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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト
検索結果38件

タグ「UKロック」のレビュー

前作「PRESENTS」同様に素晴らしいクオリティを誇るマイ・リトル・ラバー(My Little Lover)の3rdアルバム。

アルバムジャケットと共振するような「ブルーでメランコリックな音響」を全面に押し出しており「90年代UKギターロック」「透明で冷たい質感のエレクトロニカ」からの影響を凄腕プロデューサー「小林武史」が見事にポップソングに落とし込んでいる。全ての曲で言える事だがギターサウンドは「弾きすぎない美学」を体現しており、少ない手数で曲が求めるフレーズのみを提供しており「余計な音」が一切鳴らされていない。

歌詞の内容は「これまでのマイ・リトル・ラバー(My Little Lover)」を良い意味で壊そうとしている前衛的なものが多く「4 ALICE 〜album version〜」に関してはサビの一部に記号(「*+▼☆▲△×□」「☆▼□×+▲*△ 」)が登場し「8 Private eyes」「9 ANIMAL LIFE」は前作に収録されていた「Naked」と同様にエロティクである。また「10 Fallin’ Blue」の歌詞は「5 Hello, Again 〜昔からある場所〜」で大失恋を経験した主人公の「数年後のメランコリックな心情」を描いたようなイメージとなっている。

本作は「メランコリックな音響」を押し出したサウンドが主となっているが「透明感の塊」であるakko(vo)のボーカルが絡まる事で全ての曲が良質なポップソングとして成立している。おそらくではあるが例えどんなにアバンギャルドな音楽であってもakko(vo)が歌うと良質なポップソングとして成立するのでは?!思われる。筆者の個人的な意見ではakko(vo)は「心地よい音響」を提供する女性ボーカリストとしてJ-POP史上TOPレベルのボーカリストである。

    「要点」

  • ・アルバムジャケットと共振するような「ブルーでメランコリックな音響」を全面に押し出している
  • ・akko(vo)は「心地よい音響」を提供する女性ボーカリストとしてJ-POP史上TOPレベルのボーカリスト

「曲解説」

1 New Adventure

「真夜中のプール」のようなメランコリックを感じる気だるいオープニングソングでミニマムなマイナー調のギターコードとakko(vo)の「語り」のようなボーカルを中心に展開される。サビは淡々とタイトルの「New Adventure」というフレーズをなぞる非ポップなものである。
2 STARDUST

「宇宙」のような浮遊感を醸し出す音響が印象的である反面、サビではグランジ風の無機質なギターフレーズが淡々とリフレインされる曲。akko(vo)のボーカルは相変わらず「透明感の塊」であり「1 New Adventure」同様にメランコリックなこの曲と見事に絡み合っている。
3 CRAZY LOVE

90年代エレクトロニカの代表的なアーティスト「エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)」を思わせるブレイクビーツが印象的なギターロックで曲を通して「春の訪れ」のようなストリングが流れる。歌詞は「狂おしい恋の妄想」というイメージで「愛の方程式 解いてね」というフレーズは積極的なのか受け身なのかよく分からない響きである。
4 ALICE 〜album version〜

リスナーを「シュールな夢の国」に誘うキラキラ系ギターポップ。「マイナー調のギターサウンドの断片」を中心に展開されるスローな曲で歌詞は「思春期のトキメキと葛藤」を言語化したようなイメージであり「いつだって恋だけが素敵なことでしょう」という華やかさと「恋だけじゃ愛にたどり着けない」というある種の諦念が混在されている歌詞は神の域と言ってもいいレベルである。サビの歌詞の一部は「リギリッラ、リギリギラ」という風に聴こえるのだが、歌詞を見るところまさかの記号であり「*+▼☆▲△×□」「☆▼□×+▲*△ 」細部にまで相当なこだわりを感じさせる。
5 雨の音 〜album version〜

「海底」のような音響が強調されたメランコリックチューンでギターサウンドには「海の中で演奏された」ような揺らめく響きがある。ボーカルラインはサウンドに寄り添うように「沈む」ような質感である。
6 DESTINY

「Eメールからはじまるラブストーリー」で話題になったテレビドラマの主題歌としても起用された壮大なバラード。「近づくほどに遠く海のように揺れる」というラインは一筋縄ではいかない運命的な恋の難解さ見事に表している。
8 Private eyes

