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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト
検索結果27件

タグ「V系」のレビュー

ルナシー(LUNASEA)サウンドに宇宙的で神聖な雰囲気を持ち込んでいる「音楽マニア」SUGIZOのソロデビューアルバム。

「ドラムンベース」「トリップホップ」など当時の前衛音楽からの影響をSUGIZOなりに解釈した「アバンギャルドでダークなサウンド」が堪能でき、「5 Le Fou」「16 LUNA」などではスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)彷彿のミニマリズムを導入している。97年にこのサウンドは斬新を超えており、現在のように「全世界がオンラインで繋がっている環境」が97年当時に存在すれば、間違いなく海外のコアな音楽ファンに大絶賛されていたはずである。また同年にリリースされたルナシー(LUNASEA)のもう一人のギタリスト/イノラン(INORAN)のソロアルバムも「トリップホップ」からの影響を大胆に反映させた耽美サウンドとなっており「神作」となっている。

本作に収録されているほとんど全ての曲で「ミステリアスなダークさ」と「耽美さ」がナチュラルに漂っておりV系サウンドのベーシックはSUGIZOが生み出したと言っても過言ではない。偉そうなことを言って恐縮だが本作はSUGIZO自身がボーカルを務めた曲で一部ミスマッチな質感があったので惜しくも「傑作」だが、一部のボーカルのミスマッチさえなければ文句なしに「神作」であった。どのような音を鳴らしても「SUGIZO流」になる「個の強さ」は圧巻であり日本が世界に誇れる才能である。

    「要点」

  • ・「ドラムンベース」「トリップホップ」など当時の前衛音楽からの影響をSUGIZOなりに解釈したアバンギャルドでダークなサウンドが堪能できる
  • ・V系サウンドのベーシックはSUGIZOが生み出したと言っても過言ではない

「曲解説」

1 LUCIFER

ヘヴィなギターサウンドの断片がミステリアスな浮遊感をもつ空間で輝き、リズムアプローチは「迷走」のようなドラムンベースという「音楽マニア」SUGIZOらしい前衛的なアッパーチューン(2:52〜)SUGIZOらしいロングローンのギターソロが空間をアブノーマルに支配する(4:04〜)「can I fly?can you fly?」という宇宙的な響きのコーラスが登場、このコーラスは後にリリースされるルナシー(LUNASEA)の曲「LOVE ME」のコーラスのプロトタイプ的な響きがある。
2 THE CAGE

たっぷりとリヴァーヴをかけた残響ギターサウンドが心地よいドラムンベースチューン(2:40〜)ディープで耽美的なアルペジオが鳴り響く中、SUGIZOによるミステリアスな語りがはじまる。その後は「わずかに燃える炎」のような幽玄なバイオリンサウンドが挿入されるという「凝りに凝られた」展開をみせる。最後は静寂の中「強烈にモザイクがかかった液体」のようなサウンドだけが鳴り響く。
3 KANON

「UK産ダークなヒップホップ=トリップホップ」からの影響を感じる耽美チューン。ボーカルはゲストボーカリストが務めSUGIZOはコーラスを担当している。SUGIZOのコーラスは「メタリックな水面」のような質感でセンス抜群、曲に「ヘブン」のような浮遊感をもたらしている。
4 EUROPA

クリアで「水晶玉」のような神秘性を感じるアルペジオがインパクト大のインスト。全編に渡りSUGIZOらしい「凝りに凝られた」ギターサウンドで埋め尽くされている。終盤はマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)彷彿の「ディープでエロスな音響」が存在感を放つ。
5 Le Fou

アンビエントなアルペジオがミニマムにループされる神インスト。神聖でシリアスな音響は「暗闇の中に天使が舞い降りる」イメージを連想する。時折、挿入されるSUGIZOのバイオリンサウンドの断片が神聖な音響の中でヒステリーに響き渡る。
6 BEAUTY

