グレイ(GLAY)らしいスピードチューンを中心にまとめられたベストアルバム。
エックスジャパン(XJAPAN)が解散を発表しヴィジュアル系(V系)というワードが世間にも浸透し始めた97年に本作はリリースされた。
現在、冷静に本作を聴いてみると普遍的なボーカルラインのよさとボーカルラインを第一に考えたウォームであまり主張しないギターサウンドが印象に残る。「主張しないギターサウンド」と聞くとあまり印象が良くないかもしれないが、当時はルナシー(LUNA SEA)のコピーバンドのようなバンドが大量発生していた時代で、ダークで耽美的で空間的なアプローチがヴィジュアル系(V系)シーンの主流であった。
「ヴィジュアル系(V系)と呼ばれる人たちがいるらしいけど「そっち系はちょっと、、」」という「普通の10代」にはグレイ(GLAY)の歌のメロディーラインを最優先するノーマルな方法論は圧倒的にわかりやすく、また多くの人の琴線にふれる普遍的なボーカルラインが刺さり空前の大ヒットを記録した
「曲解説」
1 グロリアス
「分身の術」のようにブレるイントロのギターサウンドが印象的であまり歪んでいないウォームなギターサウンドによるバッキングと
TERU(vo)のハスキーボイスを活かしたメロディックなボーカルラインを中心に構成される。Aメロ〜Bメロは多少サウンドの強弱はありつつも淡々としたサウンドとボーカルラインで進行するが、サビ前のCメロで急加速してリスナーに迫ってくる。サビのボーカルラインはジェットコースターのように山あり谷ありカーブありと抑揚が非常に大きいグッドメロディーとなっている(2:05〜)曲の雰囲気にマッチした耳に残る ツインギターのハモリフレーズはX JAPANからの影響を感じる?!(3:25〜)雨の街角を連想するクリーンアルペジオが流れる静パートが挿入され最後はギターリフが繰り返しリフレインされハードな質感をもったまま終わる。
2 彼女の“Modern…”
「性急でバタバタ」としたリズムとエッジの効いたギターリフが曲を引っ張る「ダイスで決める予定はとりあえず無視する」という大胆な宣言して始まるスピードチューン(0:28〜)Aメロはザクザクのギターの刻みサウンドが鳴っているが、全くといっていいほど「メタルの匂い」は感じず曲に疾走感を与えている(1:32〜)「ウ〜バイブル」という斬新な名コーラスがが今後の爆発を予感させ(1:46〜)ボーカルラインがとんでもない体感スピードを感じるサビが登場する。このボーカルラインはハモリのツインギターで弾くと強烈にハマるフレーだろう(2:17〜)サビとバトンタッチしてスピード感のあるギターソロが始まるが(2:30〜)またしてもツインギターによりハモリフレーズが顔を出す。最後までだれることなくスピード感を維持して曲は終わる。
3 BELOVED
「あの頃の僕ら」のような哀愁を終始感じるミドルテンポのバラード(1:21〜)同世代のバンドが避けそうな歌謡曲的なボーカルラインを気にせずやってしまうグレイ(GLAY)らしい伸びやかなサビ(2:20〜)ノスタルジーな叙情系フレーズが印象的なギターソロだが、ここでもやはりツインギターによるハモリフレーズが登場する。このあたりは同じツインギターでも先輩格であるルナシー(LUNA SEA)などのバンドではまずありえない展開だ。最後は「夢の終わり」のようなにアコギが爪弾かれて終わる。
5 千ノナイフガ胸ヲ刺ス
曲の冒頭でタイトルを叫ぶというかなり珍しい展開。刻まれるハードなギターリフや歌詞に出てくる「悪魔」というフレーズなど、少しメタルを意識している曲なのかもしれないが「メタル匂」は一切感じず「スピード感のあるポップネス」を体感でき、「ハードでアグレッシッヴなパート」と「宇宙の雰囲気を感じる静かなパート」によって構成される(1:25〜)キラキラしたシンセが夜空の星を連想する静かなパートが挿入されるが、サウンドとは裏腹な歌詞は「刹那的に燃え上がる恋」みたいな内容。「tonight i pray for you」(あなたのことを祈っている)という歌詞からわずかだがV系のエッセンスを感じる(2:17〜)スパニュシュギターのような異国感を感じるフレーズから始まるギターソロだが途中からヘヴィメタル的なハモリフレーズも登場して曲を引き締める。終盤はさらにスピード感を増したハードサウンドで最後まで駆け抜ける。
7 口唇
グレイ(GLAY)クラシックとも言える「スリリングな恋の駆け引き」をテーマにしたスピードチューン。サビから突入するビートルズ彷彿の展開やポリリズムの導入などがBPM以上のスピード感を演出している(0:00〜)メロディックなサビのボーカルラインから曲が始まるのだが、バックでは薄く透明なバブルのようなポリリズム的な電子音が鳴り響いている(1:14〜)2回目のサビではポリリズムの上をハードなギターサウンドが乗り「1回目のサビ」よりも更にスピード感を感じる。中盤以降は畳み掛けるようにサビを連発して最後まで攻め続ける。
9 HOWEVER
「木漏れ日」のような柔らかいピアノの旋律ではじまる名バラード。緊張感があり一人の夜を連想するジャジーなテイストがある(1:30〜)サビは壮大なストリングスとダイナミックなサウンドが絡み、「過去の叶わなかった愛情」という趣の歌詞を歌う美しいボーカルラインをより一層引き立てる(3:04〜)暖かい春風のような「フゥ〜、フゥ〜フゥウウ〜」というコーラスが曲に息吹を与え、中盤以降は壮大なストリングスが存在感を増し曲全体を包み込む。曲が終わる頃には「一人の夜」のような孤独感ではく「清々しい孤独」を感じることができる。
10 Freeze My Love
シンセを大胆に活用したスピードチューン。「見えない影に追いかけられる」ようなシンセサウンドと「誰もいなくなった部屋」を連想するようなマイナー調のギターが疾走感を演出する。ポップで「非メタル」なザクザクギターが終始鳴り響くグレイ(GLAY)流シンフォニックメタルのような曲(1:14〜)サビのボーカルラインのバックで流れる切迫感のあるミニマムなシンセフレーズはダークなギターサウンドと絡み少し不穏な雰囲気とBPM以上のスピード感を与える(2:42〜)80年代ブリティッシュ・ヘヴィメタルのバンドのような叙情性あるギターソロが飛び出す。ジャジーな音色なども取り入れ懐古主義になっていない点が素晴らしい。そして最後はやはりハモリのツインリードで締めくくられる(3:42〜)ブレイクビーツのような3連ドラムリフが登場しアクセントになっている。最後は「同じ月が照らす違う人生」というエモワードで登場し終わる。
11 KISSIN’ NOISE
アグレッシヴなアコギのストロークから始まる珍しくプログレ的な展開を見せる曲。基本的にはハードでアグレッシヴなバンドサウンドで展開されるのだが(2:00〜)唐突な転調が入り、重力がバグったサイバーな異空間に放り込まれる(2:30〜)夕暮れの街のような哀愁あるギターフレーズが登場して哀愁のある空気に包まれるがが(3:00〜)「だから!」という威勢の良いボーカルラインからハードでアグレッシヴなサウンドに戻る。終盤はギターソローも登場してハードなサウンドでそのまま最後まで走る。