ディープな音響を感じさせる歪んだロックチューンでタイトルの「Private eyes」というフレーズが「メロディックな呪文」のようにリフレインされる。歌詞の内容は「成り行きではじまった性行為の後」のようなイメージで「力の抜けた体がBananaのようにベッドに這う」というラインはエロティックである。
9 ANIMAL LIFE

90年代UKギターロックテイストをシンプルに反映させた曲。歌詞は意味深なものとなっており「動物の動作」について歌われている。おそらくではあるがエロティックな内容で名曲「4 ALICE 〜album version〜」に登場するライン「恋だけじゃ愛にたどり着けない」と共通する意味があると思われる。
10 Fallin’ Blue

タイトル通り「メランコリックでブルーな音響」と「氷の世界」のような冷気を感じる曲で「自分らしくない時間」「今でもね、たまに思い出す」「あなたを探している」などのシリアスで重い歌詞が非常に印象に残る。これらのラインから考察すると深読みかもしれないが「5 Hello, Again 〜昔からある場所〜」で大失恋を経験した主人公の「数年後のメランコリックな心情」を歌っているのでは?!と思われる。
11 Days

ミニマムなサウンドで構成されるシンプルなUKギターロック。サビは「どこまでも続く曇り空」のようなイメージだが、他の収録曲がメランコリック・テイストのものが多いという事もあり不思議な開放感を感じる。

前作「PRESENTS」同様に素晴らしいクオリティを誇るマイ・リトル・ラバー(My Little Lover)の3rdアルバム。 アルバムジャケットと共振するような「ブルーでメランコリックな音響」を全面に押し出しており「90年代UKギターロック」「透明で冷たい質感のエレクトロニカ」からの影響を凄腕プロデューサー「小林武史」が見事にポップソングに落とし込んでいる。全ての曲で言える事だがギターサウンド

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インディーズアルバムに存在したダークで密室的な雰囲気が後退して「耽美」「メロウ」などの形容詞がよく似合う2ndアルバム。キュアー(CURE)などの耽美派UKアーティストからの影響をラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)流に消化したサウンドを聴かせてくれる。

前作同様にken(g)のギターサウンドは「眩しすぎる光」を感じるものとなっており様々な情景をリスナーに連想させ、また今作から歪んだギターサウンドも導入されておりセンチメンタルな展開から歪んだパートに切り替わる曲も存在している。

hyde(vo)のボーカルラインは「耽美」「メロウ」なサウンドとは対照的に「大空」や「天空」を連想する伸びやかなものとなっている。前作的な響きをもつ曲はsakura(dr)作曲の「6 Inner Core」位であり、彼らの挑戦的な姿勢がしっかりと音に反映されている作品となっている。

    「要点」

  • インディーズアルバムに存在したダークで密室的な雰囲気が後退
  • 「耽美」「メロウ」などの形容詞がよく似合うサウンド

「曲解説」

1 In the Air

「空を舞う」ような浮遊感と「太陽」のような光を感じる空間系ギターポップ。hyde(vo)の美しい高音を活かした伸びやかなボーカルラインは、どこか「密室」のような雰囲気があった前作には見られなかったものである。イントロとアウトロで登場するアルペジオは「誰もいない早朝のビーチ」のようにメロウだ。
2 All Dead

「鏡の中の世界」のような揺らめきを感じるボーカルがインパクト大の曲。イントロ・アウトロでは「波紋のような質感の美しいピアノ」と「頭の中をグシャグシャとかき乱す歪みギター」が絡みつく。曲の中で透明感のある様々な音色のギターサウンドが登場しまるで「油絵」のような深みを感じる事ができる。時折挿入されるグランジ的なうねるギターリフが曲に締まりを与えており(2:10〜)ギターソロは前作の箱庭的な世界には収まりきらない程に叙情的で確かな熱を感じる。
3 Blame

「センチメンタルでメルヘンな思い出のような質感のパート」と「突き刺さるように疾走するパート」の対比が印象的な曲で「静」→「動」を強調した展開はある意味グランジ的である。終盤はアグレッシヴな展開で真っ白なイメージのサウンドレイヤーが存在感を放ち「宙に浮く」ような浮遊感を曲に与え、 最後は自由に弾きまくるken(g)のエフェクティヴなギターワークが「爪痕」のように刻まれる。
4 Wind of Gold