「金属ボックスをハンマーで叩いた」ようなパンチの効いたリズムがインパクト大の我流トリップホップで「酔っ払いが吹いた」ようなバグったサックスサウンドが曲にサイケな揺らめきを与える(2:00〜、4:10〜)唐突な転調が入り「退廃的メルヘンワールド」のような静パートに切り替わるという意外性のある展開(3:48〜)ギターソロはトム・モレロ/レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)のアバンギャルドサウンドにSUGIZOが「宇宙的なアレンジ」を施したような内容となっており、リスナーをアナザーワードルへと誘う。
7 CHEMICAL

「不気味な影に追いかけられる」ような切迫感を感じるリズムオリエンテッド・チューン。この曲でも「6 BEAUTY」同様に唐突な転調が入り「メルヘンティックな静パート」が挿入される。空間を漂うように流れる「和の旋律」が非常にミステリアスである。
9 MISSING

浮遊感溢れる音響と「アバンギャルドなタップダンス」のようなドラムンベースの対比が面白い曲(1:58〜、4:18〜)無条件に宇宙を連想する残響ギターサウンドが挿入される。歌詞は哲学的な内容で「果てない宇宙」をテーマにしていると思われる。
11 KIND OF BLUE

「天空」を連想する音響の中を「孤独」なサックスが自由に舞うインストでリズムはドラムンベース風である。時折、挿入されるギターサウンドは「直線的なネオンカラー」のような質感で曲に彩りを与えている。ギターソロは勿論の事、アバンギャルドで「巨大な鳥の狂った鳴き声」のようである。
13 DELIVER…

フレンチポップのようなメロウネスが印象的な空間系ソングでゲスト・女性ボーカリストの声は曲と非常にマッチしている(2:22〜)金属的でパンチの効いたビートが挿入される、その後に登場する歪んだギターサウンドはまるで「戦争が始まった」かのような壊れっぷりで「良質なフレンチポップソング」として成立していた曲をズタズタにする。良くも悪くもSUGIZOの「捻くれイズム」が凝縮されたような曲となっている。
16 LUNA

ミニマムなアルペジオがループされる幻想的なラストソング。歌詞はSUGIZOの娘「LUNA」の誕生に伴う感動を言語化したものである(3:50〜)子供の泣き声と「寂れた街」のような孤独を纏ったピアノの旋律が静寂の中で響き渡る。最後は幻想的な音響の中で波の音だけが流れる。

ルナシー(LUNASEA)サウンドに宇宙的で神聖な雰囲気を持ち込んでいる「音楽マニア」SUGIZOのソロデビューアルバム。 「ドラムンベース」「トリップホップ」など当時の前衛音楽からの影響をSUGIZOなりに解釈した「アバンギャルドでダークなサウンド」が堪能でき、「5 Le Fou」「16 LUNA」などではスティーヴ・ライヒ(Steve Reich)彷彿のミニマリズムを導入している。97年にこの

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「1 TELL ME」
「新学期のような期待感」と「きらめく宇宙」を感じる軽やかなポップロックで。歪んだギターサウンドは控えめでキュアー(CURE)のような空間系サウンドが印象的である。歌詞の内容は思春期男子に向けられたものだと思われ「幻覚に踊る体」「心とは裏腹のパントマイム」などのラインは、周囲の気をひきたくて「本当の自分ではない役を演じているヤンキー少年」を連想させ、この1曲だけでもhideが十代から熱い支持を受けた理由が非常によくわかる。

(2:50〜)ギターソロはエックスジャパン(X JAPAN)ファンに対して「ご褒美」と言わんばかりの内容で流麗でメロディックなハモリフレーズとなっている(3:01〜) レゲエ的な音響が「シャボン玉」のようなメルヘンさを演出しており、そこにhideの囁き(僕には僕が見えない)が溶け合う。

「2 SCANNER」
ルナシー(LUNASEA)のRYUICHIをゲストに招きデュエットした曲でサウンドはインディーズ時代のルナシー(LUNACY)を彷彿とさせるダークなハードコアチューンとなっている。

