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live at the indoor
音楽作品(アルバム/シングル)を「普通」「良作」「名作」「傑作」「神作」に分ける音楽レビューサイト

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「濃厚な音世界」を描いた前作「Pornography」はサイケな神作であったが、今作「The Top」はこれまでのキュアー (The Cure) サウンドをベーシックとして保ちつつも「ポップな挑戦」を試みている過渡期的な作品となっている。

「ポップな挑戦」と聞くと普通のアーティストであれば「ボーカルラインのメロディーをキャッチーにする」であったりとか、最大公約数のリスナーにウケるように「ロックの文法を自分たちの曲をあてはめたりする」ものだが、異端の代表格であるキュアー (The Cure)というアーティストにはそんな常識は勿論のごとく通用しない。

シンセサウンドを大胆に活用する事でこれまでのキュアー(The Cure)サウンドには気薄であった「光」を感じるサウンドにはなっているが、「その光」がミステリアスでダークな音響を逆説的に更に引き立てており、ロバート・スミス(vo)のボーカルは相変わらず「我が道を行っている」唯一無二なものとなっている。

「濃厚な前作」と比べるとインパクトの面ではやや欠けるが、これまでのキャリアに一切甘んじる事をしないキュアー (The Cure)の「前衛的なスタンス」を感じる事ができる作品となっている。

    「要点」

  • ・「ポップな挑戦」を試みている過渡期的なアルバム。
  • ・シンセサウンドを大胆に活用する事でこれまでにない「光」を感じるサウンドにはなっているが「その光」がミステリアスでダークな音響を逆説的に更に引き立てる。

「曲解説」

1 Shake Dog Shake

「重力がバグった異空間にいる」ような錯覚を味わえる空間系サイケチューン。ビートは前作「Pornography」に収録されている多くの曲と同様にタイトである。またギターサウンドは「アルバムジャケット同様の耽美的極彩色」となっておりリスナーに様々なイマジネーションを与える。
2 Bird Mad Girl

ミステリアスなアルペジオにピアノやシンセなどを絡める事で「誰もいない秋の海」のような雰囲気を醸し出している軽やかなメランコリックチューン。ロバート・スミス(vo)のボーカルは過去最高レベルにポップである。歌詞もザ・キュアー (The Cure)らしく意味深なものであり「私は北極熊のように感じる必要がある」との事だ。
4 Give Me It

ファンキーなシャウトで幕をあけるゴスチューンで曲を通して「地下室で行われる破壊的な実験」のようなイメージの曲となっている。エフェクティヴなギターサウンドが鼓膜に執拗に絡みつきビートは強烈でメカニカルなものとなっている。筆者はこの曲を聴いて日本のアーティスト/バクチク(BUCK-TICK)の傑作アルバム「狂った太陽」を思い出した。
6 The Caterpillar

ダークでミステリアスなキュアー(The Cure)クラシックに「ラテンポップ」のようなアレンジを加えたような曲で時折聴く事ができる 「カチカチカチカチ」というリズミカルなコーラスや軽やかな手拍子などは、これまでのザ・キュアー (The Cure)からは考えられない。
7 Piggy in the Mirror

「吹雪」のようなシューゲイザーギターサウンドと祝祭性を感じるシンセサウンドを中心に展開される曲で他の収録曲同様に「ポップに対する挑戦」が感じられる(1:34〜)スパニッシュギターによるソロパートは「神秘のピラミッド」ような旋律を奏でる。終盤は「アンデス山脈」を連想する吹奏楽器がボーカルラインの裏で「叙情的な裏メロ」を奏でる。
9 Bananafishbones

「おもちゃの国のようなカラフルでポップなパート」と「ダークでカオスなパート」を行ったり来たりする曲でロバート・スミス(vo)のボーカルラインとデュエットするように不穏なベースラインとエフェクティブなギターが鳴り響く為、ライブで演奏するのは非常に難易度が高い曲であると思われる。

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