耽美的でメランコリックなUKギターポップのような曲で「誰もいない早朝のビーチ」のような雰囲気を醸し出している。淡々と鳴り響くアコギと「ガラス瓶」のようなキラメキを持つクリーンサウンドを中心に展開される(2:18〜)サビのボーカルラインの後ろで「限りなく透明なベール」のようなストリングスが鳴り響く。その後は「ガラス玉」を連想する木琴のような音がミニマムに鳴り響きアクセントとなっている。
5 Blurry Eyes

「レトロなヨーロッパの街並み」を連想する流れるようなギターサウンドがあり、強烈なサビのボーカルラインが一発で頭に刻まれるシングル曲。サビでは「センチメンタルな思い出」のようなオルゴール風のフレーズが鳴り響き曲にポップネスを与えている。アウトロは「巡る思い」のようなメロウなギターフレーズによって締めくくられる。
6 Inner Core

地下室のようなダークな質感が他の収録曲とは一線を画する異色曲(0:46〜 , 4:42〜)インディーズアルバムに収録されていても違和感がないミステリアスで歪んだ語りがルナティック。ダークで密室的な雰囲気をもつ曲ではあるがサビのhyde(vo)によるボーカルラインは密室的な質感とは対照的で「天空」のように伸びやかである(2:25〜)ギターソロはプログレバンドのように手の込んだもので「油絵」のような透明感と揺らめきを感じテクニカルである。アウトロでは「恐怖すら感じる壊れた質感の笑い声」が空間を歪める。
7 眠りによせて

「牧歌的な雰囲気を持つボサノヴァ調パート」と「グランジーに歪んだパート」が交互に展開されるラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)流グランジソング。ギターソロが終わった後は「歪んだパート」と「ボサノヴァ調パート」がミックスされたようなイメージで、ハードではあるが牧歌的な雰囲気も失われず存在するという凝った展開を見せる。
8 風の行方

「真夏の青空」のような眩しい光を感じるメロウなギターチューン(2:05〜)サビの裏ではボーカルライン以上に目立つベースラインがミステリアスに踊る。「比喩に比喩を重ねられた歌詞」はシュールな印象だが「次の恋を期待する」メランコリックな休日のようなイメージである。
10 White Feathers

「曇り空」のようなどんよりとした空気感を持ち最小限の音数で構成される空間系ギターバラード。サビのボーカルラインは「卒業式」のようなセンチメンタルと光を感じるものとなっており、悩みながら迷いながらでも少しでも前に進もうという希望をリスナーに与えてくれる(4:45〜)ギターソロはアバンギャルドで曲をズタズタに引き裂くような質感である。

インディーズアルバムに存在したダークで密室的な雰囲気が後退して「耽美」「メロウ」などの形容詞がよく似合う2ndアルバム。キュアー(CURE)などの耽美派UKアーティストからの影響をラルク アン シエル(L’Arc〜en〜Ciel)流に消化したサウンドを聴かせてくれる。 前作同様にken(g)のギターサウンドは「眩しすぎる光」を感じるものとなっており様々な情景をリスナーに連想させ、また今

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モザイクがかかったカラフルなアルバムジャケットから極彩色のようなサイケデリックサウンド想像していたのだが実際に聴いてみると「海の中」にいるような浮遊感やクーラ・シェイカー(Kula Shaker)と共通するようなオリエンタルな雰囲気を感じるデビューアルバム。

ギターサウンドは空間構築に徹しており煌びやかなオルガンや立体的なベースラインがよく目立つサウンドで、ザ・スミス(The Smiths)などのニューウェイブアーティストのようなメランコリックさもある。

アシッドハウスからの影響をがっつり受けているのかと思いきや実験的な数曲を除いてはそこまで影響を感じないというのが正直なところである。同世代にザ・ストーン・ローゼズ(The Stone Roses)、プライマル・スクリーム(Primal Scream)、ハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)というヤバイ奴らがいる為、過小評価されている感は否めない。

    「要点」

  • 「海の中」にいるような浮遊感を感じる
  • 煌びやかなオルガンや立体的なベースラインがよく目立つサウンド

「曲解説」

1 You’re Not Very Well

「黄金の宮殿」を思わせるオルガン(キーボード)の音色がオリエンタルな雰囲気を演出しているオープニングソング。サイケなギターサウンドも聴けるがハッピー・マンデーズ(Happy Mondays)などと比較した場合、パンク的で直線的な音像である(1:58〜)短いギターソロは「底が見えない落とし穴に落ちた」ようにミステリアス。
2 White Shirt