気のせいかもしれないがhideとRYUICHIの声質は非常に似ており、歌詞の内容は「DOUBT」に近いもので「むかつくアイツ」に対する苛立ちを全面に押し出したものだが同時に「今のうちにせいぜい吠えておきなさい」という余裕もある。本作はルナシー(LUNASEA)大ブレイク前夜の94年3月リリースの作品となっており、深読みかもしれないがこの時期にRYUICHIを招きハードコア調の曲でディュエットを試みたのは、 hideがRYUICHIに対して「昔(インディーズ時代)の君を思い出せ」というメッセージを伝えたかったからでは??と感じた。93年にルナシ(LUNASEA)がリリースした耽美アルバム「EDEN」には賛否両論があったし、何よりhideはRYUICHIの「ルナティクでダークな独自歌唱」が大好きだったのだろう。

RYUICHIは見事にhideの思い(筆者の妄想)にこたえ、名曲ROSIERで耽美さとアグレッシヴな熱量が見事に絡まった素晴らしいボーカルを披露してくれた。

    「要点」

  • ・「1 TELL ME」の歌詞にある「幻覚に踊る体」「心とは裏腹のパントマイム」などのラインは、 周囲の気をひきたくて「本当の自分ではない役を演じているヤンキー少年」を連想させる
  • ・「2 SCANNER」はルナシー(LUNASEA)の大ブレイクのキッカケの一つでもある

「1 TELL ME」 「新学期のような期待感」と「きらめく宇宙」を感じる軽やかなポップロックで。歪んだギターサウンドは控えめでキュアー(CURE)のような空間系サウンドが印象的である。歌詞の内容は思春期男子に向けられたものだと思われ「幻覚に踊る体」「心とは裏腹のパントマイム」などのラインは、周囲の気をひきたくて「本当の自分ではない役を演じているヤンキー少年」を連想させ、この1曲だけでもhideが

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「1 BELIEVE」
これまで彼らが提示してきた「ルナティックなダークサウンド」とは正反対と言っていい「透明で開放的」な雰囲気をもっている曲で ファンの中でルナシー(LUNA SEA)史上最大の賛否両論を巻き起こした「SHINE」程ではないだろうが、本作も初期「ルナシー(LUNA SEA)クラシック」を求めるコアファン達の間で相当な賛否両論を巻き起こしたに違いないと思われる。

それにしても「世界の果て」のようなアルバム「IMAGE」でメジャーデビューを飾ったその後に、この「透明で開放的」な曲をメジャーデビューシングルとして音楽シーンに叩きつける所に彼らの尋常ではない「こだわり」を感じる。「ブランディング」や「イメージ」が大切な音楽ビジネスの中で彼らほど扱いづらいアーティストはいないだろう(褒めてます)。

「優雅にそしてスピーディーに流れるボーカルライン」「眩しすぎる光を感じる音響的なツインギター」を中心に構成された耽美サウンドは当時の既存の音楽シーンには存在しない「独自すぎる」サウンドで当時は「新感覚」に聴こえたであろうと思われる。またサウンド以上に「ドラスティックな変化」を遂げているのがRYUICHI(vo)の歌声であり、これまでの「狂った暗黒テイスト」は影を潜めアクアマリンのような質感の耽美性を感じさせる歌声となっている。歌詞もインパクト大で「〜過ぎる」というフレーズが頻出する「too much」な歌詞は若かりし日の彼らの勢いをパッケージングしている。

「2 Claustrophobia」
「1 BELIEVE」で混乱したファン達に対して「安心してください!」と言わんばりのルナシー(LUNA SEA)クラシック。「密室のようなダークさ」「陰鬱な雰囲気」「壊れた文学性を感じる詞の世界」をもっており全てのV系アーティスト・ファン必聴の曲となっている。

