを感じさせるロックンロールチューン。サウンドは実際に「ハイウェイに乗っているような疾走感を判じるパート」と「都会をすり抜けたようなナイーヴな開放感を感じるパート」が主となり構成されている。歌詞の内容は「アッパーな上にいい女であるオマエを忘れる為に強がってハイウェイを走り抜ける男の心情」と言ったところだろうか。
10 CLOUDY HEART

「機械仕掛け」のような緻密さと「ガラス越し」のようなフィーリングを感じる曲でバラード調から疾走感溢れるサビに移行する展開となっている。歌詞は「軽いはじまりだったけど、案外長く続いた恋の終わり」をテーマにしており「若すぎて無責任であった2人の日々」を氷室京介(vo)が切なく振り返っている。終盤はスペーシーなシンセサウンドが存在感を放ち、主人公の「CLOUDYな心情」を表現している。

実験性とポップネスが高次元で結びついたボウイ(BOØWY)の3rdアルバム「BOØWY」。 バンド名をアルバムタイトルに起用する場合、その多くは自信作であるケースが多いのだが本作もそのケースに見事に当てはまる名作となっている。本作は初めて海外レコーディングを行ったアルバムでもありこれまでの作品と比べると「モダン」という表現がピッタリである。 前作から本格的に本領を発揮し始めた布袋寅泰(g) のギタ

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