「気だるいピクニック」のような雰囲気のサイケポップ。脱力感のあるボーカルラインはメロウなメロディーを奏でサビでは「やまびこ」のようなコーラスも飛び出す。ロブ・コリンズ(key)による「夏の木漏れ日」のようなオルガン(キーボード)が曲に少しセンチメンタルな雰囲気を与えている。
3 The Only One I Know

「海の中にいる」ような透明なブルーを感じるサイケでメロウな曲。「黄色しか存在しない信号機」のようなミニマムなキーボードリフが淡々と鳴り響く中をメロウで浮遊感を感じるボーカルラインが踊る(1:08〜、2:12〜)海の中に差し込む日光のようなデリケートなギターサウンドがサイケで(2:45〜)唐突に登場する立体的なベースラインは曲に重力を与える。
4 Opportunity

白昼夢のような眩しさと宙に浮いているような脱力感を感じるフリーセンションのような曲。パーカッショナルなリズムと黄金のベールのようなオルガン(キーボード)がオリエンタルな雰囲気を醸し出す(2:47〜)これまで空間構築に徹していたギターが微妙な湿り気を帯びた浮遊感のあるフレーズを奏でるが、その音はすぐに煙となってオリエンタルな空気感に溶け込む(4:33〜)「テレビの砂嵐」のようなギターサウンドが曲の浮遊感を更に高める。ボーカルラインは終始、儚い祈りのようなメロディーであり、最後は「カラスの声をアシッドハウス風にアレンジした」ようなサイケな音に包まれる終わる。
5 Then

メランコリックな雰囲気を持つダウナーな曲。クルクルと回るベースラインが中心となり展開される曲で、サビ前に鳴らされる「ガラスの破片」のようにきらめくギターサウンドは眩しすぎる。
6 109 Pt.2

宇宙のような雰囲気を持つアシッドハウスチックなインスト。中盤まではスペーシーな音の断片が次々に現れ頭の中に様々なイメージが湧くという浮遊感のある展開だが(1:54〜)マーチ風のブレイクビーツが鳴り響くのを境にディープな質感を持ち始める。最後は「全ての音が宇宙に吸い込まれる」ように静かに終わる。
7 Polar Bear

アシッドハウス的なフィーリングを持つ実験的な音響系ソング。「スライム」のように弾力のある潤ったリズムが終始リフレインされ、少しモザイクがかかったようなオルガン(キーボード)やエフェクティヴなギターサウンドが空間を構築する。
10 Sonic

気怠さとミステリアスな雰囲気が同居しているダークな曲でウェットで重いベースラインを中心に展開される。「雨の匂い」のようなギターフレーズとは対照的にオルガン(キーボード)の音色は煌びやかな為、ダークな質感ではあるがメロディックなポップスを聴いた後のようなあっさり感がある。

モザイクがかかったカラフルなアルバムジャケットから極彩色のようなサイケデリックサウンド想像していたのだが実際に聴いてみると「海の中」にいるような浮遊感やクーラ・シェイカー(Kula Shaker)と共通するようなオリエンタルな雰囲気を感じるデビューアルバム。 ギターサウンドは空間構築に徹しており煌びやかなオルガンや立体的なベースラインがよく目立つサウンドで、ザ・スミス(The Smiths)などの

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アシッドハウスに影響を受けたドラッギーでサイケデリックな神作。アシッドハウスに影響を受けたロックアーティストはプライマル・スクリーム(Primal Scream)とザ・ストーン・ローゼズ(The Stone Roses)さえ聴いておけば十分でしょと思っていたがそれは大間違いであった。

アシッドハウス期のプライマル・スクリーム(Primal Scream)に匹敵する脳みそをグラグラと揺らすサイケデリックサウンドが今作では鳴っている。「サイケデリックでバグっているサウンド」と「酔っ払いが即興で歌っているかのようなボーカルライン」は脳みそと体を同時に揺らすような中毒性がある。

四つ打ちをベースにしたシンプルなリズム、ディープなベースライン、そして「濃厚な霧」や「紫色の煙」を連想するギターサウンドはリスナーに様々なサイケなイメージを与えるものとなっており筆者がこれまで聴いてきたギターサウンドの中でも屈指に「サイケデリック!!」80年代末にUKで興った「マッド(MAD=狂った)チェスター」なるムーブメントの名称も決して大げさなではなく確かにMADである。彼らに影響を与えたアシッドハウス、今後是非深掘りしようと思う。