サウンドは初期ルナシー(LUNA SEA)の魅力を凝縮したようなハイクオリティーな暗黒サウンドだが、この曲の本当のヤバさは「閉ざされ病んでいる歌詞」をRYUICHI(vo)が絶叫して歌う展開にこそあると思う。この曲におけるRYUICHI(vo)の歌唱は伝説のアーティスト「ピクシーズ(Pixies)」が生み出した「オルタナな響き」を日本人独自にアレンジしたようなイメージなのである。

また驚くべき事にこのオルタナ的な歌唱をRYUICHI(vo)はインディーズの頃から大胆に取り入れている。この独自なオルタナ歌唱は「音楽マニア」であるSUGIZO(g)のアドバイスによるものか!?もしくは「ルナティックな表現の為の試行錯誤の果て」にRYUICHI(vo)が発明したものなのだろうか?!定かではないがどこからこの「独自なオルタナ歌唱」が生まれたのか?!非常に興味がある。

「当時の世界の先端(オルタナ)」と共振しつつも 「日本でしか生まれない独自性」をもつサウンドを鳴らしたルナシー(LUNA SEA)が多くのコアなアーティスト・音楽ファンからリスペクトを受けるのは当然であると思われる。

    「要点」

  • ・「1 BELIEVE」これまで彼らが提示してきた「ルナティックな漆黒サウンド」とは正反対と言っていい「透明で開放的」な雰囲気
  • ・「2 Claustrophobia」この曲におけるRYUICHI(vo)の歌唱は伝説のアーティスト「ピクシーズ(Pixies)」が生み出した 「オルタナな響き」を日本人独自にアレンジしたようなイメージ

「1 BELIEVE」これまで彼らが提示してきた「ルナティックなダークサウンド」とは正反対と言っていい「透明で開放的」な雰囲気をもっている曲で ファンの中でルナシー(LUNA SEA)史上最大の賛否両論を巻き起こした「SHINE」程ではないだろうが、本作も初期「ルナシー(LUNA SEA)クラシック」を求めるコアファン達の間で相当な賛否両論を巻き起こしたに違いないと思われる。 それにしても「世界の

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ルナシー(LUNA SEA)史上最もスレイヴ(彼らの熱心なファン)の中で賛否両論を巻き起こした問題作「SHINE」。

「1 SHINE」のサウンドを一言をで言うと「煌びやかな光を感じるタイトなポップパンク」という趣であり普通に良い曲である。だがしかし、ルナシー(LUNA SEA)というアーティストにおいてはこの「真っ当な光(SHINE)」は当時明らかにNGな質感であったのである。メンバーもおそらくリリース後の反響を受けて「リリースするのが早かった」と感じたことだろう。

要は俗な言い方をするとファンが彼らについていけなかったのである(筆者も含めて)

世界の音楽シーンと同時進行で「元祖オルタナ的な尖りきったサウンド」でインディーズシーンに登場した彼らには、既存の音楽シーンに対して「常にカウンターであり続けないといけない」というある種の強迫観念が常につきまとった。異端なアーティストが既存のシーンに対してカウンターを浴びせ時代の寵児になるまでのストーリーは実に美しくカリスマ的であり、また当時の音楽ビジネスの主流であったタイアップを拒絶した「孤高のスタンス」もコアで内向的なロックキッズには魅力的に移った。

94年~96年にかけての3年間はルナシー(LUNA SEA)の絶頂期であった。この3年間はまさに「神の時期」で自分たちのやりたい事と「内向的な激しさ」を求めるコアなロックキッズとの間で完璧にニーズが合致した。だがこの完璧なバランスを保つのは色んな角度から見て不可能に近く、彼らは96年に傑作アルバム「STYLE」をリリース後に活動休止に入った。

ただでさえ「先が見えない」から活動休止した訳であるが、彼らは活動休止中も各々5人5様のソロ活動を精力的に行いあらゆる刺激を吸収していった。またボーカルのRYUICHIは本名の河村隆一名義で300万枚のアルバムセールスを達成。河村隆一が在籍するバンドとして音楽にさして興味がないような中高生にも認知されるバンドとなってしまった。

■常に変化するルナシー(LUNA SEA)

■ダークで耽美的で実験的なサウンドを求めるコアなロックキッズ

■河村隆一的なものをルナシー(LUNA SEA)に求める世間・レコード会社

このような迷路的状況になってくるとまさに八方塞がり状態で何をやっても「以前より良くない」という評価にしかならないのは明白で筆者も本作がリリースされ始めて聴いた時は率直に言って「これは何かの間違いだ」と思った。そう、彼らの作り出した「独自のサウンド」は90年代に多数のフォロワーを生み出し当時のロックシーンで完全にブランド化されていたのである。要するに異端から頂点に上り詰めたカリスマブランドはそのイメージから逸脱したイメージを打ち出すことは極めて困難であるという事だ。

当時の彼らにとって最も簡単な選択はファンが求めるルナシー(LUNA SEA)サウンドに河村隆一的なエッセンスを僅かに追加することである。だが彼らはこのカオスな状況においても不器用なまでにこれまで同様に普通に「変化した」。鳴っている音はこれまでのサウンドと比べると非常にポップ感が強く戸惑いも大きかったのは確かだが「何も変わらないスタンス」を貫いた。この作品のリリースがなければ現在のルナシー(LUNA SEA)は存在していないといっても過言ではないほどにチャレンジ精神のある作品であると思う。

大人になった今なら分かる。

    「要点」

  • 賛否両論を巻き起こした問題作
  • 不器用にこれまで通り変化したサウンド

ルナシー(LUNA SEA)史上最もスレイヴ(彼らの熱心なファン)の中で賛否両論を巻き起こした問題作「SHINE」。 「1 SHINE」のサウンドを一言をで言うと「煌びやかな光を感じるタイトなポップパンク」という趣であり普通に良い曲である。だがしかし、ルナシー(LUNA SEA)というアーティストにおいてはこの「真っ当な光(SHINE)」は当時明らかにNGな質感であったのである。メンバーもおそらく

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「やりたい事はなんでもやっちゃおうぜ!」というフリーな発想が他のV系バンドとの圧倒的な差別化を生んだ3rdアルバム。

「8 優しい悲劇」などで聴ける「冷たさと終幕感を感じるコード進行」は日本人独自のものであり非常に個性的である。また「アングラな匂いがするハードな曲」「王道V系チューン」「流れるようなメロディーを持つ歌謡テイスト強めの曲」など、バリエーション豊かな曲が並ぶアルバムではあるのだが「氷のような冷たさ」を多くの曲で感じる事ができる。

ルナシーの代表曲ROSIERのロングヒットにより化粧気バンドが世の中に認知され始めた頃に本作はリリースされたが、本作を最後に黒夢はV系的な表現や世界観から距離を置いたサウンドを模索する事となり90年代末のメジャーなロックバンドの中で最も尖ったバンドの一つとなっていく。本作は黒夢のラストV系アルバムと言えるかもしれない。

    「要点」

  • 「8 優しい悲劇」などで聴ける「冷たさと終幕感を感じるコード進行」は日本人独自のもの
  • 本作を最後に黒夢はV系的な表現や世界観から距離を置いたサウンドを模索する

「曲解説」

2 解凍実験

インダストリアルミュージック的なサイバーな歪み感を持つマニアック曲。「冷凍された心臓をガスバーナーで解凍する」というシュールな歌詞と「悪夢にうなされている」かのような清春(vo)の声が「呪縛」のように空間を支配しアングラな雰囲気を醸し出している。
3 feminism

「氷のような冷たさと終幕感を感じるコード進行」が特徴の疾走系・耽美ギターポップ(2:07〜)「氷の部屋に現れた黒蛇」のようなミステリアスでダークなベースフレーズが圧倒的な存在感を放つ。終盤はドラムプレイがよりタイトに直線的に鳴り響きパンク的な熱量を帯びる為、冷たい音響の曲なのだが曲を全て聴いた後はパワフルなロックを聴いたような感覚を味わえる。
4 眠れない日に見る時計