    「要点」

  • アシッドハウスに影響を受けたドラッギーでサイケな神作
  • 脳みそと体を同時に揺らすバグったサウンド
  • 酔っ払いが即興で歌ったようなボーカルライン

「曲解説」

1 Kinky Afro

「ガラス越しのビーチ」のような歪な清涼感もつサイケポップ。「春の訪れ」のような軽快なコードストロークと「ガラスの破片」のようなミニマムなリフが終始リフレインされる(1:12〜、2:18〜)「バグった光に包まれる」ようなアシッドな質感のギターフレーズが鳴り響き、アシッドハウスと共振するドラッギーなサイケ感を醸し出している。ボーカルラインは酔っ払いがアドリブ歌ったようなイメージ。
2 God’s Cop

「酔っているようなご機嫌なテンション」と酔いが覚めた後の静けさが同居しているダンサブルな曲。四つ打ちをベースにしたビートの上をミニマムな電子音とショーン・ライダー(vo)のボーカルラインが踊る(0:47〜)遠くのほうでひんやりとした質感のシンセサウンドが鳴り響き僅かな冷静さを曲に与え(1:20〜)そこに「紫色の煙」のようなサイケなギター登場しサイケデリックが空気感を支配する(2:16〜)「急に何か思いついて立ち止まった」ような唐突なテンポダウンが入り、その後はゴージャスなホーンとギターサウンドが絡みつき、脳みそをグラグラと揺らすようなサウンドを聴かせてくれる(3:33〜)スペーシなホーンと「トコ、トコ、トコ」と鳴り響く電子音だけのパートとなるが、またすぐに濃厚なギターサウンドが登場しサイケデリックな空気感を醸し出す。
3 Donovan

「遠い日の思い出」のようなセンチメンタルな展開からサイケなトリップなサウンドに変貌する曲。冒頭は牧歌的なアコーディオンのメロディー、淡々とうねるベースライン、ミステリアスでアシッドなビートで構成されるチルアウト的な曲だが(2:07〜)何かが落下したような「ドン」というドラム音を境にして、目に映る全てが揺らめくようなトリップサウンドに変貌。最後までリスナーにサイケな感覚を与え続ける。
4 Grandbag’Funeral

酩酊という言葉がピッタリのサイケなギターロック。ハードロック的なルーズさとブルーステイストがあるギターリフが響き渡るが、この曲でも「濃厚な霧の中にいる」ようなサイケ感を感じることができ(1:30〜)階段から転げ落ちるような電子音や(2:15〜)千鳥足のようなフレージングなどセンス抜群の狂った音が登場する。
5 Loose Fit

「暗闇の中を手探りで彷徨う」ような踊れるニューウェイブソング。青いライトのようなニューウェイブ的な耽美アルペジオが暗闇に光を与える(2:40〜)立体的でダンサブルなビートが前面に出て曲を引っ張る展開に移行。終盤はソウルフルな女性ボーカリストも登場し曲はよりディープな質感をもつ。
6 Dennis and Lois

アーバンなレゲエ的な雰囲気を持つポップソング。夏祭りのような賑やかな雰囲気をもつ曲だが(2:30〜)何かが消えてなくなるようなエフェクティヴな音の登場により全てのパートが熱量を上げ始め、リスナーを「霧の世界」へと導く。
7 Boh’s Yer Uncle

パーカッショナルでダンサブルなビートを前面に出したで祝祭的な雰囲気のあるサウンドとシリアスな囁きのようなボーカルラインの対比が面白い曲。少しエロティクな女性コーラスも登場して、まるでエロい夢を見た後のような気分に浸れる。
8 Step On

煌びやかでぼやけた音の数々が強烈なサイケ感を味わえるアシッドハウス(2:22〜)「黄色しか存在しない信号機」のようなカラフルな電子音の登場以降は、ファンキーな女性コーラスも登場しさらに混沌さとサイケさを増し終盤はノリノリな口笛も登場する。
9 Holiday

ディープなベースラインの上を「ガラス瓶」のような透明なサウンドと「大空を羽ばたく鳥」のような女性コーラスが踊るシンプルな曲。終盤は残響のようなエフェクティヴなギターサウンドが鳴り響く。

アシッドハウスに影響を受けたドラッギーでサイケデリックな神作。アシッドハウスに影響を受けたロックアーティストはプライマル・スクリーム(Primal Scream)とザ・ストーン・ローゼズ(The Stone Roses)さえ聴いておけば十分でしょと思っていたがそれは大間違いであった。 アシッドハウス期のプライマル・スクリーム(Primal Scream)に匹敵する脳みそをグラグラと揺らすサイケデリ