クランチなカッティングギターを中心に展開されるシンプルなサウンドをバックに「寂しがり屋な男の心情」を清春(vo)が歌い上げる。ギターサウンドは非V系な質感でザクっとしたオクターブ奏法やウォームな歪みが中心となっている。
5 Unlearned Man

歪んだベースとドラムが淡々と鳴り響く上を様々なジャンクなサウンドが無造作に転がり「散らかった部屋」のようなフィーリングを感じる曲である。 終盤は「呪文」のようにサビのボーカルラインが繰り返される。
6 LOVE SONG

耽美的なグッドメロディーが印象的なUKギターポップ風ソング。ギターの臣(g)は「センチメンタル」「どんよりと曇った空」「メタリックなきらめき」などの形容が似合う様々な音色のギターサウンドを聴かせてくれるが、どのフレーズも極めてシンプルでストレートに耳に残る。歌詞の中にある「うるさいsilence」という歌詞はその後「静けさだけがうるさく流れる」というフレーズに進化してSADSのシングル「TOKYO」で歌われる事となる。
8 優しい悲劇

「これぞV系!」という耽美さと終幕感をもつ初期の代表曲。センチメンタルなV系ソングを最小限の音数で見事に完成させている。臣(g)のギターサウンドは他の曲同様にシンプルだが非常に耳に残り、全ての音から「2月」のような冷たさを感じる事ができる。
9 情熱の影―Silhouette―

「バクチク(BUCK-TICK)」のようなサイバーな地下室感を感じるダークなサウンドではあるが、サビは「春の訪れのような華やかさと清々しさ」を感じる一癖ある曲。サビのバックでは「鈴の音」のようなキラメキを持つ電子音が清春(vo)のボーカルラインに寄り添うようにカラフルに優しく響く(2:58〜) 強烈に縮れたノイズサウンドがまるで「電撃」のようにリスナーの脳を刺激。
10 くちづけ

「神聖な雰囲気と浮遊感をもつ耽美サウンド」と「歌謡テイスト」が見事に融合されたバラードで終始「曇りの早朝」のような気怠さを感じるサウンドとなっている。歌詞の内容は「過ちによって二度と戻らない甘い関係」をノスタルジックに描いたようなイメージだ。
11 Miss MOONLIGHT

流れるようなメロディーラインが見事な王道V系なギターポップ。無くした君を「月」に喩えて喪失感を描いた歌詞は日本人の琴線に触れる内容。人時(b)のベースラインは「遠回り」のようにゆったりとスローにサウンドを支えている。
12 カマキリ

「2 解凍実験」ほどではないがアングラな匂いが濃厚なデジロック風ハードコアパンク。マニアックで陰鬱な雰囲気とハードなサウンドが見事に融合されており、後のハードコアパンク路線のプロトタイプとも言える曲となっている。「Easy money island」という歌詞は明らかに「EMI」とかけており闇に音楽業界を痛烈に批判している。
13 Happy Birthday

「これからパーティに向かうようなワクワク感」を感じるポップソング。ギター・ベース・ドラムのみのシンプルな構成だが非常にカラフルな印象であり、 ハードコアパンク曲「12 カマキリ」の後にこのサウンドを聴くと彼らの音楽的な幅広さを痛感する。
14 至上のゆりかご

「小雨が降る深夜の都会」を連想するジャジーなバラード。沈むような質感のダークなベースラインと「砕けたグラス」のような透明で鋭いギターサウンドがアーバンで落ち着いた空気をバサバサと切り刻む。

「やりたい事はなんでもやっちゃおうぜ!」というフリーな発想が他のV系バンドとの圧倒的な差別化を生んだ3rdアルバム。 「8 優しい悲劇」などで聴ける「冷たさと終幕感を感じるコード進行」は日本人独自のものであり非常に個性的である。また「アングラな匂いがするハードな曲」「王道V系チューン」「流れるようなメロディーを持つ歌謡テイスト強めの曲」など、バリエーション豊かな曲が並ぶアルバムではあるのだが「氷の

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