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2000年にレディオヘッド(Radiohead)が発表した今作Kid Aは音楽シーンに衝撃を与えた。本作にはこれまで彼らの代名詞であったリスナーの深部まで届くエモーショナルなボーカルラインや「静」→「動」のダイナミックなバンドサウンドがほとんど登場せず、エレクトロニカ、アブストラクトHIP HOP、ポストロックなどの文脈を大胆に導入し、彼らの描きたいイメージを音でストイックに描ききっている。

前作「Ok Computer」に存在していた「荒涼とした世界観」をさらにディープにするには、ギターロックのフォーマットだけではもはや無理があったのだろう。本作Kid Aを聴いていると終始、「何もない真っ白な空間」や「氷の世界」が目に浮かんでくる「無」の場所で音楽的自由を究極に突き詰める本作はシンプルなギターロックよりはるかにプリミティブだと思う。

    「要点」

  • エレクトロニカ以降の音響で描かれた世界観
  • 絶対零度の感情
  • 音楽史に残る問題作

「曲解説」

1 Everything in Its Right Place

ミニマムな電子音とトム・ヨーク(vo ,g)の声をサンプリングした「呪文」のような音で幕をあける。作品全編に言えることだが前作に見られた荒涼とした雰囲気をさらをディープにしたような幽玄な空気感で全てが凍りついた氷河の中でポツンと佇むトム・ヨーク(vo ,g)が目に浮かぶ「全てのものはあるべきところに」を繰り返す詞の世界も意味深。
2 Kid A

「氷」のようなアンビエントな音色は誰もいない真っ白な空間を連想させる。彼らの最大の武器であったリスナーの感情を揺さぶるエモーショナルなボーカルラインはこの真っ白な空間には存在せず、ただ風だけが流れている。トム・ヨーク(vo ,g)のボーカルにはまるで老人の囁きに聴こえるようなエフェクトが掛けられておりボーカルラインの断片はまるでお経のようにすら聴こえる。そこに無機質で鋭角的なポストロック的なリズムが加わるが、ギターロックバンドらしいダイナミズムとは無縁の淡々とした展開を見せる。そして最後は透明なベールのような電子音に包まれ目に映る全てが無と化す。
3 The National Anthem

サンプリングされたウッドベース(多分)のミニマムなフレーズが終始鳴り響き、不穏さや浮遊感を感じる多様な音が煙のように浮かんでは消える。ホーンセクションを大胆にフィーチャーした「夢の国に出てくる軍隊の行進曲」のような曲。
4 How to Disappear Completely

死後の世界に迷い込んだような幽玄さのある曲。誰もいない真っ白な空間であまり抑揚のないメロディーをトム・ヨーク(vo ,g)が弾き語る。その後、不穏なストリングスと「ボタンのかけ違い」のようなミニマムな電子音が出てきて曲はさらに深くなる。(3:30〜)から聴けるボーカルラインは美しくエモーショナルだが前作に感じたような熱量はなく嘆きのように聴こえる。
8 Idioteque

レディオヘッド流アブストラクトHIP HOP。「車が宙に浮いて走っている近未来の高速道路」を連想するスピード感があり「氷河期がやってくる」という脅迫観念のようなトム・ヨーク(vo ,g)の鬼気迫るラップ(?)が凄まじい。「Here I’m allowed everything all of the time」の箇所は、トム・ヨーク(vo ,g)とエド・オブライエン(g)によるハモった最高級のボーカルラインが聴ける。
9 Morning Bell

神経質なブレイクビーツと牧歌的な電子音が終始鳴り響く曲(3:05〜)トム・ヨーク(vo ,g)の声の残響が四方八方から鳴り響きカオスの様相を呈するが、やがて全ては過ぎ去り目の前には誰もいない「氷の世界」だけが広がっている。

2000年にレディオヘッド(Radiohead)が発表した今作Kid Aは音楽シーンに衝撃を与えた。本作にはこれまで彼らの代名詞であったリスナーの深部まで届くエモーショナルなボーカルラインや「静」→「動」のダイナミックなバンドサウンドがほとんど登場せず、エレクトロニカ、アブストラクトHIP HOP、ポストロックなどの文脈を大胆に導入し、彼らの描きたいイメージを音でストイックに描ききっている。 